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1章 覚悟のとき
13話 本気の拒絶? ※微R18表現あり
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「どうしたんですか、この部屋」
いきなり綺麗に片づけられてしまった部屋を見渡して、思わず口に出す。
「すごいでしょ」
聖也くんはゲームが終わった後、したり顔で振り向きながらそう言った。
確かに、すごいと思う。あの聖也くんが掃除をしたのだ。その事実だけでもすごいのに、それがきちんと片付いていると来たもんだ。
僕が呆気に取られていると彼は僕の隣へ寄ってきて腰を降ろし、そして何故か頬を染めた。なんだ、と思い彼の言葉を待つように視線を送る。彼は部屋着のパーカーの袖を伸ばして指先で弄りながら、俯いて言った。
「綺麗にしたら、小春連れてこれるでしょ? そしたら……」
彼はそこまで言って口を噤む。しかし。その真っ赤に染まった耳と、絶対に合わない視線を見ていると、言いたいこともわかった気がする。
「僕が、聖也くんの家に長くいられるように?」
彼の暖かい背中を擦り、柔らかい声色を作って彼に尋ねる。聖也くんは頷くこともなくかといって否定することもなく、すぐに腰を上げた。
「ま、それはいいの。寝るよ」
そうして彼がベッドに向かうから、僕もつい自然な流れで彼の後をつけた。
寝室も案の定、昨日の様子より片付いていてこざっぱりした印象がある。それが聖也くんの愛の証だと思うとなんだか嬉しくて。僕は彼の手を引いた。
「ねぇ、今日は一緒に寝ましょ」
そして僕はお先にベッドへと上がり、有無を言わさず聖也くんもベッドへと引きずり込む。聖也くんは僕の力に抵抗することなくぼふんとベッドへ倒れ込んだが、僕の言葉を肯定することはなくすぐに体を起こして僕に寝転がるようにと、ポンポンとベッドを叩いて合図した。
「寝かしつけてあげる」
「……わかった」
彼が昨日からあまりにも僕と寝るのを拒否するから。強引なのも良くないか、と渋々に条件を受け入れ布団へ入る。とはいえ、もちろん諦めたわけじゃない。
僕が言われたとおりに彼の隣に寝転がると、彼は僕の隣の布団の上に寝転がった。そして、僕の身体をまるで子供にするようにぽんぽんと叩きはじめた。だから、僕は上機嫌にその手に僕の手を重ねた。
「聖也くん、好きです」
「そうかよ」と、彼は顔を背ける。
「キスできて、嬉しかった」
僕が真っすぐに彼を見つめて言うと、彼は僕の手が重なった手を引っ込めて僕の真っ白な頭を真っ白な手でくしゃくしゃと撫でた。
「よかったね」
「聖也くんは、嫌でしたか」
そんなわけないのはわかっているけれど、ここまで直球に聞かないと彼は言ってくれないから。
案の定そう尋ねると彼はしばらく沈黙した後、ふぅと息を吐いてその真っ黒な瞳を僕へ向けた。
「俺も。びっくりはしたけど、嬉しかった」
言われなくても、わかっていたことだった。でも。それを言葉にしてもらうとどうしても愛おしさが溢れてしまう。その、照れたように袖を弄る様子が可愛くて。僕はつい、聖也くんを両腕で捕らえ力を込めた。
「なっ!」
彼が驚いたように声を上げる。でも。どうしても離してやることなんてもったいないことはできなくて。僕は彼の耳元で意地悪に囁いた。きっと、僕に甘い彼は僕を拒めないから。
「ねぇ、愛してます」
ビクンと聖也くんの身体が跳ね上がる。なるほど、ここが弱いらしい。ふっと息を漏らして今度はその真っ赤に染まった耳へ触れる。再び小さく跳ね上がった聖也くんは、「んぁッ」と小さな甘い声を上げた。
その声に、体が熱を帯びるのを感じる。しかしそれは聖也くんの身体も同じで、明らかにその耳は熱を持っていた。
「聖也くん……」
彼の下半身へ、手が伸びる。しかし。
彼は僕の腕を、痛いほどに強く掴み上げた。
「だ、めッ……」
そう言う彼の声はあまりにか細かった。
「なんで……?」
と、彼の顔を覗き込む。
「今まで一か月も付き合ってたのに、一切こういうことしてくれなかったかったくせに」
彼は囁くような小さな声でそう言って、僕の身体を強く押し返した。
そんなの僕の問いの応えになっていない、と思う。でも。彼の拒絶は明らかに本気のソレで、なんなら僕が全力で抵抗しても彼の力には勝てそうもない。
はぁ、と体の熱を吐くように熱い息を吐きだし、彼の真っ黒な髪へ手をかける。聖也くんはそれの手は拒むことはなく、ただ大人しく僕に頭を預けてくれた。
「聖也くんも、本当は嫌じゃないですよね」
だって、本当に嫌なら耳へ触れた時点で拒むと思うから。だからきっと、緊張しているだけとかそういうことだと思う。
