不眠症公爵様を気絶(寝か)させたら婚約者に選ばれました

荷居人(にいと)

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4章王様の相談窓口はどこですか?

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「では、続けますが………」

「僕に味方がいないぃぃっ」

ぎゅるるるとお腹と共に悲鳴をあげるルドルク。アクニーはそのまま話を続けた。

「とりあえずあーだこーだありまして、ルーベルト様が陛下に下剤を」

「全くわからない!このお腹の辛さはお前か、ルーベルト!うぐぅっ」

省略しすぎた説明にルドルクのツッコミは止まらない。だが、わかったことがひとつあった。ある意味では毒になるものを自分に飲ませたのはルーベルトであると。

「ネムリンに抱かれたからと妬いたわけではない」

「ネムリン嬢にまで、僕は…………っほんと、なにが………」

嫉妬が原因かとわかりやすい理由に至るも、令嬢二人に軽々担がれてしまったことに対してやりきれない気持ちになるルドルク。これがまだネムリンであり、ネムリンだけとなれば怪力なのは理解しているだけにショックは少なかったかもしれない。

「アクニー嬢が泣かれてしまい、そのままへたり込んでしまわれたので陛下とアクニー嬢を両肩に乗せて運んだだけです」

「なんで泣いたのかもわからないけど、二人を担ぐネムリン嬢はさすがだね、うん」

もう色々どうでもよくなってきたルドルクの思うことはひとつ。

(いい加減トイレをゆっくりさせてもらえないかな)

扉で閉ざされているため誰にも見えていないが、ルドルクは青を通り越して顔色は白くなっていた。

そんな中扉の外からは………

「陛下、私は………っネムリン様に憧れていただけだったみたいなんです!ネムリン様を間近で見て確信しました!私はただネムリン様に気づいてもらえず構ってもらえなくて拗ねていただけだと!それに気づけなかったばかりに陛下を気絶させてしまい申し訳ありません!」

急な謝罪。明らかにルドルクは巻き込まれただけなのがわかる。要はアクニーがネムリンに関わるきっかけのためにダシにされたようなものだ。

「これが不運というものです。陛下」

「ねぇ、サギーシ。本当はネムリン嬢に罪がいかないこととかわかってたんじゃ」

「アクニー様、陛下はお許しになられるそうですよ」

「感謝いたします!陛下!」

「いや、一言もそんなこと言ってないよ!?」

ルドルクの意見は何一つ言わせないままに話は進んでいく。

「陛下、アクニー様との出会いは陛下にとってよいものとなりますのでお許しを。陛下のみならず、私もよいものとなりますが」

「え?」

サギーシの予言めいた言葉にルドルクはお腹を抑えながらぽかんとする。この出来事は必然であり、ルドルクがどうなるかわかった上で仕組まれていたようにすら思える言葉。

「では、失礼いたします」

「え、ちょ、どういう」

「帰るか」

「そうですね。アクニー嬢もご一緒にいかがですか?」

「あ、ぜ、ぜひ!」

ルドルクの声を無視してサギーシを筆頭に遠ざかる足音。ルドルクにとって気になる言葉をルーベルトたちは知っているのか興味ないのか、誰もサギーシの言葉を追求することはなかった。

「うう………っ」

ただひとり気になるものの追いかけられないルドルクは、一晩トイレに引きこもることとなった。

翌日トイレに引きこもる必要がないくらいには回復したルドルク。サギーシの言葉に心当たりはないかと居合わせていた人物たちに言うもとぼけられているのか知らないのか相手にされず、その日以来お腹が緩くなったルドルクが顔の描かれたクッキーにぶつぶつ言う姿がちらほら目撃されることになった。

王様の相談相手に選ばれたのはクッキーでした。それは喋るどころか動きもしない固形物である。それを見たルーベルトとネムリンたちが多少引いたのは仕方あるまい。若干心配もあるが。

ちなみにネムリンの取り合いでアクニーとルーベルトのネムリンを巡ったバトル名物ができるのだが、それはまたの話。
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