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番外編年齢制限なし
番外編~あれは恐ろしいものだった~
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「トア、ごめん。今日はする気になれない」
「いえ……残念ですが、兄上、朝から顔色悪かったですから。昨晩、無理させましたか?」
「いや、あの後恐ろしい夢を見たんだ。」
きっちりと寝間着を着ている時点でしないと言うことを理解してくれていたのだろう。どうしてもと言われたらしたかもしれないが。ベットに潜り込み、横になれば、顔を合わせて話す。青白いだろう顔の俺を、心配そうに見るトア。
「夢、ですか?」
「ああ、あんな怖い夢初めてだ。あれが現実なら俺はもうトアを連れてこの世界から脱出する」
「この国を出るんじゃなくてですか?」
「いや、国を出るくらいじゃアレからは逃げられない」
「何かに追いかけられる夢ですか?」
「ああ、妹だ」
「いもうと」
心配そうな表情からきょとんとした表情に。まあそれだけ聞けばそうだろう。妹が怖くて、国を出ても追いかけて来る妹など、普通じゃない。
「よく考えるんだ。俺の妹ならトアの妹で、さらにあの母が生む娘だ。詳しくは元王妃の武勇伝物語を参照にすればいい」
「ぶゆう・・・?よくわかりませんが、確かにあの母の娘となると普通がわからなくなりそうですが」
「俺の夢は妹が生まれたときから始まった」
「あ、話してくれるんですね」
トアと愛を分かち合った昨晩、疲れて眠る俺は10歳で、5歳のトアを傍に置いていた。母も父もまだ山に籠ってはいないが、父はやつれた顔で書類を片付け、母は何故か兵士たちを薙ぎ倒し訓練を一緒に行っている。この時点で夢とわかった。まず5歳のトアには会っていないのだから。4歳の頃の記憶で修正でもされているのだろう。
そんな中、兵士を訓練途中産気付く母。妊娠中に暴れるなと言いたいが夢なのでなんでもありなのだろう。慌てた兵士たちに運ばれ、既に倒れていた父は先に医務室にいる始末。何があったと突っ込むのは飲み込んだ。夢だけど。
そして30分もせぬまに狭い洞窟を掻い潜るかのように出てきた女の子の赤ちゃん。え、何、怖い。しかも泣きもせず、心配した助産師が頬に触れたとたん、バシッと助産師の手を払う。
触らないでと睨むような赤ちゃんは、もはや赤ちゃんと呼んでいいかわからない。しかし、母親に抱かれたとたん怯えるように震え出したので、この赤ちゃん野生の勘でもあるんじゃないかと疑った。
場面は代わり、赤ちゃん1歳、言葉を教えようとする母と、死んだような目で笑う父。もう父は寝た方がいいと思った。夢だけど。
夢の赤ちゃんである妹の最初の言葉
「クソジジイ死んだ目見せんな」
やっぱこれ赤ちゃんじゃない。と夢のトアの手を強く握った。
しかし何があったのか、またもや場面が代わり、3歳になって、急に女の子らしくなった。
「お兄様、蛇がいましたの。怖かったわ」
と死ぬ毒蛇をなんなく掴んで見せる妹は口調こそ治ったが野蛮さは母に似た。怖いながら掴むな、握るなと言いたい。でも、なんか言えない。
「お兄様!木の上涼しいのよ!」
ぴょんと木の枝に飛び乗る妹は、もはや3歳児ではありえない。13歳の俺でも飛び乗れません。
そして一気に6歳に成長した妹はさらに規格外へ
「お兄様、勉強なんてつまらないわ」
「後少しだろ?」
「兄上に我が儘はだめですよ」
そんな援護をしてくれるトアに感動しつつも、膨れた妹は窓を割って勉強から逃げた。
「ここ、三階!」
何回転かし、華麗に着地を決める妹。これにはもう呆れて放置し、夢ですらトアとの勉強を優先した罰だろうか。妹はなぜ追いかけてこないのかと怒り、トアばかりずるいと俺を追いかけ、学園までに乗り込んだ。
