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21〜公爵視点〜
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泣いたことなんていつぶりだろうか。それほどにシャロンが目を覚ましたことが、生きているのだと実感できたことが嬉しかった。きっとシャロンを困らせてしまっただろうが、あの時は私も胸がいっぱいいっぱいだったのだ。
第二王子殿下にも、シャロンの兄にも責められるのは当然と受け取りながらもシャロンの死が何よりも怖くて、時にその二人の声が聞こえなくなる時もあった。シャロンと私だけの世界になった感覚というのだろうか。
もしシャロンが死んでいたなら私は後悔と共に追いかけていた自信がある。この膨れ上がっていた想いを今までどう無視してきたのかもうわからない。この想いをもっと早く自覚していれば、シャロンをここまで追い詰めずに済んだというのに。そう何度も思うが過去に戻れることはない。
「あ……またやってしまったな」
最近思い詰めるとどうも無意識に罰でも求めているのか自虐行為に走ってしまう自分がいる。ナイフで自らの手首を切っては止まらぬ血を見てはっとするのだ。こんなことをしても何の意味もないのはわかっているというのに。しかし、罰以外にもこの痛みは自分の想いを少しでも抑えるために無意識にしてるのかもしれないとも思う。
最近どうも想いが強すぎて眠れない夜が幻覚でも見せるのか、ふとしたときシャロンを鳥籠に閉じ込め自分が愛でる幸せな夢を見るのだ。自分だけのシャロンは私だけに微笑んで、私たちだけの世界で完結する夢。
いつかそれを現実にしてしまいそうな自分が怖くて仕方ない。こんなことが実現できれば幸せだが、シャロンが夢のように微笑んでくれるわけがないのだから。
決してシャロンを泣かせたいわけじゃない。その気持ちが自分の綺麗とは言えない想いの部分を自虐行為で止めようとしてるのだろうと思う。シャロンを想いを自覚してからだんだんと自分が自分でなくなりそうだ。これを恐れて私はこの想いを気付かないようにしてきたのかもしれない……なんていうのは言い訳でしかないだろう。
「ああ……シャロンに会いたい」
しかし、言い訳しようがしまいがもう自分の想いは芽吹いてしまっているのだから手遅れである。毎日毎日シャロンに会いたい愛でたい私だけのものにしたいと気持ちは留まることを知らないのだ。
「会う時間は制限するけど、毎日来れるもんならどーぞ?」
「……第二王子殿下、勝手に入るのはどうかと」
一人の空間かと思っていれば目の前に気がつけば第二王子がいた。手首の血と手に持つナイフには気付いている様子だが、この場面は勝手に入ってくるこの方には何度も見られているので動揺はしない。
「ノックしたけどまた妄想でもしてたのか返事がなかったのは君の方だよ」
「……それは申し訳ありません」
それでも返事もなしにとは思うが、気付かなかった自分が悪いので素直に謝罪をする。
「それぼくはいいけど、他の人に見られるようなことないようにね」
「返事もなしに入るのは第二王子殿下だけなので問題ありません」
それとは自虐行為のことだろう。勝手に入って見たのは第二王子だけなのでそんな勝手な行動をされない限り見られることはない……はずだ。
「それならいいけど、今回は離婚が成立したことを伝えに来たんだ」
「離婚……そうですか」
ああ、ついにこの日が来てしまった。この黒い想いが溢れきらない内に再婚しなければきっと私は狂ってしまうだろう。
シャロンシャロンシャロンシャロンシャロン……身勝手な願いだがどうか私への想いを持ち続けてほしい。私が狂い切って君を不幸に導かないためにも。
第二王子殿下にも、シャロンの兄にも責められるのは当然と受け取りながらもシャロンの死が何よりも怖くて、時にその二人の声が聞こえなくなる時もあった。シャロンと私だけの世界になった感覚というのだろうか。
もしシャロンが死んでいたなら私は後悔と共に追いかけていた自信がある。この膨れ上がっていた想いを今までどう無視してきたのかもうわからない。この想いをもっと早く自覚していれば、シャロンをここまで追い詰めずに済んだというのに。そう何度も思うが過去に戻れることはない。
「あ……またやってしまったな」
最近思い詰めるとどうも無意識に罰でも求めているのか自虐行為に走ってしまう自分がいる。ナイフで自らの手首を切っては止まらぬ血を見てはっとするのだ。こんなことをしても何の意味もないのはわかっているというのに。しかし、罰以外にもこの痛みは自分の想いを少しでも抑えるために無意識にしてるのかもしれないとも思う。
最近どうも想いが強すぎて眠れない夜が幻覚でも見せるのか、ふとしたときシャロンを鳥籠に閉じ込め自分が愛でる幸せな夢を見るのだ。自分だけのシャロンは私だけに微笑んで、私たちだけの世界で完結する夢。
いつかそれを現実にしてしまいそうな自分が怖くて仕方ない。こんなことが実現できれば幸せだが、シャロンが夢のように微笑んでくれるわけがないのだから。
決してシャロンを泣かせたいわけじゃない。その気持ちが自分の綺麗とは言えない想いの部分を自虐行為で止めようとしてるのだろうと思う。シャロンを想いを自覚してからだんだんと自分が自分でなくなりそうだ。これを恐れて私はこの想いを気付かないようにしてきたのかもしれない……なんていうのは言い訳でしかないだろう。
「ああ……シャロンに会いたい」
しかし、言い訳しようがしまいがもう自分の想いは芽吹いてしまっているのだから手遅れである。毎日毎日シャロンに会いたい愛でたい私だけのものにしたいと気持ちは留まることを知らないのだ。
「会う時間は制限するけど、毎日来れるもんならどーぞ?」
「……第二王子殿下、勝手に入るのはどうかと」
一人の空間かと思っていれば目の前に気がつけば第二王子がいた。手首の血と手に持つナイフには気付いている様子だが、この場面は勝手に入ってくるこの方には何度も見られているので動揺はしない。
「ノックしたけどまた妄想でもしてたのか返事がなかったのは君の方だよ」
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それでも返事もなしにとは思うが、気付かなかった自分が悪いので素直に謝罪をする。
「それぼくはいいけど、他の人に見られるようなことないようにね」
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それとは自虐行為のことだろう。勝手に入って見たのは第二王子だけなのでそんな勝手な行動をされない限り見られることはない……はずだ。
「それならいいけど、今回は離婚が成立したことを伝えに来たんだ」
「離婚……そうですか」
ああ、ついにこの日が来てしまった。この黒い想いが溢れきらない内に再婚しなければきっと私は狂ってしまうだろう。
シャロンシャロンシャロンシャロンシャロン……身勝手な願いだがどうか私への想いを持ち続けてほしい。私が狂い切って君を不幸に導かないためにも。
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