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「貴様貴様ってねぇ、貴方何様なの!?」

「え、は?お、王子様……か?」

ルルーは何に怒っているのか……。誰もがぽかんとした表情でルルーを見る。本来なら不敬罪だと騒ぐだろうミニ殿下もさすがに惚れた相手には弱いのか私を相手にした時と違ってたじたじだ。

「そういうのを聞いてるんじゃないわ!全くこれだからバカは……!たかだか身分だけの王子がえらっそうに!エリス様と呼びなさいよ!」

「いや、あいつは……」

「あいつぅうぅぅ?エリス様相手にあいつとは私に喧嘩を売りたいのね?」

「いや、そんなことは……っ」

確かヒロインは……いや、ルルーは男爵令嬢だったはず。それでもミニ殿下が言わないとはいえ、周りさえも不敬罪じゃないかと言い出さず処罰されないのはやはりヒロインだからこそなのだろうか?

でもそれ以上に目の前のルルーはいつものルルーなのか?と疑問に思う。何せ、いつものルルーはヒロインさながら癒しのオーラを振り撒きにこにこと笑う優しい子だから。

あんな人を責め立てるどころか怒鳴り散らすなんてことはしない。それをミニ殿下やその側近、さらには周りすら普段と違うルルーに戸惑いが見られる。

「ルルー?殿下は君のために……」

しかし、さすがに見かねたのだろう側近の一人、宰相の息子であるドノクチ・ガイウがフォローに入った……が。

「私、頼んでないわ……。何がどう私のためなのか説明しなさい」

怒鳴り散らしていたルルーはその瞬間背後に吹雪が見える幻覚を催すほどの冷たい表情となった。もはや、私が女王よとばかりにドノクチ様に命令をして。

フォローに入ったつもりの宰相息子のドノクチはあっという間にその顔を真っ青にした。恐怖故か、先程までの私のようにがくがく震えている。

「ははははい!あの、あのあのあの……っ」

話そうと努力はしたのだろうが、物凄く吃り、言葉になっていない。見ていて可哀想になるほどに。

「あのあのじゃわからないのだけど?」

「ひぃぃっすみません!すみません!」

ついには土下座して謝罪をし出した。これが乙女ゲームでいう攻略対象だと誰が思うだろうか?

「謝れとは言ってないから……早く説明しなさい。ひねり潰すわよ?」

ルルーの言葉に周りから殿下たちも含めての男性陣が真っ青になって男性の急所を押さえた。どこを捻り潰すかは言われてないように思うが、つい想像してしまったのだろう。

一番手痛い部分を。

ここまで来ると私よりルルーの方がよっぽど悪役令嬢らしい気がするのだけど考えすぎだろうか?

「で、殿下は、ルルー様のいじめに加担したのがエリス様だとお考えでして……な、なればこそルルー様へしてきたことへの罪を償っていただこうという話になりまして……」

もはやルルーに様をつけて話し出す始末。びくびくと土下座姿勢を直すことなく語るドノクチ様はルルーの顔色を伺うように低姿勢でなんとか説明しきった。

「へぇ……私のためねぇ……?でも私言ったわよね?エリス様じゃないって」

「その、それは、ルルー様のお優しさ故に言い出せないのだろうと……」

まあ、今までのルルーを見ていればミニ殿下がそう都合よく考えても仕方ないかもしれない。今のルルーを見れば事実を口にしていたと彼らもわかってくれそうだけど……。

実際私はルルーをいじめたこともいじめようとしたことさえないのだから。
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