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2章睡眠の偉大さを知りました
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「よし、聞き飽きた。もう十分に理解した」
「まだ半分も内容について話せていないが」
「だから十分なんだよ。聞かされる気持ちも考えてくれないかな」
「お前が聞いたんだろう」
「うん、聞いたの今物凄く後悔している」
ネムリンが手紙の届いた日を思い出している間に、ルーベルトはつらつらと手紙に書いた文を思い出しながらルドルクに文にした言葉を言っていた。それを聞き耐えかねて止めたルドルクは、それはもう手紙の内容を聞いてしまったことに後悔している。
「で、とりあえず顔を忘れたとよくバカ正直に書きながら期待するように書けたね。ネムリン嬢じゃなくても愛らしい顔とか顔に期待する言葉はプレッシャーにしかならないものだよ?」
「実際愛らしいだろう」
「そういうことじゃなくて……」
「なんだ?ネムリンは愛らしくないと?俺の友人の目は腐ったらしいな。よし、わかった。目を覚ますためにも一度王家に喧嘩を………」
「とても愛らしいと思うよ!?」
「ネムリンはやらんぞ」
「いや、奪う気はないから。どう答えるのが正解だったのかな?」
今物凄く友人を殴りたいと思うくらいには、普段温厚で怒ることのないルドルクが疲れで苛立ちを覚えていた。
「あの………」
「どうした?ネムリン」
先日の出来事を既に振り返り終わり、どうやら手紙についての話は終わった様子の二人が、手紙に書かれたことを振り返るように自分について何やら語っている様子にこれ以上されてはたまらないと居たたまれなくなり、声をかけたネムリン。
「その、手………なんですが」
「ああ、すまない。触り心地がよく、手放せないようだ」
「ええ………っ?」
とりあえず用件となればルドルクと話している間もネムリンの両手を包むルーベルトの手について。指摘すれば外されるかと思ったネムリンだったがルーベルトは全く手を離す気はないようだ。その様子にネムリンは戸惑うことしかできない。
つい先程まで一言も話せず、ネムリンに全く近づけなくなっていたはずのルーベルトとは思えないくらい積極的と言うべきか。一度近づいて触れることでそこは吹っ切れた様子だ。それでもわかりにくいが惚れた人を前に緊張はあり過ぎるぐらいあるようで、笑みひとつ見せることなく無表情なルーベルト。
ネムリンについて本人がいないときに、テンションをあげて笑みを絶やさずルドルクに語っていた人物とは思えない。
「いや、手放せないじゃなく、離してあげなよ」
その様子を間近で見せられていたルドルクはネムリンを助けるようにルーベルトへ呆れた様子で言う。
「ならネムリンを持ち帰っていいか」
「何がならなの?だめに決まってるでしょ。結婚まで手出しはだめだよ」
「初日からそんなことをするものか。ネムリンを愛したいのは山々だが、まずは慈しむのが先だ。がっついてネムリンに嫌われるなどもってのほか。ただ持ち帰って用意した部屋に結婚の日まで世話をするだけだ」
「え?」
「余計だめに決まってるでしょ」
最後の言葉は監禁すると堂々と言っているようなもの。あの言葉は本当だったのかと驚きを見せるネムリンと、用意した部屋はなんだと顔がひきつるルドルク。
「な、何故だ?」
「寧ろ持ち帰れると思ったの?」
本気で持ち帰れないことに動揺した様子のルーベルトに、自分の友人の思考がわからないことはいくらでもあったが今日ほどわからない日はないとひきつった笑みでルドルクは問う。
「ネムリンは俺の婚約者だ」
「そうだね。でも婚約者だからって閉じ込めていいわけじゃないよ?」
「だが、ネムリンはこんなに愛らしい!誰に狙われるか………!」
「ウン、ソウダネ。でも、ネムリン嬢は君を気絶させられるくらいに強いから大丈夫」
否定すればより面倒と思い、肯定しつつも多少のことはネムリンなら自衛できると伝えるルドルク。会話に参加してはいないものの、ルドルクの言葉にうんうんと頷くのはネムリン。
ネムリンは何故これほどまでにルーベルトに心配されるのか全くわからないが、そこまで心配されるほど弱くはない。ルーベルトは身を持って知っているはずなのに何故と思うネムリンとルドルクで、そんな気持ちを悟らずネムリンを心底心配するのはルーベルトである。
「それでも必ず気絶させられるとは限らない」
「いや、気絶どころか………まあ、君を気絶させられる力がある時点でもし気絶しない何かがいるなら、それはもう熊か何かだろうね」
「…………」
ルドルクの失礼な言葉に、思わず女性の矜持を捨てているわけではないネムリンは気弱な態度が一瞬どこかへ行き、ルドルクを睨みそうになったがはっとして俯く。
「お前は何を言っている。ネムリンほどにか弱い女性はいないだろう。熊など、蟻でさえもネムリンには難しい相手だ」
「寧ろ君が何を言っている?」
殴られた拳の重さまで忘れているのかと思うルドルク。意識不明になったと聞く子息の話を覚えているだけにルーベルトのことがなくてもネムリンが蟻で苦戦するような令嬢じゃないことはわかる。寧ろ蟻に苦戦する令嬢がいるのかと思いもするわけだが。
