人間嫌いの公爵様との契約期間が終了したので離婚手続きをしたら夫の執着と溺愛がとんでもないことになりました

荷居人(にいと)

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こうして最終的には値段のわからない宝石で目についたもの全て公爵様が買ってしまった。選ぶ最中にどれで悩んでいるか尋ねられて言ってしまったが最後、悩むなら全部買おうと言う公爵様の行動は早かった。

「ここここ公爵様?さすがにこれは」

「公爵様に戻っているぞ?それと気にする必要はない、もし選べないようなら買い占める選択もあったからな。今からでも遅くは」

「十分!十分です!悩んでたものが一番目を惹かれたものばかりだったんで!」

「どれも似た色だったな?」

「そ、それは」

さすがに気づかれてもおかしくはなかったが、それでも動揺してしまう。僕が選んだのは青系統で公爵様の瞳の色に近いものばかり選んでいた自覚はあるから。

「正直宝石選びが楽しいと思ったのは初めてだ」

「公爵閣下の場合は、宝石選びではなく婚約者様の選ぶ姿を楽しんでおられるようでしたが?」

「確かにその通りだな」

少しその話に恥ずかしくなりながらも随分人嫌いと言われる公爵様に対して気やすい店員さんだなと思って店員さんを眺めると公爵様の手によって目を塞がれた。

「これは信用のできるものではあるが、信頼はできん。あまり他の男を見るな」

「え、それってどういう……」

信用できて信頼できないってどういうこと?と聞こうとしたとき僕らではない声が割り込んだ。

「兄様が人に自ら触れるとは珍しい」

それは公爵様の声と似ながらもどこか話し方が穏やかな人の声。その声と同時に公爵様の手が緩んだので手を外し振り返った先には……

「え?公爵様が、二人?」

公爵様と瓜二つながらにこにこと笑う人物。

「リテール何故ここに」

「最近気になったことがあって、帰ってきたら馴染みの宝石店に公爵家の馬車があったから兄様いるのかなって。リュークも久しぶり~」

「貴方はまた勝手に……奥へは案内なしに来るなとあれほど」

どうやら公爵様に似た人物は店員さんとも仲がいいみたい。ただ公爵様相手よりは砕けた感じだ。

「まあまあ宝石には触らないからさ、でも客人がもう一人いたとはごめんね?俺はリテール・バーン、これでもバーン伯爵家の当主なんだ。隣国から近い位置の田舎領地ではあるんだけど、のどかで気に入ってるんだよね~」

見た目こそ瓜二つではあるけど、公爵様とは違って随分ほんわかした人だ。

「ぼ、僕はシャロン……です」

正直男爵家と公爵家どっちの家名を名乗るべきか迷ってつい名前だけの名乗りになる。

「あれ?貴族じゃないの?」

「貴族だ。多分私を気遣ったのだろう。未来の公爵夫人と言えばわかるか?」

「あ、そっか、兄様結婚するんだったかってあれ結婚……したんじゃなかったっけ?また田舎のせいで情報遅れたかな?」

「訳はまた話す……」

バーン伯爵は随分喋るのが好きな割には情報には疎そうである。それにしてもさっきから気になってたけど……

「あの、公爵様とバーン伯爵様の関係は……?」

「また公爵……」

「見ての通り双子の兄弟だよ。性格は似てないんだけど。色々あって籍は違うんだけど血の繋がりはあるんだ」

呼び方に不機嫌そうな公爵様だったけどそれを押し除けるようにバーン伯爵が説明してくれた。事情まではさすがに聞かないけどやっぱり兄弟ではあったようだ。これだけ瓜二つだったら流石にね……。
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