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3章 夜空のダイヤモンド
44話
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目の前に、一面の銀世界が広がる。しんしんと降る雪は、駅を出て間もない頃から詩音くんの頭にも降り積もっていた。
「雪合戦したい」
と、詩音くんが隣にくっつく。
「あほか」
僕はそう笑って一歩お先に雪の大地へと足を踏み出した。
あまりに冷え込んだ今日の日だけれど、頭上の太陽はカンカンと輝いている。こんな季節だと言うのに日に焼けてしまいそうだ。
別に焼けた所であまり気にしないのだけれど、なんとなく詩音くんは焼けてない方が好きなように思うから、避けるために袖に手を引っ込める。詩音くんは、そんな僕を見て何を勘違いしたのか、手をとってそれを両手で包み込んだ。
「寒い? あと少し歩くから頑張って」
そして、彼はそれを引き真っ直ぐに歩き出した。
詩音くんの手は、暖かかった。もちろん、ポケットの中に入ったカイロの方が数倍暖かいけれど、そうじゃなくて。詩音くんと手を繋いで歩いているという事実が、嬉しかった。
少し歩いて着いた先は、何やらお店が並ぶ道。窓からは、綺麗なガラスのコップや小物がずらりとならんだ店内が伺える。つい、足が止まり目を奪われた。
手を引いていた詩音くんは、すぐに気がついて足を止めた僕の方へ振り向いた。
「あ、すまん」
慌てて駆け寄って背中を押す。しかし、彼は踵を返して店へと向かう。
「せっかくなら見ていこう。なんかプレゼントしたい」
「それはええよ」
「クリスマスプレゼント!」
クリスマスプレゼントなんて、もう貰うような年齢でもないし。なのに、彼は相変わらず僕の手を強く握ったまま離さずに、店内へと引きずり込むのだった。
まず、店内の温かさにほっと肩をなでおろす。いつの間にか感覚の無くなっていた手にじんわりと温度が戻る感覚がなんとも言えない。僕は、握られていない方の手へ何度も息を吹きかけながら詩音くんの後をつけた。
店内には、外からは見えなかったような小さな箸置きからアクセサリー類まで、本当に色々なものが並んでいる。その中でも詩音くんはアクセサリーコーナーで足を止め、その中でも黄色のピアスを手に取った。
「綺麗」
そして、彼はもう片方の手で僕の右耳へと触れた。
触れられた耳がくすぐったくて、つい耳を擦るように肩をすくめる。触れた本人は構わず耳へ触れたまま、息がかかるほどの距離で僕の耳を凝視して首を傾げた。
「あれ、楓今日ピアスしてないんだ」
「あー、それね。塞ごうかなと思って」
触れられていた耳たぶをつまみ、ピアスホールの部分を弄る。とっくのとうに安定していたそれは昨日の夜から付けていないくらいではビクともしていないけれど、まあいつか閉じるだろう。
「なんで?」
と詩音くんは再び僕の手を避け耳をつまむ。
「別に、なんとなくやで」
僕が答えると彼は少し寂しそうな顔をした。
「じゃあ、これは付けないか」
詩音くんが、手にしていたピアスを元へ戻そうと手を伸ばす。
それがなんだか寂しかった。つい、彼の腕を握って引き止めた。
「閉じたら、場所変えて開け直す予定やねん……」
この旅行が終わったら全てを終わらせると決めたのに、相変わらず未練が残っているのは僕の方だった。
それでも、詩音くんは僕の言葉を聞き嬉しそうに手をひっこめ、「買ってくる!」と僕を置いてレジへと駆け足で向かうのだった。
「雪合戦したい」
と、詩音くんが隣にくっつく。
「あほか」
僕はそう笑って一歩お先に雪の大地へと足を踏み出した。
あまりに冷え込んだ今日の日だけれど、頭上の太陽はカンカンと輝いている。こんな季節だと言うのに日に焼けてしまいそうだ。
別に焼けた所であまり気にしないのだけれど、なんとなく詩音くんは焼けてない方が好きなように思うから、避けるために袖に手を引っ込める。詩音くんは、そんな僕を見て何を勘違いしたのか、手をとってそれを両手で包み込んだ。
「寒い? あと少し歩くから頑張って」
そして、彼はそれを引き真っ直ぐに歩き出した。
詩音くんの手は、暖かかった。もちろん、ポケットの中に入ったカイロの方が数倍暖かいけれど、そうじゃなくて。詩音くんと手を繋いで歩いているという事実が、嬉しかった。
少し歩いて着いた先は、何やらお店が並ぶ道。窓からは、綺麗なガラスのコップや小物がずらりとならんだ店内が伺える。つい、足が止まり目を奪われた。
手を引いていた詩音くんは、すぐに気がついて足を止めた僕の方へ振り向いた。
「あ、すまん」
慌てて駆け寄って背中を押す。しかし、彼は踵を返して店へと向かう。
「せっかくなら見ていこう。なんかプレゼントしたい」
「それはええよ」
「クリスマスプレゼント!」
クリスマスプレゼントなんて、もう貰うような年齢でもないし。なのに、彼は相変わらず僕の手を強く握ったまま離さずに、店内へと引きずり込むのだった。
まず、店内の温かさにほっと肩をなでおろす。いつの間にか感覚の無くなっていた手にじんわりと温度が戻る感覚がなんとも言えない。僕は、握られていない方の手へ何度も息を吹きかけながら詩音くんの後をつけた。
店内には、外からは見えなかったような小さな箸置きからアクセサリー類まで、本当に色々なものが並んでいる。その中でも詩音くんはアクセサリーコーナーで足を止め、その中でも黄色のピアスを手に取った。
「綺麗」
そして、彼はもう片方の手で僕の右耳へと触れた。
触れられた耳がくすぐったくて、つい耳を擦るように肩をすくめる。触れた本人は構わず耳へ触れたまま、息がかかるほどの距離で僕の耳を凝視して首を傾げた。
「あれ、楓今日ピアスしてないんだ」
「あー、それね。塞ごうかなと思って」
触れられていた耳たぶをつまみ、ピアスホールの部分を弄る。とっくのとうに安定していたそれは昨日の夜から付けていないくらいではビクともしていないけれど、まあいつか閉じるだろう。
「なんで?」
と詩音くんは再び僕の手を避け耳をつまむ。
「別に、なんとなくやで」
僕が答えると彼は少し寂しそうな顔をした。
「じゃあ、これは付けないか」
詩音くんが、手にしていたピアスを元へ戻そうと手を伸ばす。
それがなんだか寂しかった。つい、彼の腕を握って引き止めた。
「閉じたら、場所変えて開け直す予定やねん……」
この旅行が終わったら全てを終わらせると決めたのに、相変わらず未練が残っているのは僕の方だった。
それでも、詩音くんは僕の言葉を聞き嬉しそうに手をひっこめ、「買ってくる!」と僕を置いてレジへと駆け足で向かうのだった。
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