人間嫌いの公爵様との契約期間が終了したので離婚手続きをしたら夫の執着と溺愛がとんでもないことになりました

荷居人(にいと)

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38〜第二王子視点〜

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突然だけど、突如人を殴りたくなることってあるだろうか?決して暴力をよしとしているわけじゃないことは予め言っておく。

とはいえ、何故そんな思考に至ったかの理由をまず聞いてほしい。事は数十分前。仕事関連で公爵が僕の書斎に来たことが発端だ。

王城での仕事と立場から、公爵が来ることは何も珍しいことじゃないんだけど、今日の公爵は明らかに普段と様子が違った。雰囲気どころか表情が。

ぼーっとしたり急に片方の同じ頬を触ってはにやにやしたり、お前誰だ?と言いたくなることを繰り返していて、それでいて仕事は完璧なのがより腹が立つわけだけど、ついには目の前ではるんるんと機嫌よく踊り出した。何かに浮かれているのは見るからにわかるけど、浮かれすぎて頭がおかしくなったみたいだ。

ぼくの仕事のせいで待たせているからその変な様子も見てみぬふりをして進めていたものの、仕事をしているぼくの目の前で踊り出すやつが普通いるか?とまだこの時は呆れた眼差しで済んだのだけど……。

「第二王子殿下……仕事をしつつシャロンについて話しても?」

なんて急に言い出すから何だと思いつつシャロンのことならと許したのが間違いだったのだろう。

事は数十分前とは言ったがもう少しで一時間を超える長さでシャロンについての惚気を聞かされているぼく。親友のこととはいえ、人からの惚気がこんなに疲れるものなのだと初めて知った。

「急に惚気出してなんかいいことでもあったの?」

そして疲れ果てたにも関わらずこんな質問したぼくが大馬鹿者だったんだろう。

「それが……シャロンから仕事の頑張った褒美に頬へキスをいただきまして」

「は?」

それだけ?シャロンからしたら確かに勇気ある大胆な行動だけども。

「少し強引な約束だったかなと諦めていたんですが、本当にしてくれるとは思わず、何度も確認しては思い出してしまって……ポーカーフェイスを保つのがこんなに難しいとは初めて知りました」

「ポーカーフェイス……?」

あれでポーカーフェイス保ててたつもりだったの……?というか公爵ってこんな表情緩かった?いやそれ以前にちょろい感が半端ない。まあシャロンのパンツってだけで鼻血出して倒れるくらい割と初なとこあるみたいだし……。

まあそれはそれとしてとりあえず、いまだにまた思い出しているのがわかるにやにやな顔、そろそろ殴って目を覚まさせてもいいだろうか?

最近仕事仕事で疲れ切ったぼくには、頬のキス一つで浮かれ切った公爵が心底腹が立つので。今正さねばこれからシャロンに関すること全てにこの浮かれ具合を見せられかねないではないか。

ぼくはまだ片想いなのにね!?
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