45 / 101
45〜公爵視点〜
しおりを挟む
幸せな時間になるはずだったデートは、まさかの身内の登場で真逆の状態になりそうだった。嫌な予感で頭がおかしくなりそうだ。シャロンは気づいているのだろうか?視線が私よりも弟に向いていることを。
何より私はさっきから考えたくもない思考が頭の中を過ぎって仕方ない。
シャロンの本当の恋の相手が私ではないかもしれないと。
密かに出会った時から疑問がなかったわけじゃない。関わりのなかったシャロンが、何故私に一途で純粋な好意を抱き続けてくれたのか。自分に記憶がないだけで、何かシャロンに対してしたことがあったのかもしれないなんて最近は都合よく考えていた部分はあったが、人違いなんてことは何一つ考えもしなかった。
もし私に好意を抱いたきっかけが弟の出来事だった場合、私へのシャロンの好意は消え失せる可能性もあるんじゃないか?
死にたいほどの出来事から助けられたなんて……それは好意を持ってもおかしくはない。寧ろその出来事に打ち勝つどころか私はシャロンを守れなかった立場だ。勝ち目はあまりにも薄い。過去に戻れるなら使用人たち以前にシャロンをいじめた者たちをこらしめてやるというのに。
しかしそれは不可能。そうなると今私ができるのは弟にシャロンを諦めさせること。
シャロンに惹かれるのはよくわかるが、どう足掻こうとシャロンと婚約者になれたのは私だ。二度と手放すなんてことはしたくない。いや、手放すつもりは全くない。
「兄様が人を幸せにできるの?必要最低限人との関わりを絶ってきた兄様が」
「それは否定しないが、シャロンを幸せにしたい気持ちは……いや幸せにするつもりで今隣にいる」
公爵の立場というのは人間の嫌なところばかり見えて嫌って遠ざけてきたのは事実だ。だから弟が言いたいことは理解できる。それでもシャロンを幸せにしたいこの気持ちに嘘はない。そして、これは我儘でもあるが幸せにするのは私でありたい。いや、そうさせるつもりだ。
「……さすがシャロンさん……兄様をここまで惚れさせちゃうなんてね。でも兄様以上に僕はずっと想いを抱いていたから諦める気はないよ。そのために身体を強くあろうと今まで頑張って来たんだから。シャロンさんをしっかり守れる男になるために」
「バーン伯爵……僕ずっと勘違い、してたのに」
やめてくれ。頼むから。
「もしかして兄様と俺人違いしてたってこと?大丈夫!あの時は俺も家抜け出して兄様のふりして学園来てたし、シャロンさんも頭朦朧とした感じだっただろうからそうなりそうな気はしてたんだ。間違えて兄様に話しかけたりでもして傷つくこと言われたら申し訳ないなとは思ってたんだけど」
「う……実は話掛けられなくて頑張って物陰から見るくらいしか……」
二人で楽しそうに話さないでくれ。シャロン……私の方を……私だけを……
「兄様幼い頃から俺と同じ顔なのに近寄れない雰囲気醸し出してたもんね」
「き、緊張して話せなかったというか……」
「素直に怖かったでいいんだよ?シャロンさんは優しいなあ」
「そんなことは……」
私だけを見てくれ……っ私の悪口でもなんでも私について好きに言ってくれていい、だから……だから……
「悪い、が。時間があまりないんだ。今日の話はこれくらいにしてくれ」
「……そっか。うん、まあ急に来たし、シャロンさんも戸惑うよね。目的はシャロンさんだけど、寄るところもあるし今回は兄様に譲るよ。じゃあね、兄様、シャロンさん」
「あ、はい!また……」
「ああ」
結局我慢できず邪魔をしてしまった。これ以上シャロンが弟に目を向けて話すのを見ていたら気が狂いそうだったから。
「あの、公爵様」
「悪い、邪魔をしたな」
また公爵様と呼び名が戻っていることが心の距離を遠ざけられているようでより不安になる。どうしたら私はシャロンを手放さずにいられるのだろうか?