ルーベルトの言い分にはそれはそれでネムリンもか弱い認定が過ぎるのではと思わなくもなかった。
「まだ半分も内容について話せていないが」
「だから十分なんだよ。聞かされる気持ちも考えてくれないかな」
「お前が聞いたんだろう」
「うん、聞いたの今物凄く後悔している」
ネムリンが手紙の届いた日を思い出している間に、ルーベルトはつらつらと手紙に書いた文を思い出しながらルドルクに文にした言葉を言っていた。それを聞き耐えかねて止めたルドルクは、それはもう手紙の内容を聞いてしまったことに後悔している。
「で、とりあえず顔を忘れたとよくバカ正直に書きながら期待するように書けたね。ネムリン嬢じゃなくても愛らしい顔とか顔に期待する言葉はプレッシャーにしかならないものだよ?」
「実際愛らしいだろう」
「そういうことじゃなくて……」
「なんだ?ネムリンは愛らしくないと?俺の友人の目は腐ったらしいな。よし、わかった。目を覚ますためにも一度王家に喧嘩を………」
「とても愛らしいと思うよ!?」
「ネムリンはやらんぞ」
「いや、奪う気はないから。どう答えるのが正解だったのかな?」
今物凄く友人を殴りたいと思うくらいには、普段温厚で怒ることのないルドルクが疲れで苛立ちを覚えていた。
「あの………」
「どうした?ネムリン」
先日の出来事を既に振り返り終わり、どうやら手紙についての話は終わった様子の二人が、手紙に書かれたことを振り返るように自分について何やら語っている様子にこれ以上されてはたまらないと居たたまれなくなり、声をかけたネムリン。
「その、手………なんですが」
「ああ、すまない。触り心地がよく、手放せないようだ」
「ええ………っ?」
とりあえず用件となればルドルクと話している間もネムリンの両手を包むルーベルトの手について。指摘すれば外されるかと思ったネムリンだったがルーベルトは全く手を離す気はないようだ。その様子にネムリンは戸惑うことしかできない。
つい先程まで一言も話せず、ネムリンに全く近づけなくなっていたはずのルーベルトとは思えないくらい積極的と言うべきか。一度近づいて触れることでそこは吹っ切れた様子だ。それでもわかりにくいが惚れた人を前に緊張はあり過ぎるぐらいあるようで、笑みひとつ見せることなく無表情なルーベルト。
ネムリンについて本人がいないときに、テンションをあげて笑みを絶やさずルドルクに語っていた人物とは思えない。
「いや、手放せないじゃなく、離してあげなよ」
その様子を間近で見せられていたルドルクはネムリンを助けるようにルーベルトへ呆れた様子で言う。
「ならネムリンを持ち帰っていいか」
「何がならなの?だめに決まってるでしょ。結婚まで手出しはだめだよ」
「初日からそんなことをするものか。ネムリンを愛したいのは山々だが、まずは慈しむのが先だ。がっついてネムリンに嫌われるなどもってのほか。ただ持ち帰って用意した部屋に結婚の日まで世話をするだけだ」
「え?」
「余計だめに決まってるでしょ」
最後の言葉は監禁すると堂々と言っているようなもの。あの言葉は本当だったのかと驚きを見せるネムリンと、用意した部屋はなんだと顔がひきつるルドルク。
「な、何故だ?」
「寧ろ持ち帰れると思ったの?」
本気で持ち帰れないことに動揺した様子のルーベルトに、自分の友人の思考がわからないことはいくらでもあったが今日ほどわからない日はないとひきつった笑みでルドルクは問う。
「ネムリンは俺の婚約者だ」
「そうだね。でも婚約者だからって閉じ込めていいわけじゃないよ?」
「だが、ネムリンはこんなに愛らしい!誰に狙われるか………!」
「ウン、ソウダネ。でも、ネムリン嬢は君を気絶させられるくらいに強いから大丈夫」
否定すればより面倒と思い、肯定しつつも多少のことはネムリンなら自衛できると伝えるルドルク。会話に参加してはいないものの、ルドルクの言葉にうんうんと頷くのはネムリン。
ネムリンは何故これほどまでにルーベルトに心配されるのか全くわからないが、そこまで心配されるほど弱くはない。ルーベルトは身を持って知っているはずなのに何故と思うネムリンとルドルクで、そんな気持ちを悟らずネムリンを心底心配するのはルーベルトである。
「それでも必ず気絶させられるとは限らない」
「いや、気絶どころか………まあ、君を気絶させられる力がある時点でもし気絶しない何かがいるなら、それはもう熊か何かだろうね」
「…………」
ルドルクの失礼な言葉に、思わず女性の矜持を捨てているわけではないネムリンは気弱な態度が一瞬どこかへ行き、ルドルクを睨みそうになったがはっとして俯く。
「お前は何を言っている。ネムリンほどにか弱い女性はいないだろう。熊など、蟻でさえもネムリンには難しい相手だ」
「寧ろ君が何を言っている?」
殴られた拳の重さまで忘れているのかと思うルドルク。意識不明になったと聞く子息の話を覚えているだけにルーベルトのことがなくてもネムリンが蟻で苦戦するような令嬢じゃないことはわかる。寧ろ蟻に苦戦する令嬢がいるのかと思いもするわけだが。
ルーベルトの言い分にはそれはそれでネムリンもか弱い認定が過ぎるのではと思わなくもなかった。
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