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5章恋を成就させるのはどっちですか?食べられるクッキーvs食べられないクッキー

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「「あ………」」

ルーベルト、ネムリンが思わず目を合わせて互いに逸らす。それは不安な悩みからついとった行動。

(とっさに避けてしまったけど………)

(今、リンも俺から目を逸らさなかったか?)

だが、互いに目を逸らしてしまったことで二人はドクンドクンと余計に不安に駆られて心臓の鼓動が鳴り響くように感じる。

「二人とも食べないの?」

「あ、すみません」

「い、いただく」

気がつけば食事が止まっていることに気づいたのはルドルクで、声を掛けられればはっとしたように二人は食べ出す。だが、気のせいか二人の雰囲気は少しばかり暗い。

「ルフ………あの」

「うん、わかってる」

アクニーも二人の様子に気づいたのだろう。ルドルクに小さな声で呼び掛け二人へ視線をやれば、アクニーが何を言いたいか理解してるといった返事を返す。

目の前でルドルクとアクニーがこそこそ話していてもルーベルトとネムリンの二人は自分と相手のことでいっぱいなため気づく様子はない。

(さっきまでは仲良くしていたのに………無駄に何かを不安に感じてたりするかな。これは)

なんだかんだ二人の相談にのってきたルドルクは鋭い。ルドルクからすれば、互いに両想いとも言えるのに何故こうも二人して互いのことで悩むのか理解できない。

まあ、少し、いやかなり互いへの愛が超越して神聖視している感が否めないがそれでも似た者同士お似合いだとは思うルドルク。どうしたものかと考える。何よりアクニーがどうにかしたいと目が訴えているのだ。

ルドルクからすれば今だけは無視したいところであるが、アクニー恋した人が望むなら今すぐなんとかしたい。

このままデートを続行しても楽しめそうにもないのだから。

世話の焼ける二人だが、なんだかんだルドルク自身二人を一番に応援していたりする。どんな扱いを受けようとルーベルトは友人だし、どんな痛い目に合おうとネムリンは憎めない友人の愛する人である。

「「はぁ………」」

ついにはため息まで吐き始めた。わざとなのだろうかとルドルクまでもため息を吐きそうになるがそこは我慢する。

「ルーにムー、二人とも互いのことで悩むのはもうやめよう」

「「え………」」

何故わかったのかとばかりに食事の手を再び止めてルドルクを見る二人。ルドルクでなくても二人して暗い雰囲気なら簡単に察することができたことだが、そんなつもりはなかった二人である。

互いのことになるとダメになる辺りルーベルトとネムリンは似通った部分がある。

「この際だから二人には互いが両想いであることを自覚してもらうよ」

「え、あの」

「ルドルク、俺は………っ」

「黙って」

「「………っ」」

急なルドルクの言葉に動揺する二人。しかし、二人を黙らす言葉を放つルドルクに普段ルドルクを振り回す中心と言ってもいいルーベルト、ネムリンの二人が息を呑んで黙る。

こんなところで王の威厳と言うべきか、どんなに不憫でどんなに可哀想な目で見られてもルドルクは国の王である。真剣になれば誰も逆らうなんて思えない威厳を出せるのだ。

気がつけば店にいる誰もがルドルクたちに目を向け、見守っている。誰もが沈黙を守って。

「まず互いが人間だと理解してくれないかな」

え?と思うのは周囲の人たちである。何をどう見たら人間以外に見えるのか。ルーベルト、ネムリンは人間にしか見えないし、人間である。

「に、人間なのはわかっている!」

「うん、女神ではないよ?人として見ようね」

「いや、だが、女神のように………」

「うん、ネムリン嬢は人だよ?女神のように見てたらいつまでたってもネムリン嬢への好意が伝わらないよ?過剰すぎた愛は嘘臭いし」

「嘘臭い………」

ショックを受けた様子で固まるルーベルト。ルドルクが次に視線を向けたのはネムリンである。ルーベルトの言葉にえ?え?と思いつつもネムリンは言いたいことがあるとばかりにルドルクに口を開く。

「わ、私は………」

「うん、ルーベルトは優しい神様と言うけどね。ルーベルトは確かに優秀だけど誰にでも優しいわけじゃない。君だから優しくすることを理解して」

「あの………」

「神を信仰するなとは言わないよ?でもルーベルトは………僕の友人は君が好きすぎて必死なただの男であって人でしかないよ」

「……………」

ネムリンの言葉を最後まで聞くことなく今まで言われた悩みについての返事とばかりに言葉を返すルドルク。

その言葉に思うところがあるのかネムリンはついに黙った。

「人と認識したところで互いをどう想っているか理解しようね。ルーベルト」

「…………」

「ルーベルト!」

「ぐっ」

固まるルーベルトの頭をばしんっと叩くルドルク。今日ばかりはいつものルドルクではない。あの不憫さはどこへいったのか。

「しっかり簡潔に想いを伝えろ。ネムリン嬢が他の誰かを好きなんて勘違いは捨てて自分の想いをぶつけて」

「え?」

思わぬルドルクの言葉にネムリンがどうしてそんなことにと首を傾げたが、ルーベルトは悩みをバラされ、思わずルドルクを睨むも今のルドルクには痛くも痒くもない。

(これ以上二人に振り回されてたまるか)

いい加減ルドルクも限界だったのである。何せほぼ毎日この二人を相手にしてきたのだから。くだらない悩みとまでは言わないが。


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