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「あ、あの心配かけてすみません」

とりあえず落ち着かない気持ちを抑えつつ、覚えてないとはいえ、心配かけたことを謝る。ここまで心配を人にかけといて本人が覚えてないのもどうなんだとは思うけど。

「謝ることはない。寧ろ謝るべきはここまで追い詰めた私の責任だ。シャロンが生きてくれていただけで私は……手を握っても?」

「え、は、はい」

急に聞かれて戸惑うものの、公爵様に泣いたばかりの潤んだ瞳で懇願するように見つめられては断れるはずもなく了承する。嫌なわけではないけど、やっぱり慣れないことをされるのは緊張してしまうから。

公爵様はほっとしたようになぜか恐る恐る僕に近寄っては膝をつき、優しく両手で包むように僕の手を握った。

「……生きていてくれてありがとう」

「公爵様……」

「しばらくはゆっくりして休んでくれ。必要なものがあれば用意する」

「あ、ぼくが用意するから公爵は気にしなくていいよ?」

「…………絶対私が用意するから遠慮なく言ってくれ」

互いに見つめ合うような形で公爵様の優しい眼差しにどぎまぎしていたところに、リードが茶化すように僕と公爵様の空間を遮ってくれたのでなんとか気持ちを持ち直す。少しばかり公爵様は無言で怒った様子だったけど。だからかな?改めて言う言葉は大分強調された言い方だった。

正直用意してほしいもの自体思いつかないんだよね。あったとしてもリード、公爵様どちらも僕の想像もつかない金額のもので用意されそうで怖い。

身分差があると金銭感覚にも大きな差があるのはわかってはいるんだけど……公爵家と王家は、他のどの貴族とも比べ物にならないだろう。男爵家はあくまで平民より豊かならいい方だから金銭感覚は貴族よりも平民寄りと言える。そう考えると男爵家は正直そこまで貴族感はないかもしれない。

金銭感覚以外にも礼儀作法からして勉強量も違えば、支える領地の広大さの違いと探せば幾つだって身分差による違いはあるんだけど。

「特に今必要なものはないので……」

まあ何が言いたいかと言うとこういうのは断っておくに限る。下手にほしいものを言ってくれるのを待たれでもしたら申し訳ないしね。

「……そうか。わかった。無理に頼む必要はない。今日は話せてよかった。あまり長居しても気を遣わせてしまうだろう。また明日来る」

「あ、ありがとうございます」

「お礼を言うのは私だ。ありがとう」

そう言って公爵様は部屋を出ていく。なんだか急すぎて話したかったこと全部吹き飛んでしまった。

「なんか止められなくてごめん」

「ううん……心配かけてたみたいだからすぐ会えてよかったかも。話したいこと飛んじゃったけど明日も来てくれるみたいだし」

「なんか嬉しそうだねえ、シャロン」

「僕を心配してくれる人がいるんだもん、嬉しいよ」

「親友を心配するのは当たり前でしょー!」

「あはは……うん、リードもありがと」

全く~と怒ったふりをするリードに笑いながらお礼を言う。そう言えば最近全然笑えてなかった気がするなあ。
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