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「それは兄上、ビアンカに失礼です!」
よく言ってくれたわ、スーデン殿下!でもあながち間違いではないからなんとも言い切れないわね……
「時にスーデン。人間に完璧な存在はいないんだよ?ビアンカ嬢は優秀ではあっても完璧ではないんだ。それは私も同じ。人には必ずしも向き不向きがありビアンカ嬢の場合未来の王妃には不向きだと私は思う。上手くはやるだろうけどね」
この王太子殿のすごいところは人の本質を見抜くことにあるだろう。確かに私も王妃という仕事はできてもそれだけだ。王妃という存在には不向きだろう。王太子妃の代わり務めくらいならともかく。よくて側室かしらね。
「ビアンカの優秀さを認めながら何故ですか?」
これに関して周りも気になるのか王太子殿下の言動を気にする様子が窺える。私と関わる人ならなんとなくわかる方もいそうだけれど。
「ビアンカ嬢は国に無関心だからだよ。無関心という言い方は悪いかもしれないけど、彼女は貴族の義務には忠実であり、模範とも言える。けれどそれは、貴族に生まれたからこそ与えられる対価を返すためにしていること。その精神は素晴らしいことだけれど、彼女にとってそれは自分のためであり国のためではない。言い方は悪いけれど、対価がなくなった時それでも国を大切にできるかと言われれば恐らくビアンカ嬢はいっそ平民となって国を出る覚悟もある。王妃とは最後の時まで国を王と共に守っていく存在でなければならないんだ。だからこそビアンカ嬢を未来の王妃に選ぶには相応しくないんだよ。将来の王妃や未来の私の子供の指南役には彼女が適任だけどね」
王太子殿下はよくわかってると思う。私はこの貴族の生活がどれほど恵まれているかわかっているからその生活を失わないように貴族の義務として努力を怠ることはなかった。でもそれは恵まれているからこそであって、それが自分の責任で生活の質を落とすなら改善の努めるだろうけど、そうでないなら平民になってでも貴族という身分を躊躇いなく捨てる自信がある。
それでも私は薄情にはなりきれそうにはないと今は思う。だって……
「王太子殿下の言葉を否定はできません。ですがスーデン殿下、私多分貴方を見捨てられそうにはありませんの」
「ビアンカ……?」
「これでも殿下との結婚楽しみにしてるんですよ?なのに王太子殿下と結婚させようとするなんてあんまりですわ」
「そ、それって」
「私は国を捨てれてもスーデン殿下は捨てられそうにないので、結果的にスーデン殿下となら王妃の資質を得られそうですわね」
「おやおや可愛い弟と私は争いたくないんだがね」
「冗談に決まってますでしょう?スーデン殿下と一緒ならまあ、この国に何があっても力になってあげてもいいということですわ」
「それは随分頼もしいね」
王太子殿下が揶揄うものだからつい不敬きまわりない上目線な言い方になってしまったけど、怒らせた様子はない。まあ意地悪なとこはあれど基本的にこの王太子殿下は寛容だからこそ私も嫌いにはなりきれないのだ。
「び、ビアンカ!俺、兄上みたいにかっこよくないし、ダメなところばっかだけどそれでも俺でいい、のか?」
「スーデン殿下、貴方様はもう少し自分に自信をもってください。私は王太子殿下より貴方様の方を素敵に思ってるのだから」
他人ばかり褒めて自分には厳しすぎる困った私の未来の旦那様だけど
「お、俺もビアンカがすっごく好きだ!」
こうも顔でも言葉でも素直に伝えてくれる好意に私は思った以上に絆されていたようだと今更ながらに気づいた。王太子殿下に私が未来の王妃に相応しくないと言われてほっとしている自分がいたことを自覚して。
「私も愛していますよ」
「び……!!!!!????」
「「「「きゃあああああ」」」」
私の言葉に興奮して名前を呼ぼうとしたスーデン殿下に、はしたなくも私から口付けて言葉を止めた。周りの黄色い歓声からしてまあ許されるでしょう。
唇を離せば顔を真っ赤にしたスーデン殿下。
「あわ……き、きす、ビアン、カと…………っ」
「おっと……全く弟をいじめて楽しいかい?」
思った以上に興奮しきってしまった純情なスーデン殿下は気絶したようで、倒れかけたところを王太子殿下が受け止めた。やれやれといった表情だが王太子殿下もまだまだのよう。
「にやけを隠してから言ってくださいな。私の未来の旦那様は可愛いも備えてるので気持ちはわかりますけど」
「私もポーカーフェイスを鍛える必要があるね。弟の可愛さの前だと中々に難しいんだこれが」
「存じております」
少しブラコン気味な未来の義兄には苦労しそうだけど、婚約破棄の心配?もなくなってめでたしめでたしといったところかしら?
とりあえず今日からは未来の旦那様に私に慣れてもらうよう頑張りますわ。これでは初夜の一つや二つも難しそうですから……ね?
END
あとがき
久々の新作。AndroidからiPhoneに変えたため割と打ちミスが多く練習させていただきました。
定番の婚約破棄ものシリーズでしたがお楽しみいただけたでしょうか?
