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ああ、死んだな……そう感じて目を閉じて開いた瞬間に私は赤ん坊となっていた。それを不思議に感じることなく私は前世の乙女ゲームで出た悪役令嬢エリス・ベーラ公爵令嬢なのだと生まれながら確信し、何故疑うことなくそう思えたのかわからないが、そうだとわかって婚約破棄と同時に処刑される未来に絶望しとにかく泣く日々。
赤ん坊時代は周りのひとたちには大変な思いをさせてしまったと思う。でも、そんな周りの優しさに支えられて私はまだ悪役令嬢だと確信しただけだと前向きに考えることができ、処刑回避のためまずは原因の第一王子との婚約を回避しようとしたが、失敗。
これは王家がベーラ公爵の持つ資産や公爵独自に持つ軍事力に元々目をつけられていたため、どうしようもなかった。
ならばヒロインに会わなければ……と思ったものの失敗。
困ってるヒロインとなるルルー・ルルルールを放っておけないばかりか、話しかけてくるのを無視できず、なんなら他の攻略対象が来るまであまりに楽しそうに笑うものだから可愛くて可愛くて……!
ならせめて王子と仲良くしようと思えば明らかにルルーばかりを気にし、気がつけば放置される私。そしてなぜか苛立ちを向けられるようになり嫌な予感はしていた。
していたが……どうしようもなかった。
「貴様とは婚約破棄だ!」
「………そん、な」
私が絶望していた未来。その卒業パーティーは絶望のままに始まりを告げる。婚約破棄はまだいい。私は王子であるミニ・マーム王子に恋をしているわけではなく、ただの政略結婚なのは理解していたし、婚約破棄で終わるなら寧ろ喜ぶほどにはミニ殿下は苦手だった。
しかし、そんな甘い考えは打ち砕かれる。ヒロインが……ルルーがミニ殿下の隣にいる時点でもはや絶望の未来は確定と言えるのだから。
不思議なのは何故かミニ殿下から一人分離れたそのルルーとの距離。ちなみにルルーの表情は俯いていてよく見えない。
「貴様はここにいるルルーをいじめた!教科書を破き、暴言、暴行、最後には階段から突き落とすという殺害未遂!知らないとは言わせない!」
睨み付け、怒鳴るように言われたそれは知らないものばかり。いつも私の見るルルーに怪我した様子は見られなかったし、いじめられているのも初めて知ったぐらいだ。
だからこそ反論しなければと思うのに先程から身体が震えて口ひとつ開くことができない。大勢に注目され、王子たちを筆頭に悪意にさらされているような空間に恐怖してしまっていた。
怖い、怖い……っ誰か助けて……っ!もはや心の中でそう叫ぶこと以外私にできることはない。
「ふん、何も言わないということは肯定というわけだな」
違う、違う、違うのにはくはくとようやく動いた口は声を発してはくれなかった。元々人見知りで、友達と言えば本来なら私を断罪する原因となるルルーくらいな私にまずこんな場でどこぞの悪役令嬢みたいに強気でいけるはずもないことは少し考えればわかること。
いや、わかっていた。私は逃げているだけで、ミニ殿下と婚約を結ばれるときも、ルルーに話しかけられたときも何一つ言えず、それがすべて肯定とされてきたのだから。
でもこんなときくらい……自分の命がかかるこんな時こそ頑張らなくてどうするんだと思うのに思うだけで終わる私は目に涙が溢れるばかり。そんな時だった。
「さっきから聞いていれば………ふざけないで!こんのっバカ王子!」
「な……っる、ルルー?」
会場にヒロインルルーの怒鳴り声が響いたのは。
赤ん坊時代は周りのひとたちには大変な思いをさせてしまったと思う。でも、そんな周りの優しさに支えられて私はまだ悪役令嬢だと確信しただけだと前向きに考えることができ、処刑回避のためまずは原因の第一王子との婚約を回避しようとしたが、失敗。
これは王家がベーラ公爵の持つ資産や公爵独自に持つ軍事力に元々目をつけられていたため、どうしようもなかった。
ならばヒロインに会わなければ……と思ったものの失敗。
困ってるヒロインとなるルルー・ルルルールを放っておけないばかりか、話しかけてくるのを無視できず、なんなら他の攻略対象が来るまであまりに楽しそうに笑うものだから可愛くて可愛くて……!
ならせめて王子と仲良くしようと思えば明らかにルルーばかりを気にし、気がつけば放置される私。そしてなぜか苛立ちを向けられるようになり嫌な予感はしていた。
していたが……どうしようもなかった。
「貴様とは婚約破棄だ!」
「………そん、な」
私が絶望していた未来。その卒業パーティーは絶望のままに始まりを告げる。婚約破棄はまだいい。私は王子であるミニ・マーム王子に恋をしているわけではなく、ただの政略結婚なのは理解していたし、婚約破棄で終わるなら寧ろ喜ぶほどにはミニ殿下は苦手だった。
しかし、そんな甘い考えは打ち砕かれる。ヒロインが……ルルーがミニ殿下の隣にいる時点でもはや絶望の未来は確定と言えるのだから。
不思議なのは何故かミニ殿下から一人分離れたそのルルーとの距離。ちなみにルルーの表情は俯いていてよく見えない。
「貴様はここにいるルルーをいじめた!教科書を破き、暴言、暴行、最後には階段から突き落とすという殺害未遂!知らないとは言わせない!」
睨み付け、怒鳴るように言われたそれは知らないものばかり。いつも私の見るルルーに怪我した様子は見られなかったし、いじめられているのも初めて知ったぐらいだ。
だからこそ反論しなければと思うのに先程から身体が震えて口ひとつ開くことができない。大勢に注目され、王子たちを筆頭に悪意にさらされているような空間に恐怖してしまっていた。
怖い、怖い……っ誰か助けて……っ!もはや心の中でそう叫ぶこと以外私にできることはない。
「ふん、何も言わないということは肯定というわけだな」
違う、違う、違うのにはくはくとようやく動いた口は声を発してはくれなかった。元々人見知りで、友達と言えば本来なら私を断罪する原因となるルルーくらいな私にまずこんな場でどこぞの悪役令嬢みたいに強気でいけるはずもないことは少し考えればわかること。
いや、わかっていた。私は逃げているだけで、ミニ殿下と婚約を結ばれるときも、ルルーに話しかけられたときも何一つ言えず、それがすべて肯定とされてきたのだから。
でもこんなときくらい……自分の命がかかるこんな時こそ頑張らなくてどうするんだと思うのに思うだけで終わる私は目に涙が溢れるばかり。そんな時だった。
「さっきから聞いていれば………ふざけないで!こんのっバカ王子!」
「な……っる、ルルー?」
会場にヒロインルルーの怒鳴り声が響いたのは。
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