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王族の第二王子が同性愛者だったことで色々あって同性婚が法律上許されるようになった年に、まず先駆けとして人嫌いで有名な若き公爵ジーン・バンデージと男爵家の次男である僕シャロン・トークが選ばれた。
身分差があったのは公爵家にあまり力をつけたくなかった王族が……というのは表の理由として、実は第二王子と同性愛者仲間として仲良くしていた僕。そんな僕の好きな人がバンデージ様というのを知っていた第二王子の計らいによるものだったりする。
まさか好きな人と夫夫になれるとは思ってなかった僕はそれを知った日中々眠れなかったわけだけど、現実はそう甘くなかった。わかってはいたんだけど、少しくらい浮かれてもいいと思うんだよね。政略結婚とはいえ、ずっと好きだった人と暮らせるんだから。
「結婚はしたが、正直私は相手が男でも女でも嫌いなのには変わりないという理由で選ばれたに過ぎない。王命として公爵家の妻という立場になれたからといって調子に乗られては困る。礼儀作法の違いなどもあるだろうに何故男爵家から……とは思うが、この際大人しくしていてくれればなんでもいい。初夜だが男を抱いたところで生産性はないからな、仕事に戻る。勝手な真似だけはしないように。要望があれば執事長かメイド長に言え。叶えるかは別だが」
これが簡素な結婚式の後、初夜で夫に言われた言葉である。あまり人と話すところを見たことがなかったため、思ったより口が動くんだなと見惚れてしまった僕は割とバカかもしれない。
いや、見惚れていたのも事実だけど、慣れているはずなのに同性愛について好きな人から否定されたのは割と傷つきもした。生産性がないとか同性愛についてまだまだ厳しい目があることはわかっていたはずなのにやっぱり僕はバカだなあって。
「迷惑はかけないようにします……」
簡素な結婚式でも下がらなかった浮かれた気持ちが今になって一気に下がって出た言葉はこれだけ。元々身分差もある分迷惑をかけないように努力するつもりではあったからするっと出た言葉である。
「そうしてくれ」
そうして初夜に1人残された僕はその日、泣かないように耐えながら夜を過ごした。
その翌日からさらなる仕打ちが待ってるとも知らずに。
その仕打ちとは使用人たちによる冷遇な態度である。簡素な結婚式に、放置された初夜ということでこの家の主人に大事にされてないのは明白。さらには元は男爵家の次男という低い身分だけでなく、男という立場がより偏見な目で見られがちというのが揃いに揃った結果、冷遇されるのは予想できたことだ。
何より公爵様の使用人は家を継がない貴族たちの集まりのようなもの。男女関係なく急に運良く身分をあげたように見える僕を妬む視線は嫌でもわかった。しかも公爵様は人嫌いで有名なもののモテる容姿だから尚更。なんでこんな平凡な男がと。
せめてかっこいい容姿とかに生まれていれば多少は違ったかもしれない。
とはいえ冷遇な扱いは残念ながら慣れている僕。男爵家でも同性愛者という時点で親からも疎遠にされてきた僕なのだから。だいたいのことは1人でもできることが唯一の救いか。まあ次期男爵家を継ぐ兄だけは味方をしてくれたので男爵家での暮らしはそこまで辛いものでもなかったのだけど。結婚が決まった時も兄だけは心配してくれたのだ。
けど公爵家に味方は1人もいない。それが結構辛い羽目となった。何せ公爵様がいないときは食事すらまともに用意されないのだから。
「いくら冷遇するにしても人間に必要な食事まで嫌がらせするのはやりすぎだよ……」
男爵家でも固いパンなど味や食べやすさはともかく、食事は三食とまではいかずとも二食は用意してくれたというのに。たまに美味しいものを兄が親の目を盗んでくれたりもあった。そのときはそのおいしい食事にかなり幸せを感じたものだ。それくらいに食事は大事だというのに。まあ、味方のいないここで幸せを感じるほどの食事までは望まぬとも、食べられないものや食事を用意しないのは勘弁してほしい。
自分で作ろうとするのも許されないのなら尚更。公爵様はほぼ家にいないので毎日お腹が鳴って仕方ない。執事長、メイド長は紹介もされてないので誰かわからず聞いたところで知らんぷり。これでは流石に餓死しかねないと思った僕は迷惑をかけないなど言ってられず、使用人たちの視線を無視して、食事が済むなり去ろうとする公爵様を捕まえることにした。
「公爵様お話があります!!」
「…………」
凄く面倒そうな顔をされたが、こちらも命がかかっているため必死だった僕はなんとか時間をとってもらい公爵様にある契約を持ちかけることとなった。これが後々公爵様と僕の関係を変えるきっかけになると思いもせずに。
身分差があったのは公爵家にあまり力をつけたくなかった王族が……というのは表の理由として、実は第二王子と同性愛者仲間として仲良くしていた僕。そんな僕の好きな人がバンデージ様というのを知っていた第二王子の計らいによるものだったりする。
まさか好きな人と夫夫になれるとは思ってなかった僕はそれを知った日中々眠れなかったわけだけど、現実はそう甘くなかった。わかってはいたんだけど、少しくらい浮かれてもいいと思うんだよね。政略結婚とはいえ、ずっと好きだった人と暮らせるんだから。
「結婚はしたが、正直私は相手が男でも女でも嫌いなのには変わりないという理由で選ばれたに過ぎない。王命として公爵家の妻という立場になれたからといって調子に乗られては困る。礼儀作法の違いなどもあるだろうに何故男爵家から……とは思うが、この際大人しくしていてくれればなんでもいい。初夜だが男を抱いたところで生産性はないからな、仕事に戻る。勝手な真似だけはしないように。要望があれば執事長かメイド長に言え。叶えるかは別だが」
これが簡素な結婚式の後、初夜で夫に言われた言葉である。あまり人と話すところを見たことがなかったため、思ったより口が動くんだなと見惚れてしまった僕は割とバカかもしれない。
いや、見惚れていたのも事実だけど、慣れているはずなのに同性愛について好きな人から否定されたのは割と傷つきもした。生産性がないとか同性愛についてまだまだ厳しい目があることはわかっていたはずなのにやっぱり僕はバカだなあって。
「迷惑はかけないようにします……」
簡素な結婚式でも下がらなかった浮かれた気持ちが今になって一気に下がって出た言葉はこれだけ。元々身分差もある分迷惑をかけないように努力するつもりではあったからするっと出た言葉である。
「そうしてくれ」
そうして初夜に1人残された僕はその日、泣かないように耐えながら夜を過ごした。
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その仕打ちとは使用人たちによる冷遇な態度である。簡素な結婚式に、放置された初夜ということでこの家の主人に大事にされてないのは明白。さらには元は男爵家の次男という低い身分だけでなく、男という立場がより偏見な目で見られがちというのが揃いに揃った結果、冷遇されるのは予想できたことだ。
何より公爵様の使用人は家を継がない貴族たちの集まりのようなもの。男女関係なく急に運良く身分をあげたように見える僕を妬む視線は嫌でもわかった。しかも公爵様は人嫌いで有名なもののモテる容姿だから尚更。なんでこんな平凡な男がと。
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とはいえ冷遇な扱いは残念ながら慣れている僕。男爵家でも同性愛者という時点で親からも疎遠にされてきた僕なのだから。だいたいのことは1人でもできることが唯一の救いか。まあ次期男爵家を継ぐ兄だけは味方をしてくれたので男爵家での暮らしはそこまで辛いものでもなかったのだけど。結婚が決まった時も兄だけは心配してくれたのだ。
けど公爵家に味方は1人もいない。それが結構辛い羽目となった。何せ公爵様がいないときは食事すらまともに用意されないのだから。
「いくら冷遇するにしても人間に必要な食事まで嫌がらせするのはやりすぎだよ……」
男爵家でも固いパンなど味や食べやすさはともかく、食事は三食とまではいかずとも二食は用意してくれたというのに。たまに美味しいものを兄が親の目を盗んでくれたりもあった。そのときはそのおいしい食事にかなり幸せを感じたものだ。それくらいに食事は大事だというのに。まあ、味方のいないここで幸せを感じるほどの食事までは望まぬとも、食べられないものや食事を用意しないのは勘弁してほしい。
自分で作ろうとするのも許されないのなら尚更。公爵様はほぼ家にいないので毎日お腹が鳴って仕方ない。執事長、メイド長は紹介もされてないので誰かわからず聞いたところで知らんぷり。これでは流石に餓死しかねないと思った僕は迷惑をかけないなど言ってられず、使用人たちの視線を無視して、食事が済むなり去ろうとする公爵様を捕まえることにした。
「公爵様お話があります!!」
「…………」
凄く面倒そうな顔をされたが、こちらも命がかかっているため必死だった僕はなんとか時間をとってもらい公爵様にある契約を持ちかけることとなった。これが後々公爵様と僕の関係を変えるきっかけになると思いもせずに。
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