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2章婚約者8歳、王子11歳
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「は?」
思わず出た言葉は、婚約者が騎士に入団し、一年後のこと。婚約者は僅か一年で騎士の副団長となり、今日から俺の守護騎士になることが父の決定で決まったと知らされた。
この一年よくわからない婚約者と会うことがなく平和だったというのに、それは終わりを告げる言葉でしかない。
「まだ団長には及びませんが、この剣にかけて殿下をお守りいたします」
「レオルト、これは夢か」
「いえ、現実ですね」
どこの国に婚約者を守護騎士にするものがいるのか。しかも年下の子供を。まだ成人していない俺も未だ子供ではあるが、おかしな話であることくらいわかる。
何より子供を騎士の副団長にするなという話だ。国の威厳にも関わることじゃないのかとため息さえ出る。相変わらず包帯で素顔は見えないので本人がこの件に関してどう思っているかはわからない。
「益々女から遠ざかっていくな」
「お褒めいただきありがとうございます」
褒めたつもりはないと反論するのも面倒だ。
「フィセード殿下……」
そうしてため息を吐く俺に対してレオルトがどういった調教をしたのかと視線を投げてくる。だが、俺は一切調教なんてしていない。最後に会ったのは騎士入団試験合格の日で、今でこそまだ四回目の逢瀬。調教なんてできるはずもない。
自主的にこれが女を捨てに行っているだけの話。実際幼さありつつも、少年にしか見えないからか女に対する抵抗感がない。だからこそ父の目論み通り婚約者でもいいような気がするが、果たして本当にいいのだろうか。
包帯女を未来の王妃にしても。
これはこれで別問題が発生しつつある。しかもこれと子を作ることを考えると………女とどっちがマシかも要案件だ。ちなみに一年前考えていた婚約者との剣試合は騎士入団試験から半年、婚約者の噂を聞いてから諦めた。それでも鍛え続けてはいるが。
『包帯で顔がわからない少年が副団長でようやく負けた』
半年前の噂。騎士の団長、副団長になれば、指揮のできるリーダーシップ以上に着いていきたいと感じさせる強さも必要だ。だからこそ、団長も副団長も騎士全員を一人で斬り倒せるくらいには強いと聞いている。
とはいえ、二人に従う騎士たちが弱いわけではない。入団試験に合格した上で鍛練を積み重ねるのだから、個人個人が普通に強い。それを最年少の婚約者が副団長でようやく敗けを認める、つまりは半年で副団長の次に強いものとされたわけだ。
噂とはいえ、何の事実もなしに噂は広がらない。そして今、実際副団長になったところを見ると半年前の噂は本当だったのだろう。
異例のことだと城中がうるさい。守護騎士の報告が来るまで何故騒がしいのかがわからなかったが、聞いてすぐわかった。それは騒がしくもなるだろう。ちなみにこれが俺の婚約者と気づいた者はいない。
騎士入団試験辺りから婚約者がいるとは父共々言ってはいるが、隠された婚約者やら、女嫌い故にそういうことにしているなどの憶測ばかりが飛び交っている状況だ。
隠すも何も婚約者本人は堂々と城内を歩いているというのに。本人もその噂に便乗しているからこそ、この副団長が婚約者とは思わないんだろう。まあ、少年にしか見えないしな。下手に宣言すれば俺の趣味が間違った解釈で伝わりそうだ。それは勘弁願いたい。
「殿下、こちらに向かってくる女性の気配が」
「女性の気配だと?」
まさかと思えばコンコンとノックの音。思わずレオルトと俺の目が合う。
「フィセード殿下いらっしゃいますか」
明らかな女性の声。この婚約者には度々驚かされる。しかし、子供なだけに最低限の仕事の手伝いとはいえ、執務室に女が来るのを嫌がる俺をこの城の者は知っているはず。だからこそ婚約者の言葉には二重の意味で驚いた。
「ここは女人禁制だ」
すでに入室済みの婚約者はもう既に女として見ないことにしている。あれは未知の生命体だ。言わないが。
「も、申し訳ありません!ですが、殿下の婚約者候補から外れたことに納得がいかないのです!本当に婚約者がいらっしゃるのですか?」
「何を今更。もう1年も前に父から宣言もあったはずだ」
キーキーとうるさい女だと顔をしかめつつも、ドア越しでの会話なだけまだマシかと仕方なしに答える。
「ですが、一向に姿が見えないではありませんか!」
その言葉に、ちらりと婚約者を見るが何を考えているかはわからない。一目見ようと理由をつけて元婚約者候補は飽きもせず度々理由をつけては親にひっついて城内にいることは知っていた。城内に女がいると思うとそれだけで吐き気がする。
それでは飽きたらず禁止区域でもある俺の執務室まで押し掛けるとは身の程知らずにもほどがある。これだから無関係者は役職のある親の子だろうと連れることのないようにした方がいいと言っているのに。
親の後を継ぐ勉強のためならばいざ知らず、令嬢でそういった目的の者は少数だろう。
婚約者は既に城内を住み処にしていると父が言ったせいだ。城内とはいえ、騎士団の宿舎で寝泊まりしているとは誰も思わないだろう。
