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5章恋を成就させるのはどっちですか?食べられるクッキーvs食べられないクッキー
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ルドルクはぎょっとした。まさか泣かれるとは思わなかったのだ。無意識の拒絶とはいえ、原因が自分であることに変わりはない。
「アクニー嬢、すまない。私は」
「ごめんなさぁあぁいっ!うあぁんっ」
令嬢らしからぬ泣き方なだけに余計にルドルクの良心は痛んだ。みっともないとか思う暇もないし、自分が原因なのだそんなことをルドルクは思いもしない。
どうすれば落ち着かせられるかで頭がいっぱいだ。
お陰で恐怖心が吹き飛んでいたりもする。だからこそルドルクはそっと大泣きするアクニーを抱き締めた。こんな廊下でとか誰かに見られたらとか、ルーベルトたちに見られているだろうとか気にする余裕はルドルクにない。
ただただアクニーを泣き止ませたいと思って思わずそうしただけに過ぎない。
「すまない。アクニー嬢を傷つけるつもりはなかったんだ」
「うっうっわかって、ますっわ、私が、だめ、でっひくっ」
「そうじゃないんだよ。私は緊張でつい照れ臭くてこうなってしまったんだ。今も胸が高鳴って仕方ない」
人はそう思い込むことでそれが本当になることがある。実際ルドルクの本当に胸は高鳴っていた。
「う、うそ、です………っ!わたしはっひとを、傷つけてばかりでぇ………うぅっ」
だが、ルドルクの恐怖した表情を確かにアクニーは見てしまったわけで、だからこそ泣いているのである。もちろん、日々小さな悩みが積もりに積もりついに爆発したともとれるが。
「恐怖する人を抱き締めたりはできないよ」
「でも、でも………っ」
「アクニー嬢、僕は貴女が好きだ」
「わ、わたしをっ?」
ぐずぐずと泣きながらもようやく顔をあげてルドルクを見るアクニー。その顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃでとても貴族の令嬢とは思えない子供のようなあどけなさがある。
そんなアクニーを見てルドルクも告白がすんなりと出てしまうくらいには好意が持てた。なんだかとてもアクニーが可愛く見えたのだ。
「きっと大変な思いをさせてしまうと思う。けど、必ず僕が貴女を支えるから妻になってくれますか?」
「わ、わた、わたし、なんか、が」
えぐえぐとうまく話せないアクニーにふっとルドルクが笑みを浮かべる。もうルドルクに恐怖心はないだろう。それほどに自然な笑みである。
「僕は君がいい。僕の好きな人を貶めるようは言い方は君でも許さないよ」
「あの、えと」
こうなれば不憫と言われてきたルドルクの姿はなく、まるで別人だ。その様子に涙が収まってきたアクニーの頬は赤い。
元々顔はいいルドルクである。甘い言葉を吐けばどんな令嬢だろうと見惚れてしまってもおかしくはないだろう。
だけどアクニーは混乱した。怖がられたとみっともなく泣いてしまっていれば急に思いもよらない展開にそれはもう混乱した。正直何故告白されているのかアクニーは理解できなかった。
同じく、ルドルクの後ろに隠れていちゃつきながら見守っていた二人、ルーベルトもネムリンも驚きの声をあげている。丸聞こえだ。
二人は隠れる気はないのがわかった。だが、ルドルクは怖くてトラウマだったアクニーが急に可愛く見えて口説くのに必死だし、アクニーは混乱しすぎて互いにルーベルトとネムリンは蚊帳の外である。
「る、ルト様!凄いです!本当に陛下はアクニー嬢を!」
「そうだろう」
なんて声も響くがアクニーとルドルクからは蚊帳の外扱いだ。ちなみにこの急展開に一番驚いているのはルーベルトである。
何故なら彼だけが知っている。ルドルクはトラウマで震えるほどにアクニーを怖がっていたことに。
だが、ルドルクとアクニーが結ばれることはルーベルトにとっては都合のいいことなので何の不満もない。何せ二人を接近させようと色々してルドルクを幾度と倒れさせる事態にさせた張本人なのだから。
「でも急すぎたよね。落ち着いてからゆっくり考えてくれればいい」
「あ………っ」
だが、そんな急展開は終わりを告げる。落ち着いてきたアクニーを見てルドルクが離れていき、アクニーの髪を手で掬いキスをほどこしてそんな言葉を言った。
(返事させとけばいいものを)
強引にいけばいけただろうとばかりに誰よりもここで不満を持ったのはルーベルトである。そんな様子にネムリンは気づかず二人に釘付けだ。
「それとよければ明日お詫びとして食事でもどうかな」
「は、はい」
しかし、後日会う約束。しかも明日取り付ける辺りルドルクは逃がす気がないのが伺える。それを見てルーベルトもまあなんとかなるかと思い直す。
ルドルクとアクニーの明日の予定が決まれば自動的にルーベルトたちも決まる。
「リン、明日は」
「私たちも食事ですね!」
ルドルクとアクニーの進展が気になる故かネムリンは先程の恥ずかしさはどこかへ飛んでいった様子で目をきらきらとさせている。
ネムリンの乙女らしさが出た瞬間だった。
(女神の瞳がきらめいて………)
そしてそんなネムリンに感動するルーベルト。なんとも厄介な人たちに見守られるはめになる二人であった。ある意味では護衛いらずと思えばメリットもあるが全員貴族様である。
