夏の記憶

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一応青磁に連絡を入れる為スマホを鳴らす
二度ほどの呼び出し音で繋がった


「もしもし青磁さん？」

「目が覚めたの？奥様」

昨夜のことを少し茶化しながら青磁の声が聞こえてくる
いつも物静かな青磁にしては珍しい
もしかしたら太陽と情熱の国スペインに来て
そしてしばらく一人暮らしだったのが
美咲が来て青磁の心も高揚しているのかもしれない

「もぅ。。。茶化さないで」
少し怒ったように美咲は返事をする

「ごめん、ごめん。。。で、何かあったの？」

「ううん、たいしたことじゃないけど冷蔵庫空っぽだし
　お腹も空いたし買物に行こうと思って」

「買物ならコンシェルジュに頼めば、買物リストを渡せば買ってきてくれるよ」

「へ～～そうなの便利ね！　でも自分で行ってくるわ」

「わかった、気をつけてね！　日本とは違うから」

「大丈夫よ、イタリアと同じだと思ってるから」

「了解！　７時には帰るから、夕食は外に行こう」

「はい♪　行ってきます」

スペインの治安は日本とは違い格段に悪い
イタリアに留学した経験のある美咲はそのことも熟知していた。
青磁が借りておいてくれたこのフラット周辺は
日本領事館も近く比較的治安の良い地区だ
それでもまだフラット周辺の地理も良くわからないので
小銭入れとスマホを小ぶりのポシェットに入れ部屋の外に出た

エレベータで１階まで降り、コンシェルジュに声をかける

「オラ！ディアス♪」

「オラ！ディアス、マダム」

ここまではスペイン語の会話だか゛(まだ挨拶程度しかできない)
そこからは英語になる
スペインではあまり英語が通じないが
さすがにコンシェルジュだけあってスペイン訛りだが
通常に英語会話ができるようだ
誠実そうな５０代のこのコンシェルジュは信用できそうだ。

「買物に行きたいのだけど近所にありますか？」

「はいマダム、フラットを出たら右に歩くと５分ほどでショッピングモールがございます」

「ありがとう」

「マダムお気をつけて、この地区は比較的安全ですが
　時々ジプシーが出没します。近づかないように十分ご注意ください
　また、ご指示頂ければ日常品のお買物は代行します」

「はい、ありがとう♪　　グラシャス！」

フラットの前の歩道は石畳みだが広くて気持ちが良い
街路樹も生い茂り、スペインの強い日差しを遮ってくれた。

コンシェルジュが言った通り５分ほどで大きなショッピングモールが出現した
ディアグナル通りに面したフラットはその後立地が抜群に良いのを
美咲は数日後に知ることになる