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友達と不安
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入学式は確かに終わりを告げた。唯一無事な校長の言葉により。入学式を終えたことによりとりあえず教室に向かうことになり、はじめ様の隣を歩くが、無言。今だにはじめ様の震えは止まっていない。
それが何の震えかなんて僕が一番わかっている。『恐怖』だ。幼い頃から伝説を越える今まで数えきれないくらい恐怖に呑まれる人たちを見てきた。なのに、それがはじめ様というだけで胸が痛むのを感じる。
大人しく捕まった方がよかったのだろうか、嫌わないでほしい。無言は余計恐怖を掻き立てるとなんとか重い口を開いた。
「は、はじめ様、僕の名前、清水ぜろって言うんです」
「ぜろ・・・?」
よかった返してくれた。これが安堵というそれだろう。怯える目を見せながら、僕のここでの名を呟く。本当の名などありはしないが自分が呼ばれているとわかるそれは込み上げる何かがある。
「覚えてないかもしれませんが、幼い頃はじめ様に一緒に遊んでと頼まれて、誓いもしました。はじめ様には怖がらせることは何もいたしません。だから、どうか・・・っ!?」
なんだ、これは・・・僕が震えている?
「覚えてる、ぜろ。初めて一緒に遊んでくれた子だったから。でもあれっきり会えなくて嫌な思いさせちゃったかなって」
「そんなことは!僕は父によりこの表世界に来られなくなっただけで・・・」
「表世界?よくわからないけど、嫌われてないならよかった・・・ふふっ安心したよ。ぜろ強いんだね。変なの、ぜろだってわかったら怖くなくなったよ」
「はじ、め様」
「俺に従うなら友達になって」
「友達、ですか?」
「そう。様はやめて、敬語もやめよう?同い年なんだから」
「はじめ様・・・」
「いや、かな?」
「いえ!いやなど!友達になります!」
「ぜーろ?」
「う・・・っわかったよ。はじめ」
「うん!」
ああ、眩しい光。こんなにも簡単に笑顔を頂いていいんだろうか。闇で、裏で汚れた僕がはじめの友達として相応しいんだろうか。
でもそれを、はじめが望むというなら僕ははじめの望みを叶えたい。教室ではじめ様は僕の後ろの席。姿は見えずとも気配は感じる。現れるかもわからない教師を待つ間、つんつんと背中をつつくのははじめで、自然と笑みを浮かべて振り向く。周囲がざわりとした気がした。
「どうしたの、はじめ」
「なんでもないんだけど、なんか嬉しくて」
「そう・・・はじめが楽しいならいいよ」
「うーん、楽しいとは違うような・・・」
「なら楽しいことをするために今日は一緒に帰ろうか」
「い、いいの?」
「僕が誘ったんだよ」
まるであのときのはじめそのもの。
「そ、そうだよな!一緒に帰ろう!俺、友達と帰るの初めてだ・・・っ」
「毎日一緒に帰って慣れればいいよ。したいことあるなら付き合うし」
「うん!」
素で話している自覚があるせいか、友達であろうとする心のせいか、敬語が抜けてからどうも落ち着いている自分がいる。寧ろさっきまで浮かれすぎていたのかもしれない。
はじめに嫌われるかもと怯えてテンションをあげようとしていたのかもしれない。はじめは友達になろうとすることで僕をそれから解放してくれたのかもしれない。
僕をいつも通りにしてくれたはじめが嬉しそうに笑うから自分まで嬉しくなった気がした。
それが何の震えかなんて僕が一番わかっている。『恐怖』だ。幼い頃から伝説を越える今まで数えきれないくらい恐怖に呑まれる人たちを見てきた。なのに、それがはじめ様というだけで胸が痛むのを感じる。
大人しく捕まった方がよかったのだろうか、嫌わないでほしい。無言は余計恐怖を掻き立てるとなんとか重い口を開いた。
「は、はじめ様、僕の名前、清水ぜろって言うんです」
「ぜろ・・・?」
よかった返してくれた。これが安堵というそれだろう。怯える目を見せながら、僕のここでの名を呟く。本当の名などありはしないが自分が呼ばれているとわかるそれは込み上げる何かがある。
「覚えてないかもしれませんが、幼い頃はじめ様に一緒に遊んでと頼まれて、誓いもしました。はじめ様には怖がらせることは何もいたしません。だから、どうか・・・っ!?」
なんだ、これは・・・僕が震えている?
「覚えてる、ぜろ。初めて一緒に遊んでくれた子だったから。でもあれっきり会えなくて嫌な思いさせちゃったかなって」
「そんなことは!僕は父によりこの表世界に来られなくなっただけで・・・」
「表世界?よくわからないけど、嫌われてないならよかった・・・ふふっ安心したよ。ぜろ強いんだね。変なの、ぜろだってわかったら怖くなくなったよ」
「はじ、め様」
「俺に従うなら友達になって」
「友達、ですか?」
「そう。様はやめて、敬語もやめよう?同い年なんだから」
「はじめ様・・・」
「いや、かな?」
「いえ!いやなど!友達になります!」
「ぜーろ?」
「う・・・っわかったよ。はじめ」
「うん!」
ああ、眩しい光。こんなにも簡単に笑顔を頂いていいんだろうか。闇で、裏で汚れた僕がはじめの友達として相応しいんだろうか。
でもそれを、はじめが望むというなら僕ははじめの望みを叶えたい。教室ではじめ様は僕の後ろの席。姿は見えずとも気配は感じる。現れるかもわからない教師を待つ間、つんつんと背中をつつくのははじめで、自然と笑みを浮かべて振り向く。周囲がざわりとした気がした。
「どうしたの、はじめ」
「なんでもないんだけど、なんか嬉しくて」
「そう・・・はじめが楽しいならいいよ」
「うーん、楽しいとは違うような・・・」
「なら楽しいことをするために今日は一緒に帰ろうか」
「い、いいの?」
「僕が誘ったんだよ」
まるであのときのはじめそのもの。
「そ、そうだよな!一緒に帰ろう!俺、友達と帰るの初めてだ・・・っ」
「毎日一緒に帰って慣れればいいよ。したいことあるなら付き合うし」
「うん!」
素で話している自覚があるせいか、友達であろうとする心のせいか、敬語が抜けてからどうも落ち着いている自分がいる。寧ろさっきまで浮かれすぎていたのかもしれない。
はじめに嫌われるかもと怯えてテンションをあげようとしていたのかもしれない。はじめは友達になろうとすることで僕をそれから解放してくれたのかもしれない。
僕をいつも通りにしてくれたはじめが嬉しそうに笑うから自分まで嬉しくなった気がした。
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