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そんな騒ぎになったお茶会後、私はエリーゼと共に互いの父に叱られることに。私は叱られる案件ではあることを理解していただけで何も感じなかったが、エリーゼは拗ねた様子で、私としてはそちらの方が気になって仕方なかった。

「わたしはわるくないもん………」

「エリーゼ……人様に迷惑をかけることは悪いことだよ」

愛娘なのだろう。ファルセ公爵は強く叱れない様子で、反省を見せないエリーゼに困った様子が伺える。

反省したふりでもすればいいだろうに、それができないエリーゼは素直なのだろう。だからこそ好感が持てたし、庇いたくなったのかもしれない。

「それぐらいでいいのでは?」

「殿下……しかし…………」

「私が言えたことではないが、元々公爵令嬢でもあるエリーゼ嬢をバカにしたものたちもいたようだし、無礼を咎めるより安く済んだと思えばいいかと」

「リューシル!」

私の言葉にぱあっと明るくなるエリーゼ。本当に素直でわかりやすい。勝手に呼び捨てにしたことも気にならないくらいに、エリーゼの笑顔は眩しかった。

「エリーゼ、殿下を呼び捨てにしては………」

「いや、構わない。エリーゼの好きに呼ばせてあげたい」

「リューシルありがとう!ほら、おとうさま!わたしはわるくないんだから!」

「エリーゼ………はぁ」

私が庇ったことでエリーゼは調子に乗ったようだ。ファルセ公爵は参ったとばかりの様子だが、エリーゼの自信満々の様子が素直に可愛らしいと思う。

そこでふと何気なく父と母を見て、どこか驚いた様子で私を見る姿にはっとした。なんだかいつもと違う自分に。今まで誰かが何をしようと、されようと何も思わなかった私が、エリーゼに対して動く想い。

「………これが」

感情?

「リューシル、きょうはたのしかった?」

エリーゼにだけ動く心。

「エリーゼ!」

「もうおとうさまったらすぐどなるんだから!」

一度気づけば理由など考えることもなく理解した。初めて経験する感情というものを。

何故かなんてわからないが、エリーゼは私に心を教えてくれる。その心は決して悪いものではなく、生まれて初めて私は欲と言うものを覚えた。

エリーゼがほしい………と。

「気にしないで、ファルセ公爵。私も楽しかったから。これはエリーゼ嬢とだから楽しめたと思うんだ。エリーゼ嬢、よければ私と将来を共にしよう?」

「殿下!それは……」

「リューシル何を……」

青ざめるファルセ公爵と、声をあげる父上。本当なら父に許可をもぎとってから婚約を結ぶべきだろう。だけど、それすら待ちきれないほどに確実にエリーゼを私のものにしたかった。

「しょうらいをともに?リューシルとずっといっしょってことかしら?」

「うん、そうだよ。結婚の約束と言えばわかりやすいかな?」

「けっこん!そっか、そうなのね!リューシルがわたしのはくばのおうじさまなのね!」

「ふふ、そうだね」

白馬の王子様と言えば子供の貴族令嬢に人気の絵本があったはずだ。恐らくエリーゼもそれに憧れているのだろう。エリーゼが望むなら白馬を買って絵本を再現してもいい。それでエリーゼが私から離れようとしないのであれば。

「やっぱりそうだとおもったの!リューシルはきらきらしてるから!」

「きらきら?」

「うん!きらきらしてる!だからね、わらったらもっときれいだとおもったの!」

エリーゼの言うきらきらがよくわからないけれど、悪い気分ではなかった。笑顔で話すエリーゼはそれこそ眩しいくらいに輝いていたから。

「エリーゼ嬢………いや、エリーゼ。私はエリーゼといればエリーゼの言うきらきらをもっと出せると思う。必ず君の理想の白馬の王子様となるから、私と結婚を約束してくれるかい?」

「うん!」

貴族令嬢にしては元気がよすぎる返事。それでもそれがエリーゼであり、私が惹かれた存在なのだ。エリーゼにはずっと笑顔でいてほしい。そう思える自分がいる反面、エリーゼを閉じ込めて一人占めしたいという独占欲も同時に溢れる。

欲とは一度出ると溢れてままならないのだと初めて知った。それすらも嬉しく思う。何も感じない世界はあまりにもつまらなかったから。

「ありがとう、エリーゼ。陛下、王妃様………いえ、父上、母上、私の初めての我が儘です。エリーゼを婚約者として認めてください」

認める以外に聞く気はないという意思表示も込めて、私は覚えた笑みを携えて許可を求めた。エリーゼとの婚約の許可を。
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