聖也くんは僕の言葉を否定も肯定もすることなく、ただ拗ねたように僕の手に頭を摺り寄せるのだった。
いきなり綺麗に片づけられてしまった部屋を見渡して、思わず口に出す。
「すごいでしょ」
聖也くんはゲームが終わった後、したり顔で振り向きながらそう言った。
確かに、すごいと思う。あの聖也くんが掃除をしたのだ。その事実だけでもすごいのに、それがきちんと片付いていると来たもんだ。
僕が呆気に取られていると彼は僕の隣へ寄ってきて腰を降ろし、そして何故か頬を染めた。なんだ、と思い彼の言葉を待つように視線を送る。彼は部屋着のパーカーの袖を伸ばして指先で弄りながら、俯いて言った。
「綺麗にしたら、小春連れてこれるでしょ? そしたら……」
彼はそこまで言って口を噤む。しかし。その真っ赤に染まった耳と、絶対に合わない視線を見ていると、言いたいこともわかった気がする。
「僕が、聖也くんの家に長くいられるように?」
彼の暖かい背中を擦り、柔らかい声色を作って彼に尋ねる。聖也くんは頷くこともなくかといって否定することもなく、すぐに腰を上げた。
「ま、それはいいの。寝るよ」
そうして彼がベッドに向かうから、僕もつい自然な流れで彼の後をつけた。
寝室も案の定、昨日の様子より片付いていてこざっぱりした印象がある。それが聖也くんの愛の証だと思うとなんだか嬉しくて。僕は彼の手を引いた。
「ねぇ、今日は一緒に寝ましょ」
そして僕はお先にベッドへと上がり、有無を言わさず聖也くんもベッドへと引きずり込む。聖也くんは僕の力に抵抗することなくぼふんとベッドへ倒れ込んだが、僕の言葉を肯定することはなくすぐに体を起こして僕に寝転がるようにと、ポンポンとベッドを叩いて合図した。
「寝かしつけてあげる」
「……わかった」
彼が昨日からあまりにも僕と寝るのを拒否するから。強引なのも良くないか、と渋々に条件を受け入れ布団へ入る。とはいえ、もちろん諦めたわけじゃない。
僕が言われたとおりに彼の隣に寝転がると、彼は僕の隣の布団の上に寝転がった。そして、僕の身体をまるで子供にするようにぽんぽんと叩きはじめた。だから、僕は上機嫌にその手に僕の手を重ねた。
「聖也くん、好きです」
「そうかよ」と、彼は顔を背ける。
「キスできて、嬉しかった」
僕が真っすぐに彼を見つめて言うと、彼は僕の手が重なった手を引っ込めて僕の真っ白な頭を真っ白な手でくしゃくしゃと撫でた。
「よかったね」
「聖也くんは、嫌でしたか」
そんなわけないのはわかっているけれど、ここまで直球に聞かないと彼は言ってくれないから。
案の定そう尋ねると彼はしばらく沈黙した後、ふぅと息を吐いてその真っ黒な瞳を僕へ向けた。
「俺も。びっくりはしたけど、嬉しかった」
言われなくても、わかっていたことだった。でも。それを言葉にしてもらうとどうしても愛おしさが溢れてしまう。その、照れたように袖を弄る様子が可愛くて。僕はつい、聖也くんを両腕で捕らえ力を込めた。
「なっ!」
彼が驚いたように声を上げる。でも。どうしても離してやることなんてもったいないことはできなくて。僕は彼の耳元で意地悪に囁いた。きっと、僕に甘い彼は僕を拒めないから。
「ねぇ、愛してます」
ビクンと聖也くんの身体が跳ね上がる。なるほど、ここが弱いらしい。ふっと息を漏らして今度はその真っ赤に染まった耳へ触れる。再び小さく跳ね上がった聖也くんは、「んぁッ」と小さな甘い声を上げた。
その声に、体が熱を帯びるのを感じる。しかしそれは聖也くんの身体も同じで、明らかにその耳は熱を持っていた。
「聖也くん……」
彼の下半身へ、手が伸びる。しかし。
彼は僕の腕を、痛いほどに強く掴み上げた。
「だ、めッ……」
そう言う彼の声はあまりにか細かった。
「なんで……?」
と、彼の顔を覗き込む。
「今まで一か月も付き合ってたのに、一切こういうことしてくれなかったかったくせに」
彼は囁くような小さな声でそう言って、僕の身体を強く押し返した。
そんなの僕の問いの応えになっていない、と思う。でも。彼の拒絶は明らかに本気のソレで、なんなら僕が全力で抵抗しても彼の力には勝てそうもない。
はぁ、と体の熱を吐くように熱い息を吐きだし、彼の真っ黒な髪へ手をかける。聖也くんはそれの手は拒むことはなく、ただ大人しく僕に頭を預けてくれた。
「聖也くんも、本当は嫌じゃないですよね」
だって、本当に嫌なら耳へ触れた時点で拒むと思うから。だからきっと、緊張しているだけとかそういうことだと思う。
聖也くんは僕の言葉を否定も肯定もすることなく、ただ拗ねたように僕の手に頭を摺り寄せるのだった。
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