明日一番苦労するのはきっと護衛たちであろう。
「アクニー嬢、すまない。私は」
「ごめんなさぁあぁいっ!うあぁんっ」
令嬢らしからぬ泣き方なだけに余計にルドルクの良心は痛んだ。みっともないとか思う暇もないし、自分が原因なのだそんなことをルドルクは思いもしない。
どうすれば落ち着かせられるかで頭がいっぱいだ。
お陰で恐怖心が吹き飛んでいたりもする。だからこそルドルクはそっと大泣きするアクニーを抱き締めた。こんな廊下でとか誰かに見られたらとか、ルーベルトたちに見られているだろうとか気にする余裕はルドルクにない。
ただただアクニーを泣き止ませたいと思って思わずそうしただけに過ぎない。
「すまない。アクニー嬢を傷つけるつもりはなかったんだ」
「うっうっわかって、ますっわ、私が、だめ、でっひくっ」
「そうじゃないんだよ。私は緊張でつい照れ臭くてこうなってしまったんだ。今も胸が高鳴って仕方ない」
人はそう思い込むことでそれが本当になることがある。実際ルドルクの本当に胸は高鳴っていた。
「う、うそ、です………っ!わたしはっひとを、傷つけてばかりでぇ………うぅっ」
だが、ルドルクの恐怖した表情を確かにアクニーは見てしまったわけで、だからこそ泣いているのである。もちろん、日々小さな悩みが積もりに積もりついに爆発したともとれるが。
「恐怖する人を抱き締めたりはできないよ」
「でも、でも………っ」
「アクニー嬢、僕は貴女が好きだ」
「わ、わたしをっ?」
ぐずぐずと泣きながらもようやく顔をあげてルドルクを見るアクニー。その顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃでとても貴族の令嬢とは思えない子供のようなあどけなさがある。
そんなアクニーを見てルドルクも告白がすんなりと出てしまうくらいには好意が持てた。なんだかとてもアクニーが可愛く見えたのだ。
「きっと大変な思いをさせてしまうと思う。けど、必ず僕が貴女を支えるから妻になってくれますか?」
「わ、わた、わたし、なんか、が」
えぐえぐとうまく話せないアクニーにふっとルドルクが笑みを浮かべる。もうルドルクに恐怖心はないだろう。それほどに自然な笑みである。
「僕は君がいい。僕の好きな人を貶めるようは言い方は君でも許さないよ」
「あの、えと」
こうなれば不憫と言われてきたルドルクの姿はなく、まるで別人だ。その様子に涙が収まってきたアクニーの頬は赤い。
元々顔はいいルドルクである。甘い言葉を吐けばどんな令嬢だろうと見惚れてしまってもおかしくはないだろう。
だけどアクニーは混乱した。怖がられたとみっともなく泣いてしまっていれば急に思いもよらない展開にそれはもう混乱した。正直何故告白されているのかアクニーは理解できなかった。
同じく、ルドルクの後ろに隠れていちゃつきながら見守っていた二人、ルーベルトもネムリンも驚きの声をあげている。丸聞こえだ。
二人は隠れる気はないのがわかった。だが、ルドルクは怖くてトラウマだったアクニーが急に可愛く見えて口説くのに必死だし、アクニーは混乱しすぎて互いにルーベルトとネムリンは蚊帳の外である。
「る、ルト様!凄いです!本当に陛下はアクニー嬢を!」
「そうだろう」
なんて声も響くがアクニーとルドルクからは蚊帳の外扱いだ。ちなみにこの急展開に一番驚いているのはルーベルトである。
何故なら彼だけが知っている。ルドルクはトラウマで震えるほどにアクニーを怖がっていたことに。
だが、ルドルクとアクニーが結ばれることはルーベルトにとっては都合のいいことなので何の不満もない。何せ二人を接近させようと色々してルドルクを幾度と倒れさせる事態にさせた張本人なのだから。
「でも急すぎたよね。落ち着いてからゆっくり考えてくれればいい」
「あ………っ」
だが、そんな急展開は終わりを告げる。落ち着いてきたアクニーを見てルドルクが離れていき、アクニーの髪を手で掬いキスをほどこしてそんな言葉を言った。
(返事させとけばいいものを)
強引にいけばいけただろうとばかりに誰よりもここで不満を持ったのはルーベルトである。そんな様子にネムリンは気づかず二人に釘付けだ。
「それとよければ明日お詫びとして食事でもどうかな」
「は、はい」
しかし、後日会う約束。しかも明日取り付ける辺りルドルクは逃がす気がないのが伺える。それを見てルーベルトもまあなんとかなるかと思い直す。
ルドルクとアクニーの明日の予定が決まれば自動的にルーベルトたちも決まる。
「リン、明日は」
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ルドルクとアクニーの進展が気になる故かネムリンは先程の恥ずかしさはどこかへ飛んでいった様子で目をきらきらとさせている。
ネムリンの乙女らしさが出た瞬間だった。
(女神の瞳がきらめいて………)
そしてそんなネムリンに感動するルーベルト。なんとも厄介な人たちに見守られるはめになる二人であった。ある意味では護衛いらずと思えばメリットもあるが全員貴族様である。
明日一番苦労するのはきっと護衛たちであろう。
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