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生まれたときから私は異質だったらしい。泣き声ひとつあげずに生まれた私に、最初こそ第一王子は何か病気でも?と周囲は心配したそうだが、異常なしと判断され安心したのも束の間。

成長するに辺り、泣くどころか笑わず、言葉遣いも大人の真似をし、勉強の理解も早すぎた私は神童を通り越し、恐れられた。

しかし、子供時代、感情が欠落していたせいか人の感情に疎く、それに気づかなかった私は、ある日母が父に泣きついているのを盗み見見た。たまたま聞いてしまっただけではあるが。

「陛下、私はあの子が恐ろしいのです。あまりにも子供らしさひとつないあの子が」

「しかし、王太子としてはこれ以上ない逸材。もう少し勉強すれば私の職務さえ任せられそうなほどだ」

「まだ学園にも通えない年齢ですよ?あまりにも落ち着きすぎて自分の子供に思えないときがあるのです………。あの子はまるで感情がありません。考えを読まれないのはいいにしても、あまりに無機質すぎます。国の王とは人の気持ちを理解することも大切です。けれどリューシル王子は………」

リューシル、それは間違いなく私の名。母にそんな風に思われていたとは思わなかったが、聞いてしまったからと言って特に何も感じはしなかった。

どう思われようとどうでもよく感じていたくらいに。

「殿下………その」

しかし、一緒に護衛としてついていた大人は気を遣うように困った顔をしていた。私が気にしていないのに、他人が気にするとは変なものだ。と不思議に思いながらも、父に用があったので気にせずノックをする。

「誰だ?今は少し……」

「陛下、リューシルです」

「あ、ああ、リューシルか。入りなさい」

気まずそうに、どこか緊張した様子で私を迎え入れた父と母。私はそれをなんとなく理解しながらも気にせず必要な報告をした。

「陛下、今日の勉学は終了し、予定よりも先に進んでいるので、剣術をそろそろ学びたいのですが」

「そ、そうか……リューシルは本当にしっかりしているな。だが、5歳で剣術はまだ早い気がするが………」

「城の中ばかりいては身体も鈍りましょう。こういった剣術は身体づくりが基本です。早い方がよいでしょう。剣術をできる限り早く学ぶため空いた時間で身体は鍛えて参りました」

「うむ、そうか……ならば、剣術の教師を用意しよう」

「ありがとうございます」

目的は達成し、部屋を出ようとしたときだった。

「待ちなさい」

部屋に私を引き止める母の声。私はそっと足を止めて、母に振り向く。母は強張った顔で幼い私をじっと見て言った。

「聞いていたのでしょう?」

確信したような口調で問うように。
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