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首席の殺し屋息子は入学式をぶち壊す

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ようやく許された表世界の行き来。父の実力どころか、所持金すらも越えろと大きな依頼を受け続け、殺しに生け捕り、拷問、闇取引、情報収集と、あらゆることに挑戦し、はじめ様の恥じない従者になるため、励んできた。

忘れられているかもしれない。それも考えて怖がらせないよう慣れない笑顔の練習もした。しかし、はじめ様を思い浮かべれば自然にできたそれは問題ないと判断。

他には無感情になり、どうも表情が動かせないがはじめ様以外に感情を知ることも、笑顔を向ける気もないので構わない。

しかし、会わない間、父が時間を使って代わりにはじめ様のことを調べてくれていた。清水はじめ、漢字は使わないみたいだ。うん、あの頃のはじめ様を思えば似合うお名前だ。

僕もはじめ様に合わせて表世界では清水ぜろと名乗ろうと誓った。零なんてあからさまな漢字も考えていたが、はじめ様に合わせたいと思う気持ちが強かったのでそうすることにした。ああ、傍にいなくともはじめ様は僕の気持ちをこんなにも揺さぶる。

早く会いたいと、あの日から11年、裏世界の子供にして早すぎる成長はすぐに伝説扱いの父を越え、稼ぎも裏世界の誰より持っていると言ってもいい。お金など生きるために必要なものがあればいらないが、いつしか父に、お金があれば時に主を助けることもあり、喜ばれることもあるともあると聞いた。

何よりはじめ様は表世界でも早々見られないくらいの貧乏らしく、お金で苦労しているからこそ、持つべきだと言われたらそりゃ稼ぐ気しかしない。

ありがとうと微笑む姿は渡されたはじめ様の写真で想像する。とても満たされた気分になった。

ああ、どうはじめ様と再会しようか。その前にはじめ様をいじめてきた者たちに報復しなければとやることはたくさんある。

憂い顔ばかりのはじめ様の顔を幼き頃の輝くそれに戻したいと思う。予想はしていたが、親からさえも虐待されていると父から聞いて、すぐ殺さなければと出ていこうとした日が懐かしい。

その件は父に、うまいこと世の中を仕切るものたちの手に任され、無事親戚の家で暮らせるようになったと聞き安堵した。しかし、周囲の者がはじめ様をいじめ始める。小さな嫌がらせや孤立させるだけなものばかりのため、父は命の危険はなしと助けてくれず、助けにも行けず悔しさで成長のスピードがあがった。

父はわざとそうなるように仕向けた可能性もある。

高校生になるはじめ様は一人暮らしを始めたようで、親戚の援助を受けていると思っているようだけど、16で出られることが決まっていた僕が父に頼んでうまいこと話をつけてもらうことで、僕がはじめ様の生活費を送り込んでいることをはじめ様は知らないだろう。

下手に怪しまれないよう金額は本来はじめ様の親戚が送るはずだった金額だ。これでははじめ様が食べるのに精一杯で買いたいものが買えないじゃないかとは思ったが、僕が買ってあげればいい話。

それに奇跡的にも運命的にも、はじめ様と同じ年齢だった僕は学歴を偽り、試験を受け、首席合格し、裏から手を使って、三年間はじめ様と同じクラスになるよう仕向けた。だからこそはじめ様の我が儘をいくらでも受けるつもりだ。

年齢が違っても余程離れてない限り、偽る気満々だっただけに我が儘を早く聞いてやりたいと思う。

そんな中、さらにはじめ様は、表世界では辛い環境の中、試験で首席の僕の次、次席のをとるのだから素晴らしい。

平和にへらへらと笑う奴等は随分頭も弱いようだ。ああ、でもはじめ様が例え頭が弱かったとしてもバカにする気はない。だってはじめ様だから。実際は賢いので問題はないけど。

ちなみに試験結果の個人の順位は本人しか知らないからね?はじめ様に華を持たせたかったけど、成績にこだわるバカがいたから、下手な恨みを買わせないためには仕方ないよね。