それに会わないじゃなく、気づいてないだけだろうに。女とは本当にうるさい生き物だと思っていた時だった。
思わず出た言葉は、婚約者が騎士に入団し、一年後のこと。婚約者は僅か一年で騎士の副団長となり、今日から俺の守護騎士になることが父の決定で決まったと知らされた。
この一年よくわからない婚約者と会うことがなく平和だったというのに、それは終わりを告げる言葉でしかない。
「まだ団長には及びませんが、この剣にかけて殿下をお守りいたします」
「レオルト、これは夢か」
「いえ、現実ですね」
どこの国に婚約者を守護騎士にするものがいるのか。しかも年下の子供を。まだ成人していない俺も未だ子供ではあるが、おかしな話であることくらいわかる。
何より子供を騎士の副団長にするなという話だ。国の威厳にも関わることじゃないのかとため息さえ出る。相変わらず包帯で素顔は見えないので本人がこの件に関してどう思っているかはわからない。
「益々女から遠ざかっていくな」
「お褒めいただきありがとうございます」
褒めたつもりはないと反論するのも面倒だ。
「フィセード殿下……」
そうしてため息を吐く俺に対してレオルトがどういった調教をしたのかと視線を投げてくる。だが、俺は一切調教なんてしていない。最後に会ったのは騎士入団試験合格の日で、今でこそまだ四回目の逢瀬。調教なんてできるはずもない。
自主的にこれが女を捨てに行っているだけの話。実際幼さありつつも、少年にしか見えないからか女に対する抵抗感がない。だからこそ父の目論み通り婚約者でもいいような気がするが、果たして本当にいいのだろうか。
包帯女を未来の王妃にしても。
これはこれで別問題が発生しつつある。しかもこれと子を作ることを考えると………女とどっちがマシかも要案件だ。ちなみに一年前考えていた婚約者との剣試合は騎士入団試験から半年、婚約者の噂を聞いてから諦めた。それでも鍛え続けてはいるが。
『包帯で顔がわからない少年が副団長でようやく負けた』
半年前の噂。騎士の団長、副団長になれば、指揮のできるリーダーシップ以上に着いていきたいと感じさせる強さも必要だ。だからこそ、団長も副団長も騎士全員を一人で斬り倒せるくらいには強いと聞いている。
とはいえ、二人に従う騎士たちが弱いわけではない。入団試験に合格した上で鍛練を積み重ねるのだから、個人個人が普通に強い。それを最年少の婚約者が副団長でようやく敗けを認める、つまりは半年で副団長の次に強いものとされたわけだ。
噂とはいえ、何の事実もなしに噂は広がらない。そして今、実際副団長になったところを見ると半年前の噂は本当だったのだろう。
異例のことだと城中がうるさい。守護騎士の報告が来るまで何故騒がしいのかがわからなかったが、聞いてすぐわかった。それは騒がしくもなるだろう。ちなみにこれが俺の婚約者と気づいた者はいない。
騎士入団試験辺りから婚約者がいるとは父共々言ってはいるが、隠された婚約者やら、女嫌い故にそういうことにしているなどの憶測ばかりが飛び交っている状況だ。
隠すも何も婚約者本人は堂々と城内を歩いているというのに。本人もその噂に便乗しているからこそ、この副団長が婚約者とは思わないんだろう。まあ、少年にしか見えないしな。下手に宣言すれば俺の趣味が間違った解釈で伝わりそうだ。それは勘弁願いたい。
「殿下、こちらに向かってくる女性の気配が」
「女性の気配だと?」
まさかと思えばコンコンとノックの音。思わずレオルトと俺の目が合う。
「フィセード殿下いらっしゃいますか」
明らかな女性の声。この婚約者には度々驚かされる。しかし、子供なだけに最低限の仕事の手伝いとはいえ、執務室に女が来るのを嫌がる俺をこの城の者は知っているはず。だからこそ婚約者の言葉には二重の意味で驚いた。
「ここは女人禁制だ」
すでに入室済みの婚約者はもう既に女として見ないことにしている。あれは未知の生命体だ。言わないが。
「も、申し訳ありません!ですが、殿下の婚約者候補から外れたことに納得がいかないのです!本当に婚約者がいらっしゃるのですか?」
「何を今更。もう1年も前に父から宣言もあったはずだ」
キーキーとうるさい女だと顔をしかめつつも、ドア越しでの会話なだけまだマシかと仕方なしに答える。
「ですが、一向に姿が見えないではありませんか!」
その言葉に、ちらりと婚約者を見るが何を考えているかはわからない。一目見ようと理由をつけて元婚約者候補は飽きもせず度々理由をつけては親にひっついて城内にいることは知っていた。城内に女がいると思うとそれだけで吐き気がする。
それでは飽きたらず禁止区域でもある俺の執務室まで押し掛けるとは身の程知らずにもほどがある。これだから無関係者は役職のある親の子だろうと連れることのないようにした方がいいと言っているのに。
親の後を継ぐ勉強のためならばいざ知らず、令嬢でそういった目的の者は少数だろう。
婚約者は既に城内を住み処にしていると父が言ったせいだ。城内とはいえ、騎士団の宿舎で寝泊まりしているとは誰も思わないだろう。
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