子供でも許可なく入るのは許されない学園で、警備の人たちは捕まえようにも人間業とは思えない逃げで何十人という警備を潜り抜けるは6歳の妹。さらに何が原因か訓練中の獣が学園に入り込み襲われそうになる妹に、誰もが悲鳴をあげた瞬間。
「ごめんあそばせ!」
一撃で獣を撃沈させた。冷や汗をかき出した俺を見つけ獲物を見つけたとばかりに追いかけられ、トアに助けてもらいながらそんな日々が続く・・・ところで夢は終わった。
「母上をそのまま小さくしたような妹ですね」
「俺、妹絶対いらない」
「僕も兄弟は兄上だけでいいです。」
その日幻の妹に魘されることなく眠れ、気持ちいい朝を迎えることができたのは兄弟の誓いのおかげか、夢自体が神様のいたずらだったのかは誰にもわからない。
「いえ……残念ですが、兄上、朝から顔色悪かったですから。昨晩、無理させましたか?」
「いや、あの後恐ろしい夢を見たんだ。」
きっちりと寝間着を着ている時点でしないと言うことを理解してくれていたのだろう。どうしてもと言われたらしたかもしれないが。ベットに潜り込み、横になれば、顔を合わせて話す。青白いだろう顔の俺を、心配そうに見るトア。
「夢、ですか?」
「ああ、あんな怖い夢初めてだ。あれが現実なら俺はもうトアを連れてこの世界から脱出する」
「この国を出るんじゃなくてですか?」
「いや、国を出るくらいじゃアレからは逃げられない」
「何かに追いかけられる夢ですか?」
「ああ、妹だ」
「いもうと」
心配そうな表情からきょとんとした表情に。まあそれだけ聞けばそうだろう。妹が怖くて、国を出ても追いかけて来る妹など、普通じゃない。
「よく考えるんだ。俺の妹ならトアの妹で、さらにあの母が生む娘だ。詳しくは元王妃の武勇伝物語を参照にすればいい」
「ぶゆう・・・?よくわかりませんが、確かにあの母の娘となると普通がわからなくなりそうですが」
「俺の夢は妹が生まれたときから始まった」
「あ、話してくれるんですね」
トアと愛を分かち合った昨晩、疲れて眠る俺は10歳で、5歳のトアを傍に置いていた。母も父もまだ山に籠ってはいないが、父はやつれた顔で書類を片付け、母は何故か兵士たちを薙ぎ倒し訓練を一緒に行っている。この時点で夢とわかった。まず5歳のトアには会っていないのだから。4歳の頃の記憶で修正でもされているのだろう。
そんな中、兵士を訓練途中産気付く母。妊娠中に暴れるなと言いたいが夢なのでなんでもありなのだろう。慌てた兵士たちに運ばれ、既に倒れていた父は先に医務室にいる始末。何があったと突っ込むのは飲み込んだ。夢だけど。
そして30分もせぬまに狭い洞窟を掻い潜るかのように出てきた女の子の赤ちゃん。え、何、怖い。しかも泣きもせず、心配した助産師が頬に触れたとたん、バシッと助産師の手を払う。
触らないでと睨むような赤ちゃんは、もはや赤ちゃんと呼んでいいかわからない。しかし、母親に抱かれたとたん怯えるように震え出したので、この赤ちゃん野生の勘でもあるんじゃないかと疑った。
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夢の赤ちゃんである妹の最初の言葉
「クソジジイ死んだ目見せんな」
やっぱこれ赤ちゃんじゃない。と夢のトアの手を強く握った。
しかし何があったのか、またもや場面が代わり、3歳になって、急に女の子らしくなった。
「お兄様、蛇がいましたの。怖かったわ」
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(ムーンライトノベルにも掲載しています)
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