それに勉強を教えてほしいとはじめ様が頼ってくれるかもしれない。もちろん丁寧に教えます。

内心はらんらんと、表情は無のまま学校の門を通り、入学式場へ向かい、時間が来てようやく入学式が始まる。

こうも気分が高まるのは隣にはじめ様がいるから他ならない。ああ、身長すらも知っていたけど、僕より小さいはじめ様は守るにふさわしい主人だ。

首席挨拶は面倒だし、はじめ様から離れる時間は惜しいけど、はじめ様に誓いを立てるにはいい場所だ。呼ばれて前に行き、本来言うべき言葉は早々に捨てた。

「はじめ様おはようございます。今日この時を持って、貴方に生涯付き従うことを今ここにお約束します。幼い頃の誓いを今日から永久に。」

挨拶なんてはじめ様だけにすればいい話だ。他人などはじめ様の味方か敵か傍観者か判断するだけのそれでしかない。

しーんとする周囲を気にすることなく席へ戻れば戸惑うはじめ様の姿。ああ、怯えられてないならそれでいい。

「あの、俺、あんたみたいなイケメンに、会った覚え、なくて、その、ごめんなさい。約束、わかんなくて・・・あっもしかして、俺じゃ、なかった?そうだよな、俺なんか友達にすら・・・」

「はじめ様で合っています。顔つきは大分変わってしまったのでわからなくても仕方ありません。それにしてもイケメンですか・・・。僕、はじめ様から見て、その、かっこいいと言うことでしょうか?」

「え、あ、うん。誰が見てもかっこいいと思うけど・・・」

初めてこの顔でよかったと思った。誰が見てもじゃなく、はじめ様がかっこいいと思ってくれるならば、それ以上に喜ばしいことはない。

「僕の顔好きですか?」

「え、あの、好き、かな?」

「そうですか!」

ああ、これが至上の喜びか。この顔は大事にすることにしよう。身体の好みも聞きたいが、この場では聞くべきことでないのはわかるし、はじめ様がいやがるかもしれない。調子に乗って嫌いとか言われた時にはそれこそ・・・今は大人しくしよう。

気がつけば周囲の視線がうるさい。はじめ様を腐った目で見るなと目を思わず潰してしまいそうだ。

「あの、入学式終わってから話さないか?」

「はじめ様がそうおっしゃるなら」

静かにしたのに始まりそうにない入学式。早く終わってはじめ様と会話をしたいと言うのにここは表世界で優秀な集まりと聞いていたが、試験の問題にしろやはり低レベルの集まりというわけか?

はじめ様以外、何一つ僕を楽しませてくれそうにない者ばかり。裏世界の最強を手にしようと絡んで殺されに来る奴等の方が、まだマシなぐらいだ。

痺れを切らした僕はたんっと席から跳んで、次に話すはずだった動かない立ちっぱなしの校長の目の前へ。ぱくぱくと口を開いては閉じ驚く姿は滑稽で、はじめ様と比べる価値もないほどに何一つ思うことすらない。胸ぐらを掴んでやれば真っ青になった。まるで殺される前の人間と同じだ。

「はじめ様をいつまで待たせる気?僕と入学式を終わらせて、会話を望んでくれているはじめ様をただ立っていつまで待たせるつもり?貴様の首をとれば入学式は終わりなの?」

「ひ、ひぃぃっ」

「こ、校長に何を・・・ぐほっ」

「邪魔、するな」

僕を捕らえようとしてきたがために、司会者であった教頭を蹴り飛ばせば、慌てたように男の教員たちが僕を捕らえようとする。なんだ、これ全員倒せば入学式は終わりなの?そう思い一撃で仕留めていく。表世界は大人すら裏世界の子供にも負けそうなくらい弱い。

「はじめ様、これで入学式は終わりですよ!」

自然となる笑顔ではじめ様の元へ戻れば、震えるはじめ様がそこにはいた。
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