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「あっはっはーっ!ようやく来たね!シャロン以外の罪人どもおおお!」
「リード……頼むから席を返してほしいなあなんて……」
「はあ?陛下なんか言いましたあ?」
「あ、なんでもないです」
「「「…………」」」
王城に来た僕たちが謁見の場に案内されて最初に見たものは、王座に座りどこぞの悪役のように高笑いする第二王子のリードと、その王座の左床下付近で正座する国王陛下と、王座の右横に立ってにこにこ微笑んでいる王太子殿下の姿というとんでもない場面だった。
これには僕だけでなく、公爵様や連れてこられた使用人たちも頭を下げるのも忘れてぽかんとしてしまう。僕の親友は学園でも割と色々しでかす人だったけど、これはさすがにやりすぎではないだろうか。
何より僕以外を罪人扱いは言い過ぎだ。それじゃあ公爵様も含んでいることになってしまうし。いや、それより第二王子という身分は確かに偉いと思うけど、国王陛下と王太子を他所に王座に座るリードを何故誰も止めないのか状況がわからなさすぎる。
周りには信用のおける騎士たちだけなのか、数人いるものの誰もが目を背けていて、国王陛下に仕えるだろう騎士がそれで、この国大丈夫なの……?なんて心配になってしまう。それにこの状況でにこにこ微笑んでいる王太子殿下が不気味に見えるのは僕だけ?
「あ、シャロンせっかく来てくれたのに立たせたままでごめんね!椅子用意するからちょっと待ってね!」
「え」
ぽかんとしている間にとんでもない提案をされた。国王陛下が正座、王太子も立っているというのにこの状況で僕に座れと言うのか、リードは。しかも謁見の場で?
「私は立っていることに慣れているから私の椅子を使うといいよ」
「あ、いえ、僕も立ってますので!」
しかも王太子殿下の椅子に座れと……?王太子殿下も何故止めないんですか……!
「今回の主役はシャロンだから遠慮しなくて大丈夫だよ!」
「いやだから……」
「遠慮しなくて大丈夫だよ!」
「いや……」
「遠慮しなくても大丈夫だよ!」
遠慮とかそういう話じゃない!しかも主役とは?しかし、悲しいかな……圧が凄すぎて断るのは無理だと悟った僕。僕は何故か挨拶する暇もなく、王座の隣に用意された王太子殿下の椅子に座ることとなった。
なんで僕は今一緒に来たはずの公爵様を見下ろす形になってしまっているんだろう……?そして親友のリードが本当に何を考えているのかわからなさすぎる。一つわかるのはこういう訳のわからないことをする時ほどリードが怒っている証だということ。
もう成人はしてるのに学園時代と変わってない様子がリードらしいっちゃらしいけど、それを許している様子の王太子殿下と国王陛下も割とやばいと思う。国王陛下に関しては許すというより逆らえないみたいな感じではあるけど……この国の王様がそれでいいのだろうか。
こう……国王としての威厳とかあってもいいと思うんだけど、床に正座しちゃっているからなあ……。
「……挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。バンデージ公爵当主としてこの度は申し出の通り罪人を連れて参りました」
まだこの雰囲気に内心落ち着かない僕と違い、公爵様はなんとか気持ちを持ち直したようで、ようやく話が進みそうな雰囲気となる。異常な空間で誰よりも早く持ち直す様子はさすが公爵家を支えてきた当主様といった感じだ。
「うんうん、すぐ来たことは褒めてあげるよ。顔もあげていいよ、発言も許可する」
そんな公爵様相手にリードは何やらにっこりと微笑みながらすごく上から目線の褒め方をする。正直褒める気があるのかといった喧嘩を売るような言い方だ。同時に、本来なら国王陛下が許可するべきことをリードが許可をしたためか、公爵様は少し迷いをみせたものの言われた通りに顔をあげた。
「ありがとうございます。今回のことについては私としても不甲斐ないことであり、深く反省をしています」
「そっかそっか、反省は大事だねえ」
そんな公爵様を見つつも、リードは笑みを絶やすことなく、公爵様の言葉を受け止める気のない様子で返事を返す。口は笑ってはいるものの目が笑ってないのは公爵様も気づいているだろう。しかし、一度気持ちを持ち直した公爵様を見る限り顔色が変わる様子はない。
逆に公爵様の後ろに腕ごと縛られながら立ち尽くす使用人たちと家庭教師だった人の顔色はどんどん悪くなっていく。リードって顔が可愛いんだけど怒ると圧があって怖いから気持ちはわかる。それに向かい合う公爵様はさすがというべきだろうか。
僕と執事長の前では割とわかりやすく顔色を変えていたように思うけど、やっぱりあれは、僕の願望による幻覚だったのかもしれないと思うくらいには公爵様の真剣な表情は崩れる様子は見られない。
「……妻から第二王子殿下より離婚を薦める話を伺っております。謝罪はいくらでも致しますし、これからはこのようなことがないようにしますので、どうかチャンスを頂けないでしょうか」
「へえ、ぼくから言うつもりだったけど、手紙の内容シャロンが伝えたんだ」
「ご、ごめん……誤魔化しとか苦手で……。でも伝えたのは一部だけで……」
「んーん、シャロンを責めるつもりはないよ~!別に知られてもどうせ言うつもりだったからよかったしね!シャロンが嘘下手なのはよーく知ってるから」
圧が引かない感じから怒っている状態は変わらないけど、僕には学園のときのように優しいリードでなんとなくほっとする。三年経ってもリードはリードで変わってないんだなと。まあ、こう怒るとめちゃくちゃな部分は変わってほしかった気もするけれど。
あーでも、ある意味悪化という意味では変わっていると言えるかな……?こういうところは学生のうちだけと思っていたけど、国王陛下がこれじゃあ一生この部分は治らないかもしれない。
怒ると周りを巻き込みとんでもないことをしでかす性格は。
「リード……頼むから席を返してほしいなあなんて……」
「はあ?陛下なんか言いましたあ?」
「あ、なんでもないです」
「「「…………」」」
王城に来た僕たちが謁見の場に案内されて最初に見たものは、王座に座りどこぞの悪役のように高笑いする第二王子のリードと、その王座の左床下付近で正座する国王陛下と、王座の右横に立ってにこにこ微笑んでいる王太子殿下の姿というとんでもない場面だった。
これには僕だけでなく、公爵様や連れてこられた使用人たちも頭を下げるのも忘れてぽかんとしてしまう。僕の親友は学園でも割と色々しでかす人だったけど、これはさすがにやりすぎではないだろうか。
何より僕以外を罪人扱いは言い過ぎだ。それじゃあ公爵様も含んでいることになってしまうし。いや、それより第二王子という身分は確かに偉いと思うけど、国王陛下と王太子を他所に王座に座るリードを何故誰も止めないのか状況がわからなさすぎる。
周りには信用のおける騎士たちだけなのか、数人いるものの誰もが目を背けていて、国王陛下に仕えるだろう騎士がそれで、この国大丈夫なの……?なんて心配になってしまう。それにこの状況でにこにこ微笑んでいる王太子殿下が不気味に見えるのは僕だけ?
「あ、シャロンせっかく来てくれたのに立たせたままでごめんね!椅子用意するからちょっと待ってね!」
「え」
ぽかんとしている間にとんでもない提案をされた。国王陛下が正座、王太子も立っているというのにこの状況で僕に座れと言うのか、リードは。しかも謁見の場で?
「私は立っていることに慣れているから私の椅子を使うといいよ」
「あ、いえ、僕も立ってますので!」
しかも王太子殿下の椅子に座れと……?王太子殿下も何故止めないんですか……!
「今回の主役はシャロンだから遠慮しなくて大丈夫だよ!」
「いやだから……」
「遠慮しなくて大丈夫だよ!」
「いや……」
「遠慮しなくても大丈夫だよ!」
遠慮とかそういう話じゃない!しかも主役とは?しかし、悲しいかな……圧が凄すぎて断るのは無理だと悟った僕。僕は何故か挨拶する暇もなく、王座の隣に用意された王太子殿下の椅子に座ることとなった。
なんで僕は今一緒に来たはずの公爵様を見下ろす形になってしまっているんだろう……?そして親友のリードが本当に何を考えているのかわからなさすぎる。一つわかるのはこういう訳のわからないことをする時ほどリードが怒っている証だということ。
もう成人はしてるのに学園時代と変わってない様子がリードらしいっちゃらしいけど、それを許している様子の王太子殿下と国王陛下も割とやばいと思う。国王陛下に関しては許すというより逆らえないみたいな感じではあるけど……この国の王様がそれでいいのだろうか。
こう……国王としての威厳とかあってもいいと思うんだけど、床に正座しちゃっているからなあ……。
「……挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。バンデージ公爵当主としてこの度は申し出の通り罪人を連れて参りました」
まだこの雰囲気に内心落ち着かない僕と違い、公爵様はなんとか気持ちを持ち直したようで、ようやく話が進みそうな雰囲気となる。異常な空間で誰よりも早く持ち直す様子はさすが公爵家を支えてきた当主様といった感じだ。
「うんうん、すぐ来たことは褒めてあげるよ。顔もあげていいよ、発言も許可する」
そんな公爵様相手にリードは何やらにっこりと微笑みながらすごく上から目線の褒め方をする。正直褒める気があるのかといった喧嘩を売るような言い方だ。同時に、本来なら国王陛下が許可するべきことをリードが許可をしたためか、公爵様は少し迷いをみせたものの言われた通りに顔をあげた。
「ありがとうございます。今回のことについては私としても不甲斐ないことであり、深く反省をしています」
「そっかそっか、反省は大事だねえ」
そんな公爵様を見つつも、リードは笑みを絶やすことなく、公爵様の言葉を受け止める気のない様子で返事を返す。口は笑ってはいるものの目が笑ってないのは公爵様も気づいているだろう。しかし、一度気持ちを持ち直した公爵様を見る限り顔色が変わる様子はない。
逆に公爵様の後ろに腕ごと縛られながら立ち尽くす使用人たちと家庭教師だった人の顔色はどんどん悪くなっていく。リードって顔が可愛いんだけど怒ると圧があって怖いから気持ちはわかる。それに向かい合う公爵様はさすがというべきだろうか。
僕と執事長の前では割とわかりやすく顔色を変えていたように思うけど、やっぱりあれは、僕の願望による幻覚だったのかもしれないと思うくらいには公爵様の真剣な表情は崩れる様子は見られない。
「……妻から第二王子殿下より離婚を薦める話を伺っております。謝罪はいくらでも致しますし、これからはこのようなことがないようにしますので、どうかチャンスを頂けないでしょうか」
「へえ、ぼくから言うつもりだったけど、手紙の内容シャロンが伝えたんだ」
「ご、ごめん……誤魔化しとか苦手で……。でも伝えたのは一部だけで……」
「んーん、シャロンを責めるつもりはないよ~!別に知られてもどうせ言うつもりだったからよかったしね!シャロンが嘘下手なのはよーく知ってるから」
圧が引かない感じから怒っている状態は変わらないけど、僕には学園のときのように優しいリードでなんとなくほっとする。三年経ってもリードはリードで変わってないんだなと。まあ、こう怒るとめちゃくちゃな部分は変わってほしかった気もするけれど。
あーでも、ある意味悪化という意味では変わっていると言えるかな……?こういうところは学生のうちだけと思っていたけど、国王陛下がこれじゃあ一生この部分は治らないかもしれない。
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