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「わあっ嬉しい!これで私もっと頑張れるよ!」
「ああ!大変かもしれないけど、俺もできることはするからさ!」
「うん!」
この時の俺は、いつも通りの愛海を見て、まだどこか重く考えれてなかったことを後に実感することとなる。
あれから俺はもちろん、時に友人たちが交代交代に順番を決めてお見舞いに来ていた。
愛海の両親に会えば少し話もしたりして、最初こそ案外愛海も平気そうでもしかしたらよくなってるのかもといい方に考えるようしていたし、愛海のお見舞いに来た友人たちと元気そうでよかったななんて話したりも……。
だけど、ある日忘れ物をして愛海の病室に戻ろうとしたときだった。一人になっていたであろう愛海が泣きながら苦しそうにしていたのを見たのは。
「くぅ………っいた、い……いたいよ………っなんで、なんで、私なの……っ」
「……っ………」
痛みもあるだろう。でもそれ以上にその痛みが愛海の未来を壊していくことを愛海は…………。何故、気づいてやれなかったのだろうと思った。人知れず痛みと闘っていた愛海を。
愛海は強い。あれだけ苦しそうにしながらも先ほどまでその痛みを少しも見せずに笑っていたのだから。
いや、先ほどだけじゃない可能性もある。一体いつから、もしかすると最初に見舞いに………下手をすれば倒れる前から心配かけまいと………。
そんな不安が襲いかかる。もしそうなら気づいてやれなかったことに生涯俺は後悔するだろう。何故相談しなかったんだと責めるべきではない。俺は医者でもなんでもないし、病院に行こうとぐらいしか言えなかっただろうから。
そんな自分がただただ情けない。
「愛海」
「あ………こう、すけ………ちがうの、これは、ちがうの」
「愛海」
「わたし、へいきだよ?ただ、ちょっとね、う………っ」
「愛海、無理しなくていい。ただ聞きたいんだ。いつからだ?痛みがあるのは」
「それ、は………」
その表情でわかる。愛海はたぶん、ずっと俺の知らないところで我慢してきていたのだと。
「愛海、俺は怒らないし、愛海を尊重する。ただ知らないことで後悔はしたくない。俺は愛海が好きだから……愛してるから」
愛海が何を恐れているかはわからない。それでも俺はただただ聞きたい。どういう理由で隠してきたのか、全てを受け入れる気持ちで。
今の俺にできることはそれぐらいだから。
「ちがうの………っ元々余命宣告は受けてて、だから、わたし、どうせ死ぬならせめてやれることはやりたくて……っ痛み止めでなんとかやってこれたけど、もうそれもだめで………わたし、わた、し………!」
「愛海」
「あ……」
混乱しているだろう愛海をそっと抱き締めれば、沈黙した愛海。愛海は心配させたくないとかじゃなく、ただ普通の日常をできる限り送りたかったのだろう。だから黙っていた。みんなが気を遣わないように。ただただ、元気な姿を見せて。
だって愛海はいつだってみんなの中心で人を笑顔にさせてきたから。そんな中で余命宣告をあえて伝えた理由はわからないけど、勇気はいったはずだ。普通に過ごしたかった愛海にとっては。
「愛海、俺、愛海を幸せにするよ」
「幸助……」
「死ぬかもしれない未来なんて忘れるぐらいに幸せにする。無責任かもしれないけど、奇跡とかあるかもだろ?幸せいっぱいになったらさ、生きてやるってもっとなって人間の生命力に癌も逃げてくかもしれないし?」
「ふふ、何それ………」
「ちゃんと幸せにするから少しだけ準備する。だから少しだけ時間ちょうだい」
「うん………何する気かはわからないけど、ちゃんと幸せちょーだいね?」
「ああ!」
そうして愛海の気持ちを知ったその日俺はひとつの決意をした。
「ああ!大変かもしれないけど、俺もできることはするからさ!」
「うん!」
この時の俺は、いつも通りの愛海を見て、まだどこか重く考えれてなかったことを後に実感することとなる。
あれから俺はもちろん、時に友人たちが交代交代に順番を決めてお見舞いに来ていた。
愛海の両親に会えば少し話もしたりして、最初こそ案外愛海も平気そうでもしかしたらよくなってるのかもといい方に考えるようしていたし、愛海のお見舞いに来た友人たちと元気そうでよかったななんて話したりも……。
だけど、ある日忘れ物をして愛海の病室に戻ろうとしたときだった。一人になっていたであろう愛海が泣きながら苦しそうにしていたのを見たのは。
「くぅ………っいた、い……いたいよ………っなんで、なんで、私なの……っ」
「……っ………」
痛みもあるだろう。でもそれ以上にその痛みが愛海の未来を壊していくことを愛海は…………。何故、気づいてやれなかったのだろうと思った。人知れず痛みと闘っていた愛海を。
愛海は強い。あれだけ苦しそうにしながらも先ほどまでその痛みを少しも見せずに笑っていたのだから。
いや、先ほどだけじゃない可能性もある。一体いつから、もしかすると最初に見舞いに………下手をすれば倒れる前から心配かけまいと………。
そんな不安が襲いかかる。もしそうなら気づいてやれなかったことに生涯俺は後悔するだろう。何故相談しなかったんだと責めるべきではない。俺は医者でもなんでもないし、病院に行こうとぐらいしか言えなかっただろうから。
そんな自分がただただ情けない。
「愛海」
「あ………こう、すけ………ちがうの、これは、ちがうの」
「愛海」
「わたし、へいきだよ?ただ、ちょっとね、う………っ」
「愛海、無理しなくていい。ただ聞きたいんだ。いつからだ?痛みがあるのは」
「それ、は………」
その表情でわかる。愛海はたぶん、ずっと俺の知らないところで我慢してきていたのだと。
「愛海、俺は怒らないし、愛海を尊重する。ただ知らないことで後悔はしたくない。俺は愛海が好きだから……愛してるから」
愛海が何を恐れているかはわからない。それでも俺はただただ聞きたい。どういう理由で隠してきたのか、全てを受け入れる気持ちで。
今の俺にできることはそれぐらいだから。
「ちがうの………っ元々余命宣告は受けてて、だから、わたし、どうせ死ぬならせめてやれることはやりたくて……っ痛み止めでなんとかやってこれたけど、もうそれもだめで………わたし、わた、し………!」
「愛海」
「あ……」
混乱しているだろう愛海をそっと抱き締めれば、沈黙した愛海。愛海は心配させたくないとかじゃなく、ただ普通の日常をできる限り送りたかったのだろう。だから黙っていた。みんなが気を遣わないように。ただただ、元気な姿を見せて。
だって愛海はいつだってみんなの中心で人を笑顔にさせてきたから。そんな中で余命宣告をあえて伝えた理由はわからないけど、勇気はいったはずだ。普通に過ごしたかった愛海にとっては。
「愛海、俺、愛海を幸せにするよ」
「幸助……」
「死ぬかもしれない未来なんて忘れるぐらいに幸せにする。無責任かもしれないけど、奇跡とかあるかもだろ?幸せいっぱいになったらさ、生きてやるってもっとなって人間の生命力に癌も逃げてくかもしれないし?」
「ふふ、何それ………」
「ちゃんと幸せにするから少しだけ準備する。だから少しだけ時間ちょうだい」
「うん………何する気かはわからないけど、ちゃんと幸せちょーだいね?」
「ああ!」
そうして愛海の気持ちを知ったその日俺はひとつの決意をした。
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