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「そのレイム様は暴力などは振るわれるんでしょうか……?」
とりあえず父のことで一番辛かった出来事を当てはめて聞いて見ればキュウジンもメリーも驚いたように目を見開いた。まさかそんな質問をされるとは思ってなかったかのように。
「そんな滅相もない!物に当たることはございますが、罪なき者に手を出すほど腐った人間ではございませぬ。犯罪者には容赦のない方ですが、それは公爵家の後継ぎとしては立派なお姿であらせられるので……」
僕が罪なき者に入るかは微妙だけど、犯罪者と言われたことはないから、父はやはり腐った人間なのだろう。そもそも僕以外にも暴力は日常茶飯だったわけだし。キュウジンの様子を見るに、この世の中で父より酷い人と出会うことは少なくともなさそうだ。
正直暴力がないだけでも今までの生活より随分と快適とも言えるだろう。それに公爵家ともなれば、フェロモンの対策を練られていてもおかしくなさそうだし、思ったより子爵家を出て公爵家に嫁げるのは悪くないことかもしれない。
そう思うと若干不安が和らいだような気もした。情緒不安定といっても、発情期の僕の周りにいる人が狂うような現象よりは酷くはないだろうし、後継ぎを作る以外で関わりがあまりないようにすれば、そこまで酷いことにはならない可能性もある。それが可能かはこれからでないとわからないけれど、少なくとも今までよりはマシな生活なのでは?とつい希望が出てしまう。想像しかできないからそう思ってしまうのかもしれないが、僕だって幸せになりたくないわけではないから。
「失礼しました。その……では、婚約者として気をつける点などはありますか?」
「それなら一点私から。まずは公爵家の奥方になられるお方として、使用人に丁寧な言葉遣いをする必要はない点でしょうか?使用人にも気遣える優しい奥様と見られる点はいいですが、使用人にも遜る立場の弱い人物と舐められる可能性の方が高いです。使用人を見下せとは言いませんが、もう少し言葉を崩した方がよいかと」
話し始めてからよっぽど気になっていたのだろう。この質問に対してはメリーが先に答えてくれた。確かに公爵家に嫁ぐならその辺りはしっかりとしないといけない。子爵家では使用人にすら煙たがられていたからついつい畏まっていたけど、その癖を意識して直さないことには公爵家の迷惑にもなりそうだ。メリーが公爵家に着く前に気づかせてくれて本当によかった。
「ありがとうござ……ありがとう。つい癖で……気をつけるね」
「癖……ですか。いえ、お気になさらず。私は今後ラフィエル様の専属のメイドになりますので」
「え?メリーさ……メリーが?」
「そのため、先んじてメリーには私に着いてきてもらったのですよ。本来なら屋敷に着いてからの紹介でもいいのですが、レイム坊っちゃまにはもう一つ問題点がありまして……。場合によっては、坊っちゃまにお会いになられてすぐメリーの出番が来る可能性もあり、早めに会わせることになったのです」
まさかここで専属メイドが既に決まった上で迎えに同乗してるとは思わず驚いていると、これまた僕の婚約者に関することのために必要なことだったようだ。婚約者に会うだけでメリーの世話になるような問題点とは一体何だろうか?
「その問題点って……?」
「坊っちゃまは見た目だけだとαらしからず舐めてかかる不届き者もいるのですが、αとしての力は王家にも匹敵するほどに強いのです。結果、坊っちゃまに近づきすぎると誰もが失神するのです。同じα性なら多少は耐えられますが、長時間は意識が保てないとのことでして」
「失神……?どれくらい近づくとダメなんでしょうか?」
「だいたい互いに手を伸ばして握手する範囲程度なら意識がふらつく程度です。……βなら」
「Ωは……」
「正直坊っちゃまがαとして覚醒してからΩの方を招き入れた時、部屋3畳分の距離で耐えきれず失神されました」
つまりΩは触れる程度すら近づけず失神する可能性があるということ。それって後継ぎを作るのにも支障がありすぎて、関わりを少なくする以前の問題だ。婚約者ができなかった大きな理由はもしかしてそれにあるのかもしれない。
「でもそれならΩである僕よりβの方がまだ可能性があるんじゃ……」
「それがβですと第二性別をΩに変換させてしまい結局同じ過ちを繰り返すことになるのです。触れ合い深くなると……なんで普通に接するだけの分にはそんなことにならないのですが」
「βがΩに……?」
後天的にαやΩになることは昔ならあったと聞いたことはある。でもキュウジンの言い方だと必ずそうなるとわかってる様子。特定の条件化とはいえ、そんなαとして強い存在が自己管理できないなんてことあるんだろうか?僕のΩ性として発情期がおかしいように、α性の異分子みたいなものなのかもしれないけど、どこか親近感を覚えてしまうのは周りと違う存在が、僕以外にもいたことへの安堵なのかもしれない。
