17 / 67
17
しおりを挟む
さて、それよりもまずは二人が来るまでにリードから聞いたことを整理しないと。全然覚えてないんだけど、僕は高熱で意識不明の重体だったん……だよね?その間ずっと王城にお世話になったんだろうけど、そういえばあの謁見の日から何日くらい経ったのか聞くのを忘れた。
その日分身体も洗えてないし臭いとかはないよね?多分気持ち悪い感じはないから、身体を拭いて着替えもしてくれていたんだろう。髪も何かしてくれていたのかそこまで不快感はない。
寝る前からあんな醜態を晒したのに迷惑かけてばかりだなとは思うけど、リードが言うには国王陛下と王太子殿下は謁見の日のことも怒ってないみたいだし、そこは安心していいだろう。お二人が優しい人たちで本当よかった。
で、兄が見舞いに来たってことは事情を聞いているだろうし、心配かけたこととお見舞いのお礼を伝えるだけでいいかな?両親が今回のことで王城に入れず兄に八つ当たりしてないかくらいは確認しよう。長男である兄にはずっと優しい態度だったけど、僕のことがあると思うと心配だ。
それと……うん、事情諸々抜きにして、久々にお兄様に会えるのは単純に嬉しい。僕にとって唯一同性を好きな僕を拒否しないで、知る前と変えない態度を貫いてくれた家族だから。
「そういえば結婚はまだしてないのかな?」
手紙を処分され続けたこの三年間、もしかしたら兄から結婚報告の手紙も混ざっていた可能性もある。だからこればかりは直接聞かないとわからない。もし結婚してたら全く祝いの言葉もない最低な弟である。事情を知った兄なら怒ることはないってわかってるけど、申し訳なさは残りそうだ。
だいたい兄に対して話すことはこんな感じかな?実際会ったら全然違うことを話しちゃうかもだけど。でも今回は公爵様がいる。一緒に来ることはなくても鉢合わせる場合もありそうだ。リードに一人ずつの面会をお願いすればよかったな。
でももし三人になったその時はもう流れに身を任すしかなさそうだ。まずは公爵様にも言わないといけないこととか最低限のことは頭の中だけでもまとめておく必要がある。
言うなれば色々考えて冷静になる時間が僕にはいるんだ。謁見でのことに、覚えてない期間の寝ていると思っていた間にも色々ありすぎて結構混乱してる。寝てるんじゃなく意識不明までいってたなんて思いもしなかったし……知らず知らずの内に三途の川を渡りかけていたんだろうか、僕は。
「ちょ……ま」
「しゃ……ん!」
なんて考えていると急に扉の向こう側が騒がしくなった。何を言っているのかはわからないが、王城で声を上げて叫ぶなんてよっぽどのことでも起きたんだろうか?
でも気のせいだろうか?だんだん聞き覚えのある声が僕の部屋に近づいているような……
「シャロン!」
「公爵様!?」
「はぁ……はぁ……はや、すぎ……話……はぁ……聞け、よ……クソ、公爵……っ」
と思ったら扉をバンっと豪快に開けた公爵様が僕の名前を叫びながら現れた。その後ろには走ったのか疲れ切ったリードが公爵様に暴言を吐いている。リードは運動が苦手だから無理をすると本性が出がちだ。
「シャロン……本当に、起きて……」
「こ、公爵様?」
なんてリードに向けた視線から何やら呟くように言う公爵様に、急なことでドキドキとする胸を無視して視線を向け直すと公爵様が立ち尽くすようにそれ以上動かないままに涙を流し始めてぎょっとする。
「よかった……本当に、よかった……!」
「ふぅ……全く……。見舞いの時間を変更するようにした理由を言った途端、仕事を放り投げてシャロンの名前叫びながら走り出すんだから参ったよ」
リードの言い方的にちょうど公爵様は王城のどこかで仕事をしていたようだ。だからリードに伝言を頼んでからそこまで経ってないのに、公爵様がすぐに現れることが可能だったんだろう。まだ心の準備が何一つできてない状態な上、公爵様が泣いているし、どうしたらいいのか全然わからない。
救いはリードも同席してくれていることかな。
にしても、この様子じゃ公爵様にも随分心配をかけたようだ。そう感じるからか急なことでドキドキする以上に嬉しさでむずむずする自分がいた。だって泣くほど心配してくれていたってことは、それだけ僕を想ってくれていたんだなと実感できるから。
その日分身体も洗えてないし臭いとかはないよね?多分気持ち悪い感じはないから、身体を拭いて着替えもしてくれていたんだろう。髪も何かしてくれていたのかそこまで不快感はない。
寝る前からあんな醜態を晒したのに迷惑かけてばかりだなとは思うけど、リードが言うには国王陛下と王太子殿下は謁見の日のことも怒ってないみたいだし、そこは安心していいだろう。お二人が優しい人たちで本当よかった。
で、兄が見舞いに来たってことは事情を聞いているだろうし、心配かけたこととお見舞いのお礼を伝えるだけでいいかな?両親が今回のことで王城に入れず兄に八つ当たりしてないかくらいは確認しよう。長男である兄にはずっと優しい態度だったけど、僕のことがあると思うと心配だ。
それと……うん、事情諸々抜きにして、久々にお兄様に会えるのは単純に嬉しい。僕にとって唯一同性を好きな僕を拒否しないで、知る前と変えない態度を貫いてくれた家族だから。
「そういえば結婚はまだしてないのかな?」
手紙を処分され続けたこの三年間、もしかしたら兄から結婚報告の手紙も混ざっていた可能性もある。だからこればかりは直接聞かないとわからない。もし結婚してたら全く祝いの言葉もない最低な弟である。事情を知った兄なら怒ることはないってわかってるけど、申し訳なさは残りそうだ。
だいたい兄に対して話すことはこんな感じかな?実際会ったら全然違うことを話しちゃうかもだけど。でも今回は公爵様がいる。一緒に来ることはなくても鉢合わせる場合もありそうだ。リードに一人ずつの面会をお願いすればよかったな。
でももし三人になったその時はもう流れに身を任すしかなさそうだ。まずは公爵様にも言わないといけないこととか最低限のことは頭の中だけでもまとめておく必要がある。
言うなれば色々考えて冷静になる時間が僕にはいるんだ。謁見でのことに、覚えてない期間の寝ていると思っていた間にも色々ありすぎて結構混乱してる。寝てるんじゃなく意識不明までいってたなんて思いもしなかったし……知らず知らずの内に三途の川を渡りかけていたんだろうか、僕は。
「ちょ……ま」
「しゃ……ん!」
なんて考えていると急に扉の向こう側が騒がしくなった。何を言っているのかはわからないが、王城で声を上げて叫ぶなんてよっぽどのことでも起きたんだろうか?
でも気のせいだろうか?だんだん聞き覚えのある声が僕の部屋に近づいているような……
「シャロン!」
「公爵様!?」
「はぁ……はぁ……はや、すぎ……話……はぁ……聞け、よ……クソ、公爵……っ」
と思ったら扉をバンっと豪快に開けた公爵様が僕の名前を叫びながら現れた。その後ろには走ったのか疲れ切ったリードが公爵様に暴言を吐いている。リードは運動が苦手だから無理をすると本性が出がちだ。
「シャロン……本当に、起きて……」
「こ、公爵様?」
なんてリードに向けた視線から何やら呟くように言う公爵様に、急なことでドキドキとする胸を無視して視線を向け直すと公爵様が立ち尽くすようにそれ以上動かないままに涙を流し始めてぎょっとする。
「よかった……本当に、よかった……!」
「ふぅ……全く……。見舞いの時間を変更するようにした理由を言った途端、仕事を放り投げてシャロンの名前叫びながら走り出すんだから参ったよ」
リードの言い方的にちょうど公爵様は王城のどこかで仕事をしていたようだ。だからリードに伝言を頼んでからそこまで経ってないのに、公爵様がすぐに現れることが可能だったんだろう。まだ心の準備が何一つできてない状態な上、公爵様が泣いているし、どうしたらいいのか全然わからない。
救いはリードも同席してくれていることかな。
にしても、この様子じゃ公爵様にも随分心配をかけたようだ。そう感じるからか急なことでドキドキする以上に嬉しさでむずむずする自分がいた。だって泣くほど心配してくれていたってことは、それだけ僕を想ってくれていたんだなと実感できるから。
238
お気に入りに追加
2,159
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
婚約者は俺にだけ冷たい
円みやび
BL
藍沢奏多は王子様と噂されるほどのイケメン。
そんなイケメンの婚約者である古川優一は日々の奏多の行動に傷つきながらも文句を言えずにいた。
それでも過去の思い出から奏多との別れを決意できない優一。
しかし、奏多とΩの絡みを見てしまい全てを終わらせることを決める。
ザマァ系を期待している方にはご期待に沿えないかもしれません。
前半は受け君がだいぶ不憫です。
他との絡みが少しだけあります。
あまりキツイ言葉でコメントするのはやめて欲しいです。
ただの素人の小説です。
ご容赦ください。
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる