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15〜第二王子視点〜
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シャロンが目を覚ました。部屋に入った時、安心し過ぎて泣きそうになったけど何とか耐えていつも通りを装ったことをシャロンが気づかなくてホッとしたものだ。王族として時に感情を殺す訓練がこんな時に役に立つとは思わなかったけど。
本人は忘れているが、本当に眠ってから急な高熱に慌てて医師を呼んだのはもう数週間も前になる。全然目は覚まさないのに苦しそうで感染症の疑いとかないから同席は許されたけど、同席しかできず見守るだけの自分があまりにも情けなかった。
ストレスによるものと聞かされ、真っ青な公爵に対して思わず怒鳴ったりもしたこと本人は知るはずもないだろう。
『シャロンが死んででもしたらぼくはバンデージ公爵を一生許さないよ!』
ストレスの原因は公爵以前に男爵家のこともあっただろう。だけど、この三年間は確実に公爵家であったことが大きい。よかれと思って背中を押したぼくも無実ではないけど、それでも誰かにあんなにも当たりたくなったのは初めてのことだった。
『悪かった……シャロン、頼むから目を覚ましてくれ』
なのに公爵はそれに対して言い返すこともなく、ただただシャロンに謝罪と祈りを繰り返していたのだ。それはそれは悲痛な様子で。背中を押して終わりなんて……あまりにも考えが浅はかすぎた。
シャロンならという信用と、人嫌いでも仕事面では真面目な公爵。だからこそ悪くはならないと勝手に思ったばかりに、周りが王命での結婚という事情関係なく馬鹿な行動に出るなんて思ってもみなかった。
男爵家から解放してあげたいと思っていたのに。シャロンはきっと無意識にぼくが思う以上に追い詰められていたのだと知ったのは、シャロンがストレスや栄養失調などで重体になってからで、何が親友だと自分をも責めた。
食事すら公爵がいないと食べれなかった上に、シャロンのことだからきっと公爵の前ではどこか遠慮しながら食べていたのだろう。ぼくが本当にすべきだったのは、公爵や罪人に責任を問うよりもシャロンの体調面を何より考えるべきだったのだ。
後悔はなくならないけど、シャロンが無事峠を超えて目を覚ましたことは、素直に喜びたいと思う。
今日何事もなく一日安静して何もなければ動いてもいいとはいったけど、当分シャロンには休養が必要だ。動くにもあくまで簡単な散歩くらいが限度だろう。気分転換が大事だとはいえ。
最悪車椅子の用意もしてあるからまだ体調面に自覚のないシャロンには少しずつ現状を理解してもらうしかない。本人は至って真面目に自分がそんな危ない状況だったことを理解できていないようだから。
無理はしてほしくないけど、シャロンが許すなら公爵もシャロンのお兄さんも見舞いを許可するつもりではある。けど、今人と会うことがシャロンのストレスにならないかがぼくは心配だ。
シャロンは人を気遣いしすぎるところがあるから……。せめて本人がいいと言っても面会時間は減らしておこうと思う。
本人は忘れているが、本当に眠ってから急な高熱に慌てて医師を呼んだのはもう数週間も前になる。全然目は覚まさないのに苦しそうで感染症の疑いとかないから同席は許されたけど、同席しかできず見守るだけの自分があまりにも情けなかった。
ストレスによるものと聞かされ、真っ青な公爵に対して思わず怒鳴ったりもしたこと本人は知るはずもないだろう。
『シャロンが死んででもしたらぼくはバンデージ公爵を一生許さないよ!』
ストレスの原因は公爵以前に男爵家のこともあっただろう。だけど、この三年間は確実に公爵家であったことが大きい。よかれと思って背中を押したぼくも無実ではないけど、それでも誰かにあんなにも当たりたくなったのは初めてのことだった。
『悪かった……シャロン、頼むから目を覚ましてくれ』
なのに公爵はそれに対して言い返すこともなく、ただただシャロンに謝罪と祈りを繰り返していたのだ。それはそれは悲痛な様子で。背中を押して終わりなんて……あまりにも考えが浅はかすぎた。
シャロンならという信用と、人嫌いでも仕事面では真面目な公爵。だからこそ悪くはならないと勝手に思ったばかりに、周りが王命での結婚という事情関係なく馬鹿な行動に出るなんて思ってもみなかった。
男爵家から解放してあげたいと思っていたのに。シャロンはきっと無意識にぼくが思う以上に追い詰められていたのだと知ったのは、シャロンがストレスや栄養失調などで重体になってからで、何が親友だと自分をも責めた。
食事すら公爵がいないと食べれなかった上に、シャロンのことだからきっと公爵の前ではどこか遠慮しながら食べていたのだろう。ぼくが本当にすべきだったのは、公爵や罪人に責任を問うよりもシャロンの体調面を何より考えるべきだったのだ。
後悔はなくならないけど、シャロンが無事峠を超えて目を覚ましたことは、素直に喜びたいと思う。
今日何事もなく一日安静して何もなければ動いてもいいとはいったけど、当分シャロンには休養が必要だ。動くにもあくまで簡単な散歩くらいが限度だろう。気分転換が大事だとはいえ。
最悪車椅子の用意もしてあるからまだ体調面に自覚のないシャロンには少しずつ現状を理解してもらうしかない。本人は至って真面目に自分がそんな危ない状況だったことを理解できていないようだから。
無理はしてほしくないけど、シャロンが許すなら公爵もシャロンのお兄さんも見舞いを許可するつもりではある。けど、今人と会うことがシャロンのストレスにならないかがぼくは心配だ。
シャロンは人を気遣いしすぎるところがあるから……。せめて本人がいいと言っても面会時間は減らしておこうと思う。
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