1 / 20
1
しおりを挟む
ああ、死んだな……そう感じて目を閉じて開いた瞬間に私は赤ん坊となっていた。それを不思議に感じることなく私は前世の乙女ゲームで出た悪役令嬢エリス・ベーラ公爵令嬢なのだと生まれながら確信し、何故疑うことなくそう思えたのかわからないが、そうだとわかって婚約破棄と同時に処刑される未来に絶望しとにかく泣く日々。
赤ん坊時代は周りのひとたちには大変な思いをさせてしまったと思う。でも、そんな周りの優しさに支えられて私はまだ悪役令嬢だと確信しただけだと前向きに考えることができ、処刑回避のためまずは原因の第一王子との婚約を回避しようとしたが、失敗。
これは王家がベーラ公爵の持つ資産や公爵独自に持つ軍事力に元々目をつけられていたため、どうしようもなかった。
ならばヒロインに会わなければ……と思ったものの失敗。
困ってるヒロインとなるルルー・ルルルールを放っておけないばかりか、話しかけてくるのを無視できず、なんなら他の攻略対象が来るまであまりに楽しそうに笑うものだから可愛くて可愛くて……!
ならせめて王子と仲良くしようと思えば明らかにルルーばかりを気にし、気がつけば放置される私。そしてなぜか苛立ちを向けられるようになり嫌な予感はしていた。
していたが……どうしようもなかった。
「貴様とは婚約破棄だ!」
「………そん、な」
私が絶望していた未来。その卒業パーティーは絶望のままに始まりを告げる。婚約破棄はまだいい。私は王子であるミニ・マーム王子に恋をしているわけではなく、ただの政略結婚なのは理解していたし、婚約破棄で終わるなら寧ろ喜ぶほどにはミニ殿下は苦手だった。
しかし、そんな甘い考えは打ち砕かれる。ヒロインが……ルルーがミニ殿下の隣にいる時点でもはや絶望の未来は確定と言えるのだから。
不思議なのは何故かミニ殿下から一人分離れたそのルルーとの距離。ちなみにルルーの表情は俯いていてよく見えない。
「貴様はここにいるルルーをいじめた!教科書を破き、暴言、暴行、最後には階段から突き落とすという殺害未遂!知らないとは言わせない!」
睨み付け、怒鳴るように言われたそれは知らないものばかり。いつも私の見るルルーに怪我した様子は見られなかったし、いじめられているのも初めて知ったぐらいだ。
だからこそ反論しなければと思うのに先程から身体が震えて口ひとつ開くことができない。大勢に注目され、王子たちを筆頭に悪意にさらされているような空間に恐怖してしまっていた。
怖い、怖い……っ誰か助けて……っ!もはや心の中でそう叫ぶこと以外私にできることはない。
「ふん、何も言わないということは肯定というわけだな」
違う、違う、違うのにはくはくとようやく動いた口は声を発してはくれなかった。元々人見知りで、友達と言えば本来なら私を断罪する原因となるルルーくらいな私にまずこんな場でどこぞの悪役令嬢みたいに強気でいけるはずもないことは少し考えればわかること。
いや、わかっていた。私は逃げているだけで、ミニ殿下と婚約を結ばれるときも、ルルーに話しかけられたときも何一つ言えず、それがすべて肯定とされてきたのだから。
でもこんなときくらい……自分の命がかかるこんな時こそ頑張らなくてどうするんだと思うのに思うだけで終わる私は目に涙が溢れるばかり。そんな時だった。
「さっきから聞いていれば………ふざけないで!こんのっバカ王子!」
「な……っる、ルルー?」
会場にヒロインルルーの怒鳴り声が響いたのは。
赤ん坊時代は周りのひとたちには大変な思いをさせてしまったと思う。でも、そんな周りの優しさに支えられて私はまだ悪役令嬢だと確信しただけだと前向きに考えることができ、処刑回避のためまずは原因の第一王子との婚約を回避しようとしたが、失敗。
これは王家がベーラ公爵の持つ資産や公爵独自に持つ軍事力に元々目をつけられていたため、どうしようもなかった。
ならばヒロインに会わなければ……と思ったものの失敗。
困ってるヒロインとなるルルー・ルルルールを放っておけないばかりか、話しかけてくるのを無視できず、なんなら他の攻略対象が来るまであまりに楽しそうに笑うものだから可愛くて可愛くて……!
ならせめて王子と仲良くしようと思えば明らかにルルーばかりを気にし、気がつけば放置される私。そしてなぜか苛立ちを向けられるようになり嫌な予感はしていた。
していたが……どうしようもなかった。
「貴様とは婚約破棄だ!」
「………そん、な」
私が絶望していた未来。その卒業パーティーは絶望のままに始まりを告げる。婚約破棄はまだいい。私は王子であるミニ・マーム王子に恋をしているわけではなく、ただの政略結婚なのは理解していたし、婚約破棄で終わるなら寧ろ喜ぶほどにはミニ殿下は苦手だった。
しかし、そんな甘い考えは打ち砕かれる。ヒロインが……ルルーがミニ殿下の隣にいる時点でもはや絶望の未来は確定と言えるのだから。
不思議なのは何故かミニ殿下から一人分離れたそのルルーとの距離。ちなみにルルーの表情は俯いていてよく見えない。
「貴様はここにいるルルーをいじめた!教科書を破き、暴言、暴行、最後には階段から突き落とすという殺害未遂!知らないとは言わせない!」
睨み付け、怒鳴るように言われたそれは知らないものばかり。いつも私の見るルルーに怪我した様子は見られなかったし、いじめられているのも初めて知ったぐらいだ。
だからこそ反論しなければと思うのに先程から身体が震えて口ひとつ開くことができない。大勢に注目され、王子たちを筆頭に悪意にさらされているような空間に恐怖してしまっていた。
怖い、怖い……っ誰か助けて……っ!もはや心の中でそう叫ぶこと以外私にできることはない。
「ふん、何も言わないということは肯定というわけだな」
違う、違う、違うのにはくはくとようやく動いた口は声を発してはくれなかった。元々人見知りで、友達と言えば本来なら私を断罪する原因となるルルーくらいな私にまずこんな場でどこぞの悪役令嬢みたいに強気でいけるはずもないことは少し考えればわかること。
いや、わかっていた。私は逃げているだけで、ミニ殿下と婚約を結ばれるときも、ルルーに話しかけられたときも何一つ言えず、それがすべて肯定とされてきたのだから。
でもこんなときくらい……自分の命がかかるこんな時こそ頑張らなくてどうするんだと思うのに思うだけで終わる私は目に涙が溢れるばかり。そんな時だった。
「さっきから聞いていれば………ふざけないで!こんのっバカ王子!」
「な……っる、ルルー?」
会場にヒロインルルーの怒鳴り声が響いたのは。
22
お気に入りに追加
1,164
あなたにおすすめの小説



辺境伯と悪役令嬢の婚約破棄
六角
恋愛
レイナは王国一の美貌と才能を持つ令嬢だが、その高慢な態度から周囲からは悪役令嬢と呼ばれている。彼女は王太子との婚約者だったが、王太子が異世界から来た転生者であるヒロインに一目惚れしてしまい、婚約を破棄される。レイナは屈辱に耐えながらも、自分の人生をやり直そうと決意する。しかし、彼女の前に現れたのは、王国最北端の辺境伯領を治める冷酷な男、アルベルト伯爵だった。

悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!
アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。
「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」
王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。
背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。
受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ!
そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた!
すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!?
※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。
※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。
※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。

婚約破棄を謝っても、許す気はありません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私カルラは、ザノーク王子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
ザノークの親友ルドノが、成績が上の私を憎み仕組んだようだ。
私が不正をしたという嘘を信じて婚約を破棄した後、ザノークとルドノは私を虐げてくる。
それを耐えながら準備した私の反撃を受けて、ザノークは今までのことを謝ろうとしていた。

悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる