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子猫の名前は~モナにゃん視点~
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結局旅は中断した。子猫を連れ歩くには体力がもつとは思えないし、何より身体も丈夫には見えず、治療を受けた方がいいのではと考えたからだ。
「にゃご」
「にぃ」
一応ついてくるかと問えばついてくる気満々だった子猫。聞くまでもなかったというやつだ。とりあえず目的場所までの道のりはそれなりにあったため、子猫の体調を見つつ、休み休みに戻ってきた城。猫に優しいこの城のやつらは見慣れない子猫がよちよち歩く姿にメロメロのようだ。
オスである俺にすらモナちゃんと可愛がるのだから、この子猫は小さい分愛されて当然だろう。
とはいえ、人間に慣れてない子猫は俺にべったりで人間に怯えている様子。もしかすると人間が見慣れないのか、危害を加えられた経験があるのかはわからないが、そのうちここが安全な場所だと理解してもらえたら過ごしやすくなることだろう。
まあいい人間ばかりではないから、そこも教える必要はあるが。その辺りはざらめ姉さんの方が教え方がうまいかもしれねぇ。
「に、に……」
「にゃごご」
どこいくの?と周囲に怯えながら聞いてくる子猫に、俺は答える。俺たちの言葉がわかる変な人間のとこだと。
時々気持ち悪くはあるし、鬱陶しいが、俺たちの言いたいことを誰よりも理解し、あれでも人間のボスらしいから子猫の事情を話せば世話をしてくれるだろうことは確実だ。
面倒ゆえに行きたくないが、こればかりは仕方ない。世話になるのだから。ざらめ姉さんも言っていた。利用できるもんは利用しろと。
というわけで仕事をする変人の元へついたわけだが。
「子猫ー!おお、おお!なんと可愛いことか!ただでさえかわいい猫!それが小さくなって………!しかし、弱っておるのか?モナにゃん!よくぞ連れて参った!」
「に、にぃ………っ」
「にゃごごご」
「いだたたたたたたたっ!」
俺たちが入った瞬間、仕事を投げ出して走り寄ってきては大歓迎を受けた。ありがたくはあるが、あまりの勢いに子猫が怯えたため怖がらせるなと顔を引っ掻いてやる。
「に……に……!」
守ってくれたと認識してかきらきらとした目を子猫が向けてくる。少々照れ臭くはあるが、まあ、悪い気分ではない。
「猫ひっかきより猫パンチが好みなんだが………ふぅ、とりあえず、名前を決めねばと思ったが見た瞬間思い付いた名がある!銀次郎と名付け銀にゃんと呼ぼう!」
血だらけながらも復活が早いなと思いつつも子猫につけられた名前に、反応せずにはいられなかった。銀次郎……それは俺にとって大事な名前だから。
「モナにゃんが初めて連れてきた猫だ。銀次郎という罪人との繋がりを感じたのではないか?」
「にゃご………?」
知っていたのかと驚く。罪人として裁かれた銀次郎と俺の関係を。関係というのかはわからないが………。
「ふ……っこの城にいる猫のことは毎日報告を受けてから寝ている!最近は数が増えて朝方になることが多いが………」
「にゃご」
「に……」
何、こいつ、気持ち悪い。俺と子猫……銀次郎の言葉が重なった。少しばかり見直した俺がバカだったな。
「とはいえ、モナにゃんの大切と思えた人を助けてやれずすまない。犯罪を好んでするものは自業自得だが、仕方ない犯罪というのも存在する。それはまだまだ私が力不足が故。民の安定した生活を広げることで治安をよくし、銀次郎のようなものたちが増えないようより精進していくつもりだ」
人間のボスとしての言葉………なのだろう。変人とはいえ、その眼差しは本気が伺えた。
「に……」
「にゃご」
だからだろうか。銀次郎と名付けられた子猫もこの変人に怯える様子がなくなった。
「そして最後には猫が安心して暮らせる国とする!いっそにゃんこの国改名も………私、天才では?ふむ、さっそく王妃に相談……」
しかし、おかしなやつはおかしなやつでしかなく、猫のために励んでくれるのはありがたいが、呆れた気分になるのは何故だろうなぁ?
「に……」
「にゃご」
銀次郎もあれ大丈夫?と不審者を見る目付きに変わった。あれは教育に悪いからと俺たちはぶつぶつ言う変人を無視してその場を後にするのだった。
とりあえず、子猫に銀次郎と名付けたことだけは褒めてもいいだろう。
そんな俺は次は絶対に死なせてやるものかと子猫の銀次郎を見て心に誓うのだった。
おわり
あとがき
2022年2月22日スーパーにゃんにゃんにゃんの日なので書かねばと思いました。久々だからキャラ崩れあるかもしれない。
「にゃご」
「にぃ」
一応ついてくるかと問えばついてくる気満々だった子猫。聞くまでもなかったというやつだ。とりあえず目的場所までの道のりはそれなりにあったため、子猫の体調を見つつ、休み休みに戻ってきた城。猫に優しいこの城のやつらは見慣れない子猫がよちよち歩く姿にメロメロのようだ。
オスである俺にすらモナちゃんと可愛がるのだから、この子猫は小さい分愛されて当然だろう。
とはいえ、人間に慣れてない子猫は俺にべったりで人間に怯えている様子。もしかすると人間が見慣れないのか、危害を加えられた経験があるのかはわからないが、そのうちここが安全な場所だと理解してもらえたら過ごしやすくなることだろう。
まあいい人間ばかりではないから、そこも教える必要はあるが。その辺りはざらめ姉さんの方が教え方がうまいかもしれねぇ。
「に、に……」
「にゃごご」
どこいくの?と周囲に怯えながら聞いてくる子猫に、俺は答える。俺たちの言葉がわかる変な人間のとこだと。
時々気持ち悪くはあるし、鬱陶しいが、俺たちの言いたいことを誰よりも理解し、あれでも人間のボスらしいから子猫の事情を話せば世話をしてくれるだろうことは確実だ。
面倒ゆえに行きたくないが、こればかりは仕方ない。世話になるのだから。ざらめ姉さんも言っていた。利用できるもんは利用しろと。
というわけで仕事をする変人の元へついたわけだが。
「子猫ー!おお、おお!なんと可愛いことか!ただでさえかわいい猫!それが小さくなって………!しかし、弱っておるのか?モナにゃん!よくぞ連れて参った!」
「に、にぃ………っ」
「にゃごごご」
「いだたたたたたたたっ!」
俺たちが入った瞬間、仕事を投げ出して走り寄ってきては大歓迎を受けた。ありがたくはあるが、あまりの勢いに子猫が怯えたため怖がらせるなと顔を引っ掻いてやる。
「に……に……!」
守ってくれたと認識してかきらきらとした目を子猫が向けてくる。少々照れ臭くはあるが、まあ、悪い気分ではない。
「猫ひっかきより猫パンチが好みなんだが………ふぅ、とりあえず、名前を決めねばと思ったが見た瞬間思い付いた名がある!銀次郎と名付け銀にゃんと呼ぼう!」
血だらけながらも復活が早いなと思いつつも子猫につけられた名前に、反応せずにはいられなかった。銀次郎……それは俺にとって大事な名前だから。
「モナにゃんが初めて連れてきた猫だ。銀次郎という罪人との繋がりを感じたのではないか?」
「にゃご………?」
知っていたのかと驚く。罪人として裁かれた銀次郎と俺の関係を。関係というのかはわからないが………。
「ふ……っこの城にいる猫のことは毎日報告を受けてから寝ている!最近は数が増えて朝方になることが多いが………」
「にゃご」
「に……」
何、こいつ、気持ち悪い。俺と子猫……銀次郎の言葉が重なった。少しばかり見直した俺がバカだったな。
「とはいえ、モナにゃんの大切と思えた人を助けてやれずすまない。犯罪を好んでするものは自業自得だが、仕方ない犯罪というのも存在する。それはまだまだ私が力不足が故。民の安定した生活を広げることで治安をよくし、銀次郎のようなものたちが増えないようより精進していくつもりだ」
人間のボスとしての言葉………なのだろう。変人とはいえ、その眼差しは本気が伺えた。
「に……」
「にゃご」
だからだろうか。銀次郎と名付けられた子猫もこの変人に怯える様子がなくなった。
「そして最後には猫が安心して暮らせる国とする!いっそにゃんこの国改名も………私、天才では?ふむ、さっそく王妃に相談……」
しかし、おかしなやつはおかしなやつでしかなく、猫のために励んでくれるのはありがたいが、呆れた気分になるのは何故だろうなぁ?
「に……」
「にゃご」
銀次郎もあれ大丈夫?と不審者を見る目付きに変わった。あれは教育に悪いからと俺たちはぶつぶつ言う変人を無視してその場を後にするのだった。
とりあえず、子猫に銀次郎と名付けたことだけは褒めてもいいだろう。
そんな俺は次は絶対に死なせてやるものかと子猫の銀次郎を見て心に誓うのだった。
おわり
あとがき
2022年2月22日スーパーにゃんにゃんにゃんの日なので書かねばと思いました。久々だからキャラ崩れあるかもしれない。
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誰でも猫になれる空間ですにゃ
うふふ(ФωФ)仕事の息抜きに嬉しいです。最初から読み直してきます♪
ぜひぜひ自分も忘れ気味で読み返しました(笑)
久々更新ありがとうございます
ヾ( 〃∇〃)ツ キャーーーッ♡
猫様の日様様(*´艸`)
猫様に気持ち悪がられる…(しかし本人にはご褒美www)
最高です(๑•̀ㅁ•́ฅ✨
ありがとうございます!
猫の日にふさわしい話かはわかりませんが、満足いただけたら何より(笑)