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本編完結(年齢制限無し)
イライラ(セトア視点)
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学園の入学式は幸せだった。4年も何故か会いたくても会えない兄上が隣に座っていて、久々のために入学式どころじゃなく、兄上が隣にいることに緊張してしまい不躾にもちらちらと見てしまえば、気づいた兄上が笑みを浮かべて僕の握りしめた拳を握ってくれた。
久々の兄上の体温。動揺して困惑して、混乱する僕に、兄上はおかしそうに声を抑えて笑って、兄上が僕を見て笑ってくれているとかなりの幸福感に包まれた。
入学式が終われば婚約者に会いに行くんだろう兄上をひ引っ張り校舎裏へ。入学前に下調べはしているから人気のない場所を探すのに迷いはしない。
キョロキョロと辺りを見回す兄上が愛しい。やはりつい緊張していれば、したかった質問をわかっているかのように兄上は答えてくれた。同時にやはり王になろう、と父上に大して怒りばかりが膨れ上がった。
兄上から質問されて兄上を独占したいから王になりたいなんて言えず、婚約破棄を理由にすれば、思わぬ勘違いをされそうになり、兄上を独占したいと遠回しに伝えてしまった。でも兄上は気にしないとばかりに僕の好きなようにさせてくれるらしい。
だから兄上には後から来るように言いリトレーン嬢に言った。
「絶対に王になり、兄上との婚約を破棄させてやる」
「まあっ」
何を勘違いしたのか頬を赤らめるリトレーン嬢が心底気持ち悪くイラッとした。勘違いさせないよう兄上に近づくなと言おうとすれば、早くも兄上の登場。早すぎです、兄上。
「二人してどうかしたのか?アイリス嬢家まで送ろう。トアも送るか?」
「いえ、いいです」
「あら、一緒に行きましょう?」
ああ、引っ付こうとするな。スッと避ければきょとんとして『照れてますのね』なんてまたもやいらつく言葉。誰があなたみたいな女に照れるか。
その日やはり兄上にくっついて着いて行けばよかったと感じた半年間。まさか兄上にまた会えなくなるとは思わなかった。これもまた父の手の回しようなのか、兄上とあの女は同じクラスというのに、僕は一番離れたクラスで、いくら兄上の教室に寄っても会えない。
自然とできた取り巻きはいくら冷たくしても寄って来るし、兄上の教室を覗く度にリトレーン嬢が近寄って来てうっとおしいかぎりだ。
どうせ兄上に会えないなら王宮にいる方がよかった。
夏休暇に入り王宮に帰ってもやはり兄上には会えず、イライラは募るばかり。そして休暇も終わり文化祭を控えた秋。ようやく兄上を見つけた。
「兄上、兄上、兄上~!」
「トア!?」
周囲を気にせず抱きつけば驚く兄上の言葉と共に周囲がざわつく。人前で王族が人に抱きつくなどよくはないかもしれないが、僕はまだ8歳だし、兄上は兄上だ。婚約者や女性に抱きついたわけでもない。唯一の家族にようやく会えたんだ。躊躇う気はない。
父上は憎むべき対象だし、黙りきった母上に興味はない。僕の家族は兄上だけで十分である。
「なんで、なんで避けるのですか」
兄上の背中に頭をぐりぐりと擦り寄せながら聞く。わかっている兄上が僕を自ら避けているのだと。理由もなんとなくだがわかっている。
兄上の噂の評判は悪い。僕の周囲や婚約者であるリトレーン嬢までをもいじめているのだと。理由はわからないが、何もなしに噂は広まらないし、何かしら悪いことをしているんだろう。
けど、それを理由に会わないのは嫌だ。兄上にいじめられる人がいるならばそれさえも羨ましく僕は思うくらいには兄上に会わないことが辛い。
「トア………」
兄上が話そうとした直後、僕の大嫌いな声が響いた。
「殿下!殿下はリーアベル様に近づくべきではありません!リーアベル様は婚約者である私が殿下と親しくしているからと嫌がらせをするのです!私………辛くて………っうう」
誰が親しくしているって?兄上に誤解されでもしたらこの女殺してもいいだろうか?汚い涙流して何がしたいの?嫌がらせって要は構ってもらえるんでしょ?何、自慢?兄上に嫌がらせすらされず一目すら見れず苦しんでる僕に?
ああ、だめだ。冷静に、冷静にならなきゃ。
このとき頭に血が上った僕は、リトレーン嬢に目がいって、兄上が何かを考え込む姿に気づけなかった。
久々の兄上の体温。動揺して困惑して、混乱する僕に、兄上はおかしそうに声を抑えて笑って、兄上が僕を見て笑ってくれているとかなりの幸福感に包まれた。
入学式が終われば婚約者に会いに行くんだろう兄上をひ引っ張り校舎裏へ。入学前に下調べはしているから人気のない場所を探すのに迷いはしない。
キョロキョロと辺りを見回す兄上が愛しい。やはりつい緊張していれば、したかった質問をわかっているかのように兄上は答えてくれた。同時にやはり王になろう、と父上に大して怒りばかりが膨れ上がった。
兄上から質問されて兄上を独占したいから王になりたいなんて言えず、婚約破棄を理由にすれば、思わぬ勘違いをされそうになり、兄上を独占したいと遠回しに伝えてしまった。でも兄上は気にしないとばかりに僕の好きなようにさせてくれるらしい。
だから兄上には後から来るように言いリトレーン嬢に言った。
「絶対に王になり、兄上との婚約を破棄させてやる」
「まあっ」
何を勘違いしたのか頬を赤らめるリトレーン嬢が心底気持ち悪くイラッとした。勘違いさせないよう兄上に近づくなと言おうとすれば、早くも兄上の登場。早すぎです、兄上。
「二人してどうかしたのか?アイリス嬢家まで送ろう。トアも送るか?」
「いえ、いいです」
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その日やはり兄上にくっついて着いて行けばよかったと感じた半年間。まさか兄上にまた会えなくなるとは思わなかった。これもまた父の手の回しようなのか、兄上とあの女は同じクラスというのに、僕は一番離れたクラスで、いくら兄上の教室に寄っても会えない。
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どうせ兄上に会えないなら王宮にいる方がよかった。
夏休暇に入り王宮に帰ってもやはり兄上には会えず、イライラは募るばかり。そして休暇も終わり文化祭を控えた秋。ようやく兄上を見つけた。
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「トア!?」
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父上は憎むべき対象だし、黙りきった母上に興味はない。僕の家族は兄上だけで十分である。
「なんで、なんで避けるのですか」
兄上の背中に頭をぐりぐりと擦り寄せながら聞く。わかっている兄上が僕を自ら避けているのだと。理由もなんとなくだがわかっている。
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けど、それを理由に会わないのは嫌だ。兄上にいじめられる人がいるならばそれさえも羨ましく僕は思うくらいには兄上に会わないことが辛い。
「トア………」
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ああ、だめだ。冷静に、冷静にならなきゃ。
このとき頭に血が上った僕は、リトレーン嬢に目がいって、兄上が何かを考え込む姿に気づけなかった。
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