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3章婚約者9歳、王子12歳
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スアンは有名だ。最年少にして副団長。騎士たちも少年相手でもその強さと手腕を知るがために逆らうものはいない。団長にこそ負けるはものの、包帯で隠された顔は何を考えているかわからず、剣だけでなく生まれ持つ怪力に誰もが怯える存在。
そう、誰もが彼女を少年だと思っている。それが女子の制服を着て歩けばそれだけで誰もが騒ぐだろう。つまりは周囲が絶対混乱する。
俺と同じく男子生徒の服を着るにしても女とバレた時、校則違反として王族の婚約者の仕出かしたこととはいえ、王族の、しかも次期王と言われる俺が校則違反を許すとは何事だとなるわけだ。校則すら守れないのが将来の王とはとそれだけで評価が落ちるのはいただけない。
ならば女らしく女の制服を……と改めてスアンを見るが、似合わない。女なのに、今回行く学園の制服を思い浮かべて見たが、似合わない。男の制服の方が寧ろしっくり来る。
女装癖でもあるのかとスアンは疑われそうだ。いや、女なのだから女装にはならない。ならないのだが、どうしたものかと頭が痛くなる。
「つきましては、スカートを履く許可を頂けますか」
「は?」
「スカートは女の着るものかと思いまして、殿下はお嫌かと」
気にするところはそこなのかと思わずスアンを凝視する。義務なのだから仕方ないと言えばそれまでだ。わざわざ許可をとることもないそれに許可をとることに対して律儀と言うべきか。
俺が許可しなければどうするつもりだったのかと思うが、もう考えても仕方ないと諦めることにした。
「勝手にしろ……」
「それと、守護騎士として行くのはもちろんなのですが婚約者としての姿をするべきですか?」
「それは……」
恐らく、確実に探りは入る。女子の制服の時点でスアンに探りは入るだろう。簡単に探られるようなタマではないが。
要はいっそのこと自分が守護騎士であり、婚約者であることを広めてしまうかということだ。そうなると婚約発表も早まることにはなるだろう。スアンが王妃の力量があまりに不足しているとなれば発表するまでもなく、婚約破棄になるが、正直スアンならばそんなことにはならないと今なら思える。色々と規格外なのはともかく。
だが、よくよく考えるとそれでもいい気がした。どうせ、スアンをどうこうできるやつがいるとは思えないからだ。男としてどうかと思われようが、スアンは未知の生物。どうせ似合わない格好で女姿を晒し笑われるくらいなら、婚約者として少しでも見目に気遣った方が利が大きい気がした。
わざわざ笑われる見目になる必要もない。スアンを笑う勇気があるものがいるとは思えないとはいえ。まあ、何にしろ、バレないならそれはそれで隠すつもりだが。
「婚約者として、頼む」
「かしこまりました」
正直今の見目のまま、どう女を取り戻す気かと思う。まさか包帯が外されたりするのだろうか?包帯を巻いて顔を隠すがために余計に少年らしく見える。
もし、包帯の下がどう隠そうと少女の器たる顔ならそれだけで大分と変わることだろう。その時俺は嫌悪を抱くのだろうか?と思いつつも、二年もの月日が経ちながら未だ見たことがない婚約者の顔に興味がないと言えば嘘になる。
一度父に聞いては見たが、家族以外知らないらしいと聞いて驚いたものだ。彼女は3歳の頃から顔を隠すようになったのだと。それを聞いててっきり俺が女嫌いであるから以外にも実は顔に傷でもあるのかと思ったが、そうではないらしい。さらには令嬢ではありえないほどに強さを身に付けようとし、スアンの師を知る者はいないと言う。それは家族すらも。
一体3歳の頃に何があったのかと思うほどにスアンは謎に溢れている。飽きない婚約者だと呆れもあるが、そのおかげで父の目に止まる何かがあり特に嫌悪感のない婚約者を手に入れたと思えばよかったかもしれない。
次期の王として結婚はするべきだ。国に尽くしたいが、わざわざ嫌いな女を国のために嫁に貰わなければならないことだけが嫌だった。女は時に国を傾けると思っているが故に。
それも、スアンが来て変わった。スアンは必要経費以外に手をつけず、守護騎士でありながら思わぬ発想力もあってその中には国の発展に繋がりそうなものもあった。今はまだ準備段階までしか動かせないが、タイミングを見てそれを実行しようとも考えている。
規格外な点はともかく、スアンなら王妃として国を傾けるようなバカな真似はしなさそうだと今の俺は気持ちの観点からしても、スアンを婚約破棄しようなどという思いはもうない。
とはいえ、さすがに国民を傷つけるわけにはいかないという姿勢はいいが、調子づかないよう脅すだけのために、城にもろい部分があるからと壁や床を壊す真似だけは自重してほしいと思う。
修繕するのは城なだけに、高額。婚約者ができてしまえば着飾るのが好きな女は宝石やドレスで無駄金を使う日々だろうと考えていた日が懐かしい。まさか壁や床の修繕費に成り代わるとは全く考えていなかった。考えるはずもない。
とはいえ、それで国のお金が使われている様子もなかったため次第に疑問が募る。
確かにスアンは守護騎士としての給与もあるようだが、城の修繕費は一部といえど守護騎士としてもらってる分では賄えないものだった故に。だから本人に聞いてみれば、さすがと言うべきか、何をしてるんだと咎めるべきか、騎士とは別にまたしても偽名を使って冒険者としての依頼も受けているのだとか。
『仮面のフィン』とこれまた最近有名の二つ名だった。かつらを被り、仮面で顔を隠して早朝に依頼をこなしては一時間もせず依頼を達成と既にBランクなのだとか。なろうと思えばAランクにも行けるが、指名依頼が増えるらしく、守護騎士として早朝しか動けないのと護衛依頼を受けたことがないためなれないのだとか。
ちなみに冒険者は親に見捨てられた子供救済措置で年齢制限はない。子供は薬草採取で小遣いを稼ぎはするものの、間違っても魔物討伐で名をあげることはまずないと聞く。貴族が教育を受けて冒険者になり、子供ながらにそこそこ倒せても最弱の魔物ばかり。
結局は9歳でBランクにいけるスアンがどこまでも規格外なだけ。まあ騎士の副団長としては低いかもしれないが……。まあ、それはそれとして、そうなると早朝に依頼、夜はギリギリまで俺の守護騎士として共にいるのがスアンの日課になる。ちゃんと寝れているのか?とは思うがスアンなら多少寝なくとも大丈夫な気がするのは俺だけだろうか。
そう思考している内に、婚約者としてどのような格好で来るのか、ちらりと立って座ろうとしないいつものスアンにだんだん不安になる俺は、それを振り切るように仕事に没頭した。
そう、誰もが彼女を少年だと思っている。それが女子の制服を着て歩けばそれだけで誰もが騒ぐだろう。つまりは周囲が絶対混乱する。
俺と同じく男子生徒の服を着るにしても女とバレた時、校則違反として王族の婚約者の仕出かしたこととはいえ、王族の、しかも次期王と言われる俺が校則違反を許すとは何事だとなるわけだ。校則すら守れないのが将来の王とはとそれだけで評価が落ちるのはいただけない。
ならば女らしく女の制服を……と改めてスアンを見るが、似合わない。女なのに、今回行く学園の制服を思い浮かべて見たが、似合わない。男の制服の方が寧ろしっくり来る。
女装癖でもあるのかとスアンは疑われそうだ。いや、女なのだから女装にはならない。ならないのだが、どうしたものかと頭が痛くなる。
「つきましては、スカートを履く許可を頂けますか」
「は?」
「スカートは女の着るものかと思いまして、殿下はお嫌かと」
気にするところはそこなのかと思わずスアンを凝視する。義務なのだから仕方ないと言えばそれまでだ。わざわざ許可をとることもないそれに許可をとることに対して律儀と言うべきか。
俺が許可しなければどうするつもりだったのかと思うが、もう考えても仕方ないと諦めることにした。
「勝手にしろ……」
「それと、守護騎士として行くのはもちろんなのですが婚約者としての姿をするべきですか?」
「それは……」
恐らく、確実に探りは入る。女子の制服の時点でスアンに探りは入るだろう。簡単に探られるようなタマではないが。
要はいっそのこと自分が守護騎士であり、婚約者であることを広めてしまうかということだ。そうなると婚約発表も早まることにはなるだろう。スアンが王妃の力量があまりに不足しているとなれば発表するまでもなく、婚約破棄になるが、正直スアンならばそんなことにはならないと今なら思える。色々と規格外なのはともかく。
だが、よくよく考えるとそれでもいい気がした。どうせ、スアンをどうこうできるやつがいるとは思えないからだ。男としてどうかと思われようが、スアンは未知の生物。どうせ似合わない格好で女姿を晒し笑われるくらいなら、婚約者として少しでも見目に気遣った方が利が大きい気がした。
わざわざ笑われる見目になる必要もない。スアンを笑う勇気があるものがいるとは思えないとはいえ。まあ、何にしろ、バレないならそれはそれで隠すつもりだが。
「婚約者として、頼む」
「かしこまりました」
正直今の見目のまま、どう女を取り戻す気かと思う。まさか包帯が外されたりするのだろうか?包帯を巻いて顔を隠すがために余計に少年らしく見える。
もし、包帯の下がどう隠そうと少女の器たる顔ならそれだけで大分と変わることだろう。その時俺は嫌悪を抱くのだろうか?と思いつつも、二年もの月日が経ちながら未だ見たことがない婚約者の顔に興味がないと言えば嘘になる。
一度父に聞いては見たが、家族以外知らないらしいと聞いて驚いたものだ。彼女は3歳の頃から顔を隠すようになったのだと。それを聞いててっきり俺が女嫌いであるから以外にも実は顔に傷でもあるのかと思ったが、そうではないらしい。さらには令嬢ではありえないほどに強さを身に付けようとし、スアンの師を知る者はいないと言う。それは家族すらも。
一体3歳の頃に何があったのかと思うほどにスアンは謎に溢れている。飽きない婚約者だと呆れもあるが、そのおかげで父の目に止まる何かがあり特に嫌悪感のない婚約者を手に入れたと思えばよかったかもしれない。
次期の王として結婚はするべきだ。国に尽くしたいが、わざわざ嫌いな女を国のために嫁に貰わなければならないことだけが嫌だった。女は時に国を傾けると思っているが故に。
それも、スアンが来て変わった。スアンは必要経費以外に手をつけず、守護騎士でありながら思わぬ発想力もあってその中には国の発展に繋がりそうなものもあった。今はまだ準備段階までしか動かせないが、タイミングを見てそれを実行しようとも考えている。
規格外な点はともかく、スアンなら王妃として国を傾けるようなバカな真似はしなさそうだと今の俺は気持ちの観点からしても、スアンを婚約破棄しようなどという思いはもうない。
とはいえ、さすがに国民を傷つけるわけにはいかないという姿勢はいいが、調子づかないよう脅すだけのために、城にもろい部分があるからと壁や床を壊す真似だけは自重してほしいと思う。
修繕するのは城なだけに、高額。婚約者ができてしまえば着飾るのが好きな女は宝石やドレスで無駄金を使う日々だろうと考えていた日が懐かしい。まさか壁や床の修繕費に成り代わるとは全く考えていなかった。考えるはずもない。
とはいえ、それで国のお金が使われている様子もなかったため次第に疑問が募る。
確かにスアンは守護騎士としての給与もあるようだが、城の修繕費は一部といえど守護騎士としてもらってる分では賄えないものだった故に。だから本人に聞いてみれば、さすがと言うべきか、何をしてるんだと咎めるべきか、騎士とは別にまたしても偽名を使って冒険者としての依頼も受けているのだとか。
『仮面のフィン』とこれまた最近有名の二つ名だった。かつらを被り、仮面で顔を隠して早朝に依頼をこなしては一時間もせず依頼を達成と既にBランクなのだとか。なろうと思えばAランクにも行けるが、指名依頼が増えるらしく、守護騎士として早朝しか動けないのと護衛依頼を受けたことがないためなれないのだとか。
ちなみに冒険者は親に見捨てられた子供救済措置で年齢制限はない。子供は薬草採取で小遣いを稼ぎはするものの、間違っても魔物討伐で名をあげることはまずないと聞く。貴族が教育を受けて冒険者になり、子供ながらにそこそこ倒せても最弱の魔物ばかり。
結局は9歳でBランクにいけるスアンがどこまでも規格外なだけ。まあ騎士の副団長としては低いかもしれないが……。まあ、それはそれとして、そうなると早朝に依頼、夜はギリギリまで俺の守護騎士として共にいるのがスアンの日課になる。ちゃんと寝れているのか?とは思うがスアンなら多少寝なくとも大丈夫な気がするのは俺だけだろうか。
そう思考している内に、婚約者としてどのような格好で来るのか、ちらりと立って座ろうとしないいつものスアンにだんだん不安になる俺は、それを振り切るように仕事に没頭した。
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