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中学時代編
お洒落への目覚め
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翌日、酒井は朝から上機嫌だった。
いつもなら髪もとかさずに学校へ行こうとするのだが、今日はどういうわけかブラシで丁寧に髪をとかしている。
勿論母は、目を丸くして驚いた。
「舞由李…?あんた、今自分が何をしてるかわかってる…?」
「わかってるよ!いちいちうるさいなあ!あんたには関係のないことでしょ!」
「あっそう!似あわないっつーの!!」
酒井は髪をとかし終わると、今度は頭のてっぺんで二つにしばりはじめた。
使っているヘアゴムは勿論、昨日柴田からもらったピンクのヘアゴムである。
酒井は髪を縛るだけではなく、ゴムの上からさらにピンクのリボンを巻いてちょうちょ結びにした。
母は唖然としたまま娘のその様子を見ていた。
「ちょっと、母さん。口紅貸してくんない?それから、マスカラとマニキュアと底上げブラも!」
「は?あんた気は確か?」
そう言いながらも、母は言われたものを全部用意してくれた。
酒井はそれらのものを全て身に付け、るんるんとスキップしながら学校へ向かった。
教室のドアを勢いよく開け、酒井はいつもより大きな声でクラスのみんなに挨拶をした。
「おっはよ~う!」
「おはよう」と答えてくれた人は、誰一人いなかった。
しかし酒井は気にもとめず、柴田と田山のもとへ駆けて行った。
「絵里果!優衣!おはよ!」
いつのまにか、田山のことまで呼び捨てである。
「どうしたの!その恰好!」
田山が驚いて尋ねた。
「オシャレだよ!」
得意げに答える酒井。
「生活委員に注意されるよ」
柴田がそう言ったとたん、生活委員の関谷美代子がドッカドッカと足を踏み鳴らしながらやってきた。
「ちょっと、酒井さん!学校でリボンとマスカラとマニキュアと底上げブラは禁止だよ!」
「うるさいな~。私がどんな恰好しようとあんたには関係ないでしょ!自分がブスだからってひがまないでくれる?」
「ああ?!なんだと?!」
関谷はむかついて、つい暴言を吐いてしまった。
「きめーんだよ!この白髪野郎!」
「は?!白髪なんてないし!それに、野郎じゃないし!」
激怒した酒井は、筆箱から鋏を取り出して関谷の前髪をばっさりと切ってしまった。
「何すんだよ!せっかく伸ばしてたのに!」
関谷は酒井のツインテールに掴みかかり、両手で思い切り引っ張って引き抜こうとした。
しかし、かなり根付いているようで、一向に抜ける気配はなかった。
そこで関谷は酒井の制服のスカートに手を伸ばし、チャックをはずして無理やり脱がせ、それを窓の外へ放り投げてしまった。
「あ~!私のスカート!」
酒井は手近にあった誰かのジャンパーを下半身に巻き付け、すぐさまスカートを取りに外へ出て行った。
いつもなら髪もとかさずに学校へ行こうとするのだが、今日はどういうわけかブラシで丁寧に髪をとかしている。
勿論母は、目を丸くして驚いた。
「舞由李…?あんた、今自分が何をしてるかわかってる…?」
「わかってるよ!いちいちうるさいなあ!あんたには関係のないことでしょ!」
「あっそう!似あわないっつーの!!」
酒井は髪をとかし終わると、今度は頭のてっぺんで二つにしばりはじめた。
使っているヘアゴムは勿論、昨日柴田からもらったピンクのヘアゴムである。
酒井は髪を縛るだけではなく、ゴムの上からさらにピンクのリボンを巻いてちょうちょ結びにした。
母は唖然としたまま娘のその様子を見ていた。
「ちょっと、母さん。口紅貸してくんない?それから、マスカラとマニキュアと底上げブラも!」
「は?あんた気は確か?」
そう言いながらも、母は言われたものを全部用意してくれた。
酒井はそれらのものを全て身に付け、るんるんとスキップしながら学校へ向かった。
教室のドアを勢いよく開け、酒井はいつもより大きな声でクラスのみんなに挨拶をした。
「おっはよ~う!」
「おはよう」と答えてくれた人は、誰一人いなかった。
しかし酒井は気にもとめず、柴田と田山のもとへ駆けて行った。
「絵里果!優衣!おはよ!」
いつのまにか、田山のことまで呼び捨てである。
「どうしたの!その恰好!」
田山が驚いて尋ねた。
「オシャレだよ!」
得意げに答える酒井。
「生活委員に注意されるよ」
柴田がそう言ったとたん、生活委員の関谷美代子がドッカドッカと足を踏み鳴らしながらやってきた。
「ちょっと、酒井さん!学校でリボンとマスカラとマニキュアと底上げブラは禁止だよ!」
「うるさいな~。私がどんな恰好しようとあんたには関係ないでしょ!自分がブスだからってひがまないでくれる?」
「ああ?!なんだと?!」
関谷はむかついて、つい暴言を吐いてしまった。
「きめーんだよ!この白髪野郎!」
「は?!白髪なんてないし!それに、野郎じゃないし!」
激怒した酒井は、筆箱から鋏を取り出して関谷の前髪をばっさりと切ってしまった。
「何すんだよ!せっかく伸ばしてたのに!」
関谷は酒井のツインテールに掴みかかり、両手で思い切り引っ張って引き抜こうとした。
しかし、かなり根付いているようで、一向に抜ける気配はなかった。
そこで関谷は酒井の制服のスカートに手を伸ばし、チャックをはずして無理やり脱がせ、それを窓の外へ放り投げてしまった。
「あ~!私のスカート!」
酒井は手近にあった誰かのジャンパーを下半身に巻き付け、すぐさまスカートを取りに外へ出て行った。
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