トイレの水を流したら、昭和時代にタイムスリップしてしまいました

おもちうさぎ

文字の大きさ
上 下
4 / 5

ゴンちゃん、抜けない?!

しおりを挟む
ゴンちゃんが便器にはまってしまったのは、夜中の十二時頃のことでした。

「あはははは!」

便器にはまっているゴンちゃんを見て、酒井は爆笑しました。

「バッカじゃないの、あんた!」

「うえ~ん、うえ~ん」

ゴンちゃんはしくしく泣いています。

「とっとと出たら?」と酒井。

「抜けないんだよ~!」

それを聞いて、酒井はさらに爆笑しました。

「笑うなよ~!この一大事に!」

「マジうける~!朝までそこにいれば?」

「なんだよ、そんな酷い言い方ないだろ!」

「は?私にトイレで一夜を過ごせとか言っておいて、自分のことはいいわけ?」

「いいんだよ!」

するとその時、二階からゴンちゃんママが降りてきました。

「うるさいわねぇ。なんなのよ~」

ゴンちゃんのみじめな姿を目にしたとたん、母は大爆笑しました。

「何やってんのよ、ゴンちゃん。抜けないの?」

「うん」

さらに笑いました。

「どいつもこいつも僕のこと笑い物にしやがって!」

ゴンちゃんは激怒しました。

ようやく酒井とゴンちゃんママは笑うのをやめ、ゴンちゃんの救出を始めました。

「うんとこしょ、どっこいしょ!」

二人で力を合わせて引っ張りましたが、ゴンちゃんは抜けません。

「早くここから出してよ~!」

半泣きでゴンちゃんが叫びます。

「わかった、わかった」

そう言って、母はどこからかロープを持ってきました。

「な、な、な…何するんだよぉ」

不安げな表情のゴンちゃん。

母はロープの先端をゴンちゃんの胴体に結び付け、反対側を持って酒井と共に引っ張りました。

「うんとこしょ、どっこいしょ!」

「痛てぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

ゴンちゃんは抜けませんでした。

とうとう二人は諦めて、

「こうなったら、救急車を呼ぶしかないわね」

と、電話をかけに行きました。

「最初からそうしろよ」

ゴンちゃんは一人トイレで呟きました。

それからおよそ三十分後、救急車が到着し、ようやくゴンちゃんは便器の中から救出されたのでした。

「ああ、よかった」

便器から抜け出すことができたゴンちゃんは、ホッと安堵の笑顔を浮かべました。
笑うと堀川そっくりだと酒井は思いました。と言っても、本人なのでそっくりでも不思議はありません。
酒井が眠り始めたのは、三時ごろのことでした。

***


「おーい、酒井ー!!」

ゴンちゃんの大声で、酒井は目を覚ましました。
時計を見ると、五時でした。

「なんだよ、まだ朝の五時じゃん。もう少し寝かせてよ~」

「バーカ。夕方の五時だよ。お前起きんの遅っせぇんだよ」

「悪かったね」

「ところでさ、実はお願いがあるんだ」

ゴンちゃんは背中の後ろから何やら一枚の用紙を取り出し、それを酒井に突き出しました。

「実は今日、算数のテストが返ってきたんだ。10点だった。あ、100点満点中の10点な。で、ママに見つかるとヤバいんだ。だからどっか見つからない場所に捨ててきてくんね?」

「は?なんで私が…」

「俺はこれから見たいテレビがあるんだよ。お前、どうせ暇なんだろ?」

「ふん。暇で悪かったね」

酒井はゴンちゃんの手からテストの用紙をひったくり、面倒くさそうに部屋を出て行きました。

「10点とかマジだっせ~」

そう呟きながら、酒井はテストを庭の花壇に埋めました。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

残業で疲れたあなたのために

にのみや朱乃
大衆娯楽
(性的描写あり) 残業で会社に残っていた佐藤に、同じように残っていた田中が声をかける。 それは二人の秘密の合図だった。 誰にも話せない夜が始まる。

冬馬君の夏

だかずお
大衆娯楽
あの冬馬君が帰ってきた。 今回は夏の日々のお話 愉快な人達とともに 色んな思い出と出会いに出発!! 祭りやら、キャンプ 旅行などに行く 夏の日々。 (この作品はシリーズで繋がっています。 ここからでも、すぐに話は分かりますが。 登場人物などを知りたい場合には過去作品から読むと分かり易いと思います。) 作品の順番 シリーズ1 「冬馬君の夏休み」 シリーズ2 「冬馬君の日常」 シリーズ3 「冬馬君の冬休み」 短編 「冬休みの思い出を振り返る冬馬君」 の順になっています。 冬馬家族と共に素敵な思い出をどうぞ。

夜のしずく

カルラ アンジェリ
大衆娯楽
小6の莉子(りこ)は修学旅行でおねしょをしてしまう。 そしてそのショックでおねしょを頻繁にするようになってしまい……

たまき酒

猫正宗
大衆娯楽
主人公の宵宮環《よいみやたまき》は都会で暮らす小説家。 そんな彼女のマンションに、就職のために上京してきた妹の宵宮いのりが転がり込んできた。 いのりは言う。 「ねえ、お姉ちゃん。わたし、二十歳になったんだ。だからお酒のこと、たくさん教えて欲しいな」 これは姉妹の柔らかな日常と、彼女たちを取り巻く温かな人々との交流の日々を描いたお酒とグルメの物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

迷子

一宮 沙耶
大衆娯楽
広島に転勤してきた夜の出来事。私は戻れなくなった・・・。

クエスチョントーク

流音あい
大衆娯楽
『クエスチョントーク』というラジオ番組に呼ばれた人たちが、トークテーマとして出されるお題について話します。 「このラジオは、毎回呼ばれたゲストさん達にテーマに沿って話してもらうトーク番組です」 「真剣に聴くもよし、何も考えずに聞くもよし。何気ない会話に何を見出すかはあなた次第」 「このラジオの周波数に合わせちゃったあなたは、今もこれからもきっとハッピー」 「深く考えたり、気楽に楽しんだり、しっかり自分で生き方を決めていきましょう」 トークテーマが違うだけなのでどこからでも読めます。会話形式です。

処理中です...