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これは夢か?夢なのか?今まであったことを話した公爵様に離婚を延期してほしいとイケメンさ全開で頼まれ、断れず了承すれば、赤やら青やらなんとも言えない顔色で何故か感謝された翌日、朝1番に公爵様に土下座をされている僕。

あの公爵様が土下座なんて正直偽物かと疑いたくなったけど、慌てて上げてもらった顔は公爵様以外誰でもなかった。

「あの、公爵様は何も悪くないので謝ってもらうようなことは……」

そうなると今の現状がとんでもないことだと混乱する僕は仕方ないと思う。何を謝っているのかはともかく、謝罪の姿もイケメンとかズルすぎやしないだろうか?こんなのなんでも許してしまいそうで怖い。結局惚れた方が負けなのだ。しかも片想い歴はただでさえ長いので。

「いや、今まで辛い思いをさせた原因は私の態度が招いたことでもある。それに気づく機会は今思えばたくさんあっただろうに気づいてやることができなかった。あげくに契約まで忘れて私は……」

「いやいやいや!契約を忘れても僕がお願いしたことを破ったことはなかったですし、今まで黙っていたのは僕の判断ですし」

暴力以外は本当に慣れたことで期間が決まっていただけに、公爵様に謝ってもらいたいほど気にしてなかったのは事実。離婚さえすれば終わることだったわけだし。正直何故公爵様がここまで僕のことを気にするのかその方が慣れなくて困惑気味なくらいだ。

「今まで言えなかったのは私を信用できなかったからだろう。初めにメイド長に色々伝えるように言いながらメイド長から報告を受ける暇を与えられなかったのもよくなかった。執事長ツォンとの時間をとらせられなかったのもわざとではないが、家のことを疎かにしていたことは事実だ。正直公爵としての仕事さえして権威を保てれば家のことなどある程度はどうでもいいと思っていた。お金の管理など最低限のことはツォンに任せていたがそれだけだ。人への気配りなどしたことがないからなんて言い訳でしかない。本当にすまなかった」

本当に公爵様が謝ることなんてないのに……こんなに真面目に謝られては、益々公爵様に惹かれてこの恋を諦めることが難しくなる。それをわかった上で言っているならズルい人だと思う。でも結局許さない選択なんてないんだけど。

元々公爵様に対して怒ってもなければ謝ってほしいなんて思ってもなかったのだから。

「そこまで言うなら謝罪を受け取りますし、許しますので土下座はもうやめてください」

「ありがとう……なら、離婚はなしにしてくれるだろうか?君に嫌がらせをしてきたものは全員紹介状もなしの解雇、暴力をした家庭教師、使用人に関しては訴えの準備もできている。しばらくはメイド長に君の傍を任せ、君の命令を最優先に聞くようにも言ってある」

もしかして昨日のうちにしたんだろうか?でも使用人はかなりの数が関わっていた。そうなるとそれこそ屋敷の管理が疎かになりそうだけどいいんだろうか?僕のせいで公爵様に迷惑をかけてしまうのは本望ではないんだけど。1番屋敷内では仕事をしていただろうメイド長を僕の傍につかせるのも良くないような……?

「さすがに悪いです。離婚すれば僕のことは気にしなくていいでしょうし、そこまでしなくても……」

「離婚したくないからしたんだ。使用人を大量に解雇しようとそもそも家のことは昔からいる数人の使用人と執事長であるツォンがいれば事足りるんだ。公爵家の威厳などで周りがうるさいから雇っていたものたちがいなくなるだけだからな」

「そ、そうなんですね。でも離婚したくないのはなんで……」

迷惑にならないならいいけど、公爵様の離婚したくない理由に期待してしまう僕がいる。昨日も公爵様の離婚したくない様子に同じようなことを思ったし、期待してしまう気持ち故に正直に今までのことを話したのだ。

僕のためにここまでしてくれたなら……期待しても仕方ないよね?少しくらい夢を見たって……

「……妻を愛しているから以外に離婚したくない理由はないと思うが」

「え、あ……え?」

確かに期待はした。期待はしてたけど予想以上の答えに顔が熱くなる。気のせいか公爵様の頬も赤くなりつつもこちらをまっすぐ見てくるので動揺しすぎて目が泳いでしまう。

これ、本当に夢じゃないよね?

だって期待こそしたけど相手は公爵様みたいな容姿がいいわけでもなんでもない僕だ。信じられない気持ちがあっても仕方ないと思う。でも公爵様は冗談を言うような方じゃないのもわかっているから余計に現実味がないというか。

「夫として頼りない部分しか見せてきてないが、まだ幻滅されてないならチャンスがほしい。君を妻として幸せにするチャンスを」

「げ、幻滅なんてするはず……!」

「ならば一旦離婚はなしということでいいな?」

「え、あ、そうです、ね……?」

あれ?離婚は延長って話じゃ……?なんかすごく嵌められた気がするのは気のせいだろうか?

「ありがとう、シャロン。愛している」

「ふぇ」

なんて困惑してる間に急に抱きしめられ、名前呼びと愛を囁かれた僕は色々限界突破して、公爵様の腕の中で気絶したのだった。
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