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本編完結(年齢制限無し)

10年後

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「即位おめでとうございます。」

「兄上、ふふっようやく独り占めできます!」

「大して変わらないと思うが」

「初の王命を言い渡す!兄上は僕から離れないこと!」

「なら寝るのもお風呂も一緒か」

「え?あれ、そうなりますね……一緒にお風呂も、寝るのも初めてです。ふふっ」

あれから十年、あっという間に過ぎた。あの日ヒロインは精神が荒れているとほぼ屋敷で軟禁生活を強いられたものの、何を思ったか脱走して、俺を殺そうとしたため、今では牢に入れられ不眠気味でぶつぶつと言って不気味な生活を送っているようだ。

殺されかけた時、驚いたものの、いくら平凡とはいえ、鍛えてもない令嬢を避けるのは容易く、怪我ひとつなかったわけだが、トアは泣きながら俺を心配してくれたので、不本意ながらも可愛いトアの泣き顔が見れたのもあり、怒りはなかった。

そして、今日。18歳になったトアがようやく父上を押し退け、王になった。父上はまだまだ現役だが、トアがどうやったのか、父上どころか母上すらも辺境の地へ追いやってしまった。他にも膿を出さなきゃと可愛い笑顔で次々とトアが用なしとした貴族はどんな位についていようが、横領や犯罪などを暴かれ平民へ落ちた。

恐らくだが、父上も人に厳しくしながら悪さをしていたんだろうと思う。ちなみに辺境の地へ追いやりながらその身ひとつで追いやるのだからやりすぎではと感じたが、どうやら父上には並々ならぬ恨みがあるとか。

さらにはトアが使えると判断した者たちを既に選別しており、さっさと雇って、空いた穴さえ塞ぐのだからさすがとしか言い様がない。

そんな忙しい中できる限り俺から離れないとひっついて来るトアはいつまでたっても子供のようで無下にはできない。ついに王命すら持ち出して俺を離さないのだから将来王家の血筋のものから養子をとって次代の王を育てるべきだなと思った。

どうにも二人して結婚はする気がないし、二人だけの世界の方がうまくいくと確信している。なんせ、相変わらずトアは俺以外に冷めた表情で、人を嫌う。人嫌いな王なんて前代未聞だけど、優秀なのに代わりはない。

身内など下手に作るべきでもないしね。俺が妻をつくるならばトアは不安がるし、トアの妻をつくればトアのストレスが溜まるばかり、いいことなどひとつもない。

「トアと兄弟でよかったと思うよ」

「僕も兄上が兄上でよかったです」

「意味が少し違うよ?」

「?」

「この国じゃ男同士の結婚は認められない。けど兄弟だから身内だし、する必要もない。弟が女性より魅力的に見えるんだけどどうしようか?」

「あ、あ、ああああにうえ!?」

そっと額にキスを落とせば、相変わらず俺に関して純情な俺の弟は顔を真っ赤にして可愛さが溢れている。王相手に不敬だと言うやつはいない。だってどう見てもトアが自分を見せるのは俺だけなのは10年前から周囲の事実として当たり前のことなのだから。

トアが俺を選んだのだから死ぬまで幸せにするのが俺の使命。愛してるよ、トア。

二人の首にはそれぞれの相手の髪と瞳の色でできた指輪を通しただけのチェーンが揺らいだ。

END
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