上 下
49 / 70

49

しおりを挟む
「まあシャロンとも会って話したと聞いたし、大体予想はできてるかもしれないけど……シャロンの結婚相手をバーン伯爵にしてほしいって言われたんだよね。公爵という地位が必要なら公爵になるために兄から爵位を奪うことも考えていると父上の前で言い切るんだからすごい覚悟だよ」

「そんなことまで……?でもバーン伯爵は器官が弱いんじゃ……」

どこかでもしかしてと思っていたことが現実になったと知り、複雑な気持ちがより一層深まる。初恋の人と両想いかもしれないというのに優柔不断な自分に嫌気が差す。しかし、それ以上の自体に驚きを隠せない。首都に長く滞在が難しいと自ら言っていたバーン伯爵の、僕との結婚に必要なら公爵になるという覚悟を聞いて。

僕は二人の間で揺れているというのに、覚悟を持つバーン伯爵に申し訳なさとどこか嬉しくなる気持ちが湧き上がる。

一度しか会ってないはずのバーン伯爵がなぜそこまで僕に拘るのかわからないけれど、初恋の人に想われる気持ちが嬉しくないわけがなかった。ずっと想い続けていた真実の人なのだから。

「呼吸器が開発されてからはうまく調整すれば問題はないみたい。ただ、健康面以上に、すでに爵位を授かってるバンテージ公爵から公爵という爵位を奪い取るのは容易ではないし、血筋ではあっても、バーン伯爵はすでにバンテージ公爵家から籍が外れているから、よっぽどのことがないと簡単ではないよ」

「バーン伯爵が籍を外れたのはいつ頃なの?今までバーン伯爵の存在を僕は知らなかったんだけど……元々公爵家の子息なら噂くらいにはなってたんじゃ……」

噂に疎い僕でも、公爵家の噂となればどこかで誰かが話すのを聞くくらいはあってもおかしくはない。公爵家に双子がいることを全く知らなかったこと自体が今思えばおかしいんだ。だからこそ僕は初恋の人を勘違いしたのだから。バーン伯爵が病弱以外にも何かあったんじゃないかなんて思ってしまう。

「うーん……今だからシャロンにだけ話すと、バンテージ公爵家にとって元バンテージ公爵家の次男リテール・バンテージは病弱な体以上に隠された存在だったんだよ」

「隠された存在?」

「リテールという存在はあまりに異質すぎたみたいで、当時のバンテージ公爵がいない存在として扱うようにしていたんだ……。かといって育児放棄してたってわけじゃなく、不自由をさせていたわけではないと聞いている。実際見たわけではないからわからないけど、調べてもわからないほどに次男に接触できる人は限られていたみたいだよ」

「バーン伯爵が異質……?」

初めて会った時も今回会った時も、そんなおかしい感じはなかった。なのに何が当時のバンテージ公爵にそうさせたのだろう?

しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

婚約者は俺にだけ冷たい

円みやび
BL
藍沢奏多は王子様と噂されるほどのイケメン。 そんなイケメンの婚約者である古川優一は日々の奏多の行動に傷つきながらも文句を言えずにいた。 それでも過去の思い出から奏多との別れを決意できない優一。 しかし、奏多とΩの絡みを見てしまい全てを終わらせることを決める。 ザマァ系を期待している方にはご期待に沿えないかもしれません。 前半は受け君がだいぶ不憫です。 他との絡みが少しだけあります。 あまりキツイ言葉でコメントするのはやめて欲しいです。 ただの素人の小説です。 ご容赦ください。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

義兄の執愛

真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。 教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。 悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

処理中です...