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「好きだよ、幸助」
「俺もだ愛海」
小さい頃から気が合って、喧嘩だってして数えきれないぐらいしてきたけど、それでも俺、野中幸助と白波愛海は結ばれる運命だったのだと俺は今でも思っている。
退屈でも楽しい学校生活、友達やクラスメイトに付き合ってることでからかわれて照れ臭くなりながらも、互いに笑って一緒に勉強したり、ゲームしたり、デートしたり………1日はなんて短いのか、そう思うほどに充実していた。
高校を卒業したら結婚したいねと互いに少し赤くなりながら笑って未来を想像したことすらあった。
しかし、そんな日常が崩れ去るのは夏休み前に愛海が倒れ、救急車で運ばれた日。その日は、夏休み前なのもあり、日差しは暑く熱中症か!?と誰もが思い慌てながらも対処してみんなで愛海の無事を祈った。そんなみんなからのはからいで、愛海を運びに来た救急車に乗せてもらった俺ももちろんのこと。
病院には愛海の親と一緒に俺の親も来た。俺と愛海の親同士も仲がいいため、その日は一緒にランチに出掛けていたようですぐに駆けつけることができたようだ。
病院に来た愛海の親はすぐ医者に呼ばれ、俺と俺の親は来てすぐ検査、診察となった愛海を待つことしかできなかった。
軽い熱中症だったなんて言葉を期待しながら。
しかし、現実はそんなに甘くはなかった。
「末期の癌……らしい………」
「え……」
医者との話し合いを終えた愛海の母親が泣いている時点で嫌な予感しかなかったが、愛海の父親が重苦しい言葉で告げたそれは信じたくない言葉だった。
「気づくのが遅く手遅れだと………。今の治療法では進行を遅らせることしかできないらしい。ただ、そうなると副作用で辛いものとなるだろう。せめて安らかに余命を迎えるならば進行をそのままに痛み止めだけの処方も可能だと言われた」
茫然自失といった表情で愛海の父親が語る。どちらも愛海にとって辛い選択だ。
愛海が死ぬ……そんなこと当然だが考えたことがなかった。何故気づかなかったんだろう。毎日面白おかしく過ごす中でよく愛海を見ていれば気づけたんじゃないのか、そんなもしかしたらなんてことを考えてしまう。
考えたって仕方がないと言うのに。
「愛海には……話すんですか」
「迷ったが………話すつもりだ。知ることで辛い思いはさせるかもしれない。だが、知らずに病気と……何と闘っているのかわからないのは恐怖だろう。そんな思いのままにさせたくはない」
話さなくとも自分のことなのだから愛海もいつかは気づいてしまう可能性だってある。それを思えば愛海の父親の選択は正しいと思えた。
「……知って愛海が悲しむなら、その分、俺が愛海を笑わせます………!」
「ありがとう、幸助くん」
悲しげに笑う愛海の父に、もしかしたら奇跡が……なんて確証のないことは言葉に出せなかった。
その後は、家族で一度話したいという愛海の両親の気持ちを優先して、俺たちは愛海と、結局病院で顔を合わせることもなく帰宅した。
帰宅後、スマホを見ればクラスメイトからは愛海を心配する連絡がたくさん来ていたが、返す元気はなくそのまま眠りについた。
これが夢だったらいいのに。そんなことを願いながら。
「俺もだ愛海」
小さい頃から気が合って、喧嘩だってして数えきれないぐらいしてきたけど、それでも俺、野中幸助と白波愛海は結ばれる運命だったのだと俺は今でも思っている。
退屈でも楽しい学校生活、友達やクラスメイトに付き合ってることでからかわれて照れ臭くなりながらも、互いに笑って一緒に勉強したり、ゲームしたり、デートしたり………1日はなんて短いのか、そう思うほどに充実していた。
高校を卒業したら結婚したいねと互いに少し赤くなりながら笑って未来を想像したことすらあった。
しかし、そんな日常が崩れ去るのは夏休み前に愛海が倒れ、救急車で運ばれた日。その日は、夏休み前なのもあり、日差しは暑く熱中症か!?と誰もが思い慌てながらも対処してみんなで愛海の無事を祈った。そんなみんなからのはからいで、愛海を運びに来た救急車に乗せてもらった俺ももちろんのこと。
病院には愛海の親と一緒に俺の親も来た。俺と愛海の親同士も仲がいいため、その日は一緒にランチに出掛けていたようですぐに駆けつけることができたようだ。
病院に来た愛海の親はすぐ医者に呼ばれ、俺と俺の親は来てすぐ検査、診察となった愛海を待つことしかできなかった。
軽い熱中症だったなんて言葉を期待しながら。
しかし、現実はそんなに甘くはなかった。
「末期の癌……らしい………」
「え……」
医者との話し合いを終えた愛海の母親が泣いている時点で嫌な予感しかなかったが、愛海の父親が重苦しい言葉で告げたそれは信じたくない言葉だった。
「気づくのが遅く手遅れだと………。今の治療法では進行を遅らせることしかできないらしい。ただ、そうなると副作用で辛いものとなるだろう。せめて安らかに余命を迎えるならば進行をそのままに痛み止めだけの処方も可能だと言われた」
茫然自失といった表情で愛海の父親が語る。どちらも愛海にとって辛い選択だ。
愛海が死ぬ……そんなこと当然だが考えたことがなかった。何故気づかなかったんだろう。毎日面白おかしく過ごす中でよく愛海を見ていれば気づけたんじゃないのか、そんなもしかしたらなんてことを考えてしまう。
考えたって仕方がないと言うのに。
「愛海には……話すんですか」
「迷ったが………話すつもりだ。知ることで辛い思いはさせるかもしれない。だが、知らずに病気と……何と闘っているのかわからないのは恐怖だろう。そんな思いのままにさせたくはない」
話さなくとも自分のことなのだから愛海もいつかは気づいてしまう可能性だってある。それを思えば愛海の父親の選択は正しいと思えた。
「……知って愛海が悲しむなら、その分、俺が愛海を笑わせます………!」
「ありがとう、幸助くん」
悲しげに笑う愛海の父に、もしかしたら奇跡が……なんて確証のないことは言葉に出せなかった。
その後は、家族で一度話したいという愛海の両親の気持ちを優先して、俺たちは愛海と、結局病院で顔を合わせることもなく帰宅した。
帰宅後、スマホを見ればクラスメイトからは愛海を心配する連絡がたくさん来ていたが、返す元気はなくそのまま眠りについた。
これが夢だったらいいのに。そんなことを願いながら。
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