とりあえず父のことで一番辛かった出来事を当てはめて聞いて見ればキュウジンもメリーも驚いたように目を見開いた。まさかそんな質問をされるとは思ってなかったかのように。
「そんな滅相もない!物に当たることはございますが、罪なき者に手を出すほど腐った人間ではございませぬ。犯罪者には容赦のない方ですが、それは公爵家の後継ぎとしては立派なお姿であらせられるので……」
僕が罪なき者に入るかは微妙だけど、犯罪者と言われたことはないから、父はやはり腐った人間なのだろう。そもそも僕以外にも暴力は日常茶飯だったわけだし。キュウジンの様子を見るに、この世の中で父より酷い人と出会うことは少なくともなさそうだ。
正直暴力がないだけでも今までの生活より随分と快適とも言えるだろう。それに公爵家ともなれば、フェロモンの対策を練られていてもおかしくなさそうだし、思ったより子爵家を出て公爵家に嫁げるのは悪くないことかもしれない。
そう思うと若干不安が和らいだような気もした。情緒不安定といっても、発情期の僕の周りにいる人が狂うような現象よりは酷くはないだろうし、後継ぎを作る以外で関わりがあまりないようにすれば、そこまで酷いことにはならない可能性もある。それが可能かはこれからでないとわからないけれど、少なくとも今までよりはマシな生活なのでは?とつい希望が出てしまう。想像しかできないからそう思ってしまうのかもしれないが、僕だって幸せになりたくないわけではないから。
「失礼しました。その……では、婚約者として気をつける点などはありますか?」
「それなら一点私から。まずは公爵家の奥方になられるお方として、使用人に丁寧な言葉遣いをする必要はない点でしょうか?使用人にも気遣える優しい奥様と見られる点はいいですが、使用人にも遜る立場の弱い人物と舐められる可能性の方が高いです。使用人を見下せとは言いませんが、もう少し言葉を崩した方がよいかと」
話し始めてからよっぽど気になっていたのだろう。この質問に対してはメリーが先に答えてくれた。確かに公爵家に嫁ぐならその辺りはしっかりとしないといけない。子爵家では使用人にすら煙たがられていたからついつい畏まっていたけど、その癖を意識して直さないことには公爵家の迷惑にもなりそうだ。メリーが公爵家に着く前に気づかせてくれて本当によかった。
「ありがとうござ……ありがとう。つい癖で……気をつけるね」
「癖……ですか。いえ、お気になさらず。私は今後ラフィエル様の専属のメイドになりますので」
「え?メリーさ……メリーが?」
「そのため、先んじてメリーには私に着いてきてもらったのですよ。本来なら屋敷に着いてからの紹介でもいいのですが、レイム坊っちゃまにはもう一つ問題点がありまして……。場合によっては、坊っちゃまにお会いになられてすぐメリーの出番が来る可能性もあり、早めに会わせることになったのです」
まさかここで専属メイドが既に決まった上で迎えに同乗してるとは思わず驚いていると、これまた僕の婚約者に関することのために必要なことだったようだ。婚約者に会うだけでメリーの世話になるような問題点とは一体何だろうか?
「その問題点って……?」
「坊っちゃまは見た目だけだとαらしからず舐めてかかる不届き者もいるのですが、αとしての力は王家にも匹敵するほどに強いのです。結果、坊っちゃまに近づきすぎると誰もが失神するのです。同じα性なら多少は耐えられますが、長時間は意識が保てないとのことでして」
「失神……?どれくらい近づくとダメなんでしょうか?」
「だいたい互いに手を伸ばして握手する範囲程度なら意識がふらつく程度です。……βなら」
「Ωは……」
「正直坊っちゃまがαとして覚醒してからΩの方を招き入れた時、部屋3畳分の距離で耐えきれず失神されました」
つまりΩは触れる程度すら近づけず失神する可能性があるということ。それって後継ぎを作るのにも支障がありすぎて、関わりを少なくする以前の問題だ。婚約者ができなかった大きな理由はもしかしてそれにあるのかもしれない。
「でもそれならΩである僕よりβの方がまだ可能性があるんじゃ……」
「それがβですと第二性別をΩに変換させてしまい結局同じ過ちを繰り返すことになるのです。触れ合い深くなると……なんで普通に接するだけの分にはそんなことにならないのですが」
「βがΩに……?」
後天的にαやΩになることは昔ならあったと聞いたことはある。でもキュウジンの言い方だと必ずそうなるとわかってる様子。特定の条件化とはいえ、そんなαとして強い存在が自己管理できないなんてことあるんだろうか?僕のΩ性として発情期がおかしいように、α性の異分子みたいなものなのかもしれないけど、どこか親近感を覚えてしまうのは周りと違う存在が、僕以外にもいたことへの安堵なのかもしれない。
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