ドクターストップ(精神的なもの)により休職してから少しずつ回復して外出も増やすように励んでます。小説を書く気力が出たのは自分でも嬉しい変化です。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
よく言ってくれたわ、スーデン殿下!でもあながち間違いではないからなんとも言い切れないわね……
「時にスーデン。人間に完璧な存在はいないんだよ?ビアンカ嬢は優秀ではあっても完璧ではないんだ。それは私も同じ。人には必ずしも向き不向きがありビアンカ嬢の場合未来の王妃には不向きだと私は思う。上手くはやるだろうけどね」
この王太子殿のすごいところは人の本質を見抜くことにあるだろう。確かに私も王妃という仕事はできてもそれだけだ。王妃という存在には不向きだろう。王太子妃の代わり務めくらいならともかく。よくて側室かしらね。
「ビアンカの優秀さを認めながら何故ですか?」
これに関して周りも気になるのか王太子殿下の言動を気にする様子が窺える。私と関わる人ならなんとなくわかる方もいそうだけれど。
「ビアンカ嬢は国に無関心だからだよ。無関心という言い方は悪いかもしれないけど、彼女は貴族の義務には忠実であり、模範とも言える。けれどそれは、貴族に生まれたからこそ与えられる対価を返すためにしていること。その精神は素晴らしいことだけれど、彼女にとってそれは自分のためであり国のためではない。言い方は悪いけれど、対価がなくなった時それでも国を大切にできるかと言われれば恐らくビアンカ嬢はいっそ平民となって国を出る覚悟もある。王妃とは最後の時まで国を王と共に守っていく存在でなければならないんだ。だからこそビアンカ嬢を未来の王妃に選ぶには相応しくないんだよ。将来の王妃や未来の私の子供の指南役には彼女が適任だけどね」
王太子殿下はよくわかってると思う。私はこの貴族の生活がどれほど恵まれているかわかっているからその生活を失わないように貴族の義務として努力を怠ることはなかった。でもそれは恵まれているからこそであって、それが自分の責任で生活の質を落とすなら改善の努めるだろうけど、そうでないなら平民になってでも貴族という身分を躊躇いなく捨てる自信がある。
それでも私は薄情にはなりきれそうにはないと今は思う。だって……
「王太子殿下の言葉を否定はできません。ですがスーデン殿下、私多分貴方を見捨てられそうにはありませんの」
「ビアンカ……?」
「これでも殿下との結婚楽しみにしてるんですよ?なのに王太子殿下と結婚させようとするなんてあんまりですわ」
「そ、それって」
「私は国を捨てれてもスーデン殿下は捨てられそうにないので、結果的にスーデン殿下となら王妃の資質を得られそうですわね」
「おやおや可愛い弟と私は争いたくないんだがね」
「冗談に決まってますでしょう?スーデン殿下と一緒ならまあ、この国に何があっても力になってあげてもいいということですわ」
「それは随分頼もしいね」
王太子殿下が揶揄うものだからつい不敬きまわりない上目線な言い方になってしまったけど、怒らせた様子はない。まあ意地悪なとこはあれど基本的にこの王太子殿下は寛容だからこそ私も嫌いにはなりきれないのだ。
「び、ビアンカ!俺、兄上みたいにかっこよくないし、ダメなところばっかだけどそれでも俺でいい、のか?」
「スーデン殿下、貴方様はもう少し自分に自信をもってください。私は王太子殿下より貴方様の方を素敵に思ってるのだから」
他人ばかり褒めて自分には厳しすぎる困った私の未来の旦那様だけど
「お、俺もビアンカがすっごく好きだ!」
こうも顔でも言葉でも素直に伝えてくれる好意に私は思った以上に絆されていたようだと今更ながらに気づいた。王太子殿下に私が未来の王妃に相応しくないと言われてほっとしている自分がいたことを自覚して。
「私も愛していますよ」
「び……!!!!!????」
「「「「きゃあああああ」」」」
私の言葉に興奮して名前を呼ぼうとしたスーデン殿下に、はしたなくも私から口付けて言葉を止めた。周りの黄色い歓声からしてまあ許されるでしょう。
唇を離せば顔を真っ赤にしたスーデン殿下。
「あわ……き、きす、ビアン、カと…………っ」
「おっと……全く弟をいじめて楽しいかい?」
思った以上に興奮しきってしまった純情なスーデン殿下は気絶したようで、倒れかけたところを王太子殿下が受け止めた。やれやれといった表情だが王太子殿下もまだまだのよう。
「にやけを隠してから言ってくださいな。私の未来の旦那様は可愛いも備えてるので気持ちはわかりますけど」
「私もポーカーフェイスを鍛える必要があるね。弟の可愛さの前だと中々に難しいんだこれが」
「存じております」
少しブラコン気味な未来の義兄には苦労しそうだけど、婚約破棄の心配?もなくなってめでたしめでたしといったところかしら?
とりあえず今日からは未来の旦那様に私に慣れてもらうよう頑張りますわ。これでは初夜の一つや二つも難しそうですから……ね?
END
あとがき
久々の新作。AndroidからiPhoneに変えたため割と打ちミスが多く練習させていただきました。
定番の婚約破棄ものシリーズでしたがお楽しみいただけたでしょうか?
ドクターストップ(精神的なもの)により休職してから少しずつ回復して外出も増やすように励んでます。小説を書く気力が出たのは自分でも嬉しい変化です。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
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ずっと書いてなかったにも関わらず覚えていてくださってありがとうございます(T . T)