考えたくもないが、もしシャロンが弟を選んだ時はきっと私はシャロンを……
何より私はさっきから考えたくもない思考が頭の中を過ぎって仕方ない。
シャロンの本当の恋の相手が私ではないかもしれないと。
密かに出会った時から疑問がなかったわけじゃない。関わりのなかったシャロンが、何故私に一途で純粋な好意を抱き続けてくれたのか。自分に記憶がないだけで、何かシャロンに対してしたことがあったのかもしれないなんて最近は都合よく考えていた部分はあったが、人違いなんてことは何一つ考えもしなかった。
もし私に好意を抱いたきっかけが弟の出来事だった場合、私へのシャロンの好意は消え失せる可能性もあるんじゃないか?
死にたいほどの出来事から助けられたなんて……それは好意を持ってもおかしくはない。寧ろその出来事に打ち勝つどころか私はシャロンを守れなかった立場だ。勝ち目はあまりにも薄い。過去に戻れるなら使用人たち以前にシャロンをいじめた者たちをこらしめてやるというのに。
しかしそれは不可能。そうなると今私ができるのは弟にシャロンを諦めさせること。
シャロンに惹かれるのはよくわかるが、どう足掻こうとシャロンと婚約者になれたのは私だ。二度と手放すなんてことはしたくない。いや、手放すつもりは全くない。
「兄様が人を幸せにできるの?必要最低限人との関わりを絶ってきた兄様が」
「それは否定しないが、シャロンを幸せにしたい気持ちは……いや幸せにするつもりで今隣にいる」
公爵の立場というのは人間の嫌なところばかり見えて嫌って遠ざけてきたのは事実だ。だから弟が言いたいことは理解できる。それでもシャロンを幸せにしたいこの気持ちに嘘はない。そして、これは我儘でもあるが幸せにするのは私でありたい。いや、そうさせるつもりだ。
「……さすがシャロンさん……兄様をここまで惚れさせちゃうなんてね。でも兄様以上に僕はずっと想いを抱いていたから諦める気はないよ。そのために身体を強くあろうと今まで頑張って来たんだから。シャロンさんをしっかり守れる男になるために」
「バーン伯爵……僕ずっと勘違い、してたのに」
やめてくれ。頼むから。
「もしかして兄様と俺人違いしてたってこと?大丈夫!あの時は俺も家抜け出して兄様のふりして学園来てたし、シャロンさんも頭朦朧とした感じだっただろうからそうなりそうな気はしてたんだ。間違えて兄様に話しかけたりでもして傷つくこと言われたら申し訳ないなとは思ってたんだけど」
「う……実は話掛けられなくて頑張って物陰から見るくらいしか……」
二人で楽しそうに話さないでくれ。シャロン……私の方を……私だけを……
「兄様幼い頃から俺と同じ顔なのに近寄れない雰囲気醸し出してたもんね」
「き、緊張して話せなかったというか……」
「素直に怖かったでいいんだよ?シャロンさんは優しいなあ」
「そんなことは……」
私だけを見てくれ……っ私の悪口でもなんでも私について好きに言ってくれていい、だから……だから……
「悪い、が。時間があまりないんだ。今日の話はこれくらいにしてくれ」
「……そっか。うん、まあ急に来たし、シャロンさんも戸惑うよね。目的はシャロンさんだけど、寄るところもあるし今回は兄様に譲るよ。じゃあね、兄様、シャロンさん」
「あ、はい!また……」
「ああ」
結局我慢できず邪魔をしてしまった。これ以上シャロンが弟に目を向けて話すのを見ていたら気が狂いそうだったから。
「あの、公爵様」
「悪い、邪魔をしたな」
また公爵様と呼び名が戻っていることが心の距離を遠ざけられているようでより不安になる。どうしたら私はシャロンを手放さずにいられるのだろうか?
考えたくもないが、もしシャロンが弟を選んだ時はきっと私はシャロンを……
333
お気に入りに追加
2,326
あなたにおすすめの小説

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる