夏の記憶

如月さら

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祇園祭り 1

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コンコンチキチン。。。コンチキチン
明後日が確か宵山だろう
遠くからお囃子の音が聞こえる

「旦那様遅いおますな~」

50代だろうか布団を敷きにきた気の良い仲居が
シーツを整えながら声をかけてきた
窓際の古いラタンの椅子に腰をかけて
何とでもなく窓の外を見ていた美咲は仲居の方に顔を向けた
チェックインした時に過分の心付けを渡してあったので
仲居はとても丁寧に美咲に接してくれる
いや一流旅館だ、心付けの多い少ないに関係なく
サービスは行きとどいているのだろう


「仕事で最終の新幹線になるかもしれないと連絡が来ました。
食事は済ませてくると言っていたので
お布団を敷いたら下がって下さって結構です」


ふっと美咲は小さく息を吐き、自分にも言い聞かせるように仲居に言った

「わかりました、ほな失礼します」

京都の言葉は優しくて耳に気持ちが良い
実はとてもきついことを言っていても、あまりそのようにとれないのは
関東圏に住んでいて言葉使いがきついのを聞きなれているせいだろう。。。

島崎美咲(旧姓野田) 35歳 おとめ座 既婚 子どもなし
結婚してからも美咲は仕事を続けていた
子どもができたら仕事は辞めるつもりでいたが
小さいながらも業績の良いヨーロッパの品を扱う
商社で働き、社長秘書のような仕事をしている
社長は妻を愛する温厚な60代
セクハラなどとは縁のない孝行爺みたいな人だ
秘書と言っても通訳から(美咲は英語・イタリア語ができた)
伝票作製はたまた電話対応までと何でもこなす
社長には娘のように可愛がれ、入社当時は社長の息子の嫁にと
こがれていたが、入社時の上司である係長の島崎青磁と結婚
その夫である島崎青磁は結婚して1年後にヘッドハンティングに合い
大手の四葉商事の課長として転職している。

が、今日の美咲は夫の青磁を待っているのではなかった
しばらく内容のないテレビを観、
そのうち各チャンネルがニュースの時間になった
腕時計に何度となく目が行く
(今日は来れないのかも。。。)
美咲の心がざわざわと揺れる
今日を逃すとまた数ヶ月顔を観ることはできないかもしれない



パタパタと廊下の遠くからスリッパの音が響き


「失礼します」

と廊下側の格子戸が開く音がし

「お連れはん、到着しました」

と番頭と思しき男が
待ち人を連れて襖を開いた
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