夏の記憶

如月さら

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「では明日は8時にお食事をお持ちします」

と、待ち人を連れてきた番頭は朝食時間を言い残し
部屋から退去していった。



「遅くなってごめん」


聞きなれたテノールの声が静かに響く


「孝。。。今日は会えないかと思った」


美咲は佐野孝志の胸に顔をうずめた。
孝志がぽんぽんと美咲の頭を大きな手でそっと叩いた。

佐野孝志 美咲よりも2つ年下の33歳 さそり座 既婚 子どもなし
現在は大日生命保険の岡山支社の法人営業課長だ
美咲とは幼馴染である


「定時で上がる予定だったんだけど、事故報告が入ってね。
ぎりぎりまでかかっちゃった」


美咲はかいがいしく孝志が脱いだスーツをハンガーにかけ
浴衣を用意した。
この旅館は大浴場の檜風呂が有名だが、もう遅いこともあり
孝志は内風呂のシャワーで済ませることにした


「美咲もおいでよ」


浴衣を広げていると孝志に手を引っ張られた
美咲はかぶりをふり


「嫌よ。。。一人で入って。。。私はスーツをしまうから」


と言い、すっと後ろに下がった。
孝志は少し寂しそうな表情はみせたものの
内風呂に入って行った
ザーーーーとシャワーの音が聞こえる
スーツや孝志の荷物をクロゼットにしまった美咲は
さっきまで座っていたラタンの椅子に戻り
携帯電話を手にとった、夫・青磁からの着信は無いようだ
電源を切るとバッグの奥深くにしまった。


「あーーーさっぱりした~」


声の方を向くと、孝志がバスタオルを腰に巻いて
内風呂から出てきたところだ
ラクビーのクラブチームに未だに現役で参加している孝志の体はひきしまり
美咲は思わず立ちあがりながら少し赤面し、目をそらし、
慌てて孝志の肩に浴衣をかけようとした時に腕を掴まれ抱き寄せられた


「美咲。。。」


グッと力強く抱きしめられ顎を持ちあげられた
ふわっと微かにタバコのにおいが漂い
孝志の唇が美咲のそれに重なった
久しぶりの口づけである
最初は優しくそして激しく。。。


「あっ。。。あぁ」


美咲の唇からため息のような吐息が小さくもれる
美咲がずっと欲しかった口づけだ


「美咲!美咲!!会いたかった!!!」


激しく美咲の唇をむさぼりながら、孝志は美咲の浴衣のひもをほどいた
肩を外すとうす桃色に染まった美咲の白い肌が表れた
美咲の浴衣のひもをほどいた時に白檀の香りが微かに漂う
美咲が胸元に入れていた匂袋の香りだ。。。
首筋から肩口に唇をはわされた美咲は立っている事ができず
ぐずぐずとその場に座り込んだ
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