転生神官剣士の異世界人生日記

ムネミツ

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第一章:狐獣人と冒険者学園編

第一話:赤狐と呼ばれて

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 「行くぜ紅葉丸、烈火乱れ切り!」

 俺は愛刀の紅葉丸を抜き、刃に炎を灯して横薙ぎに振る。
 俺の一振りと同時に無数の赤き炎の刃が飛び、平原にいたゴブリン達を蹴散らす。

 「雑魚は蹴散らした、大物は譲るよエミリー♪」
 「雑魚散らしありがとうコジュウロウ♪ ライトニングスマッシュ!」

 気の強そうな金髪ツインテールで軽装鎧を纏った巨乳美少女が、大斧を担いで突進。
 エミリーが目指す先にいるのは、緑肌の巨大な怪物ホブゴブリン。
 手下をやられたホブゴブリンが、唸りを上げてエミリーへと突進。

 だが、ホブゴブリンの攻撃が届く前にエミリーが跳躍。
 敵の拳は空しく空を切る。

 電撃を纏った大斧を稲妻の如き勢いで振り下ろす。
 雷神令嬢などと呼ばれる所以の一つだ。

 慌てて上げた腕でエミリーの攻撃をガードしたホブゴブリン。
 しかし、エミリーの斬撃は鎧袖一触とその巨体を両断にして葬った。

 真昼の平原をモンスターの血で染めたエミリーがニヤリと獣の笑みを浮かべる。

 「はん♪ これで討伐実習は合格ね、コジュウロウ♪」
 「いや、そのご令嬢らしからぬ血まみれの顔を洗おうぜ?」
 「あなたにその栄誉を与えるわ、私の赤狐♪」
 「ありがたくお受けいたします、お嬢様っと」

 俺を髪と耳と尻尾から赤狐と呼ぶエミリーの為、虚空から緑色の瓢箪を取り出す。

 「ほら、じっとしていてくれよ?」
 「うん、さしゆるすわ♪」

 俺は瓢箪の中の水をエミリーが寄こしたタオルに浸して、彼女の哥をを拭く。
 河童から貰ったマジックアイテムの瓢箪の水は、エミリーの顔の汚れを一発で清めた。

 「ふ~~~♪ 気分スッキリ、ありがとうコジュウロウ♪」
 「どういたしまして、それじゃあ証拠のモンスターの核を回収しようか」
 「ええ、今回は敵の核は壊さないように倒したから残ってるはずよ♪」
 「流石は雷神のエミリーだね♪」
 「あ、あんたがアシストに回ってくれたおかげでもあるわ!」
 「どういたしまして、好きでやった事だから」

 エミリーの顔が紅潮する、気の強い女子のデレは可愛い。
 俺達は平原の上に真っ二つになった敵の死体に近づき落ちていた宝玉を拾う。
 核と言われる魔物の魔力の籠った胆石みたいな物だ。
 魔物を倒した証拠で、これを学園に提出しないと単位が貰えない。

 「それじゃあ、狐火で火葬するか。 天に帰れよ」

 俺は右手の指を鳴らして青い火の玉を虚空に生み出し敵の死体を焼く。
 有害な魔物とは言え、弔いぐらいはしないと気持ちが悪い。
 生きてく為の殺生とはいえ、ゲームと現実は違うよな。
 
 とはいえ、前世みたいに事件が起きても警察とかに頼れないRPG世界。
 相手が人間だろうと魔物だろうと、戦わなければ我が身も大事な物も守れない。

 自分が生きている世界のリアルは受け入れないとは思うけど心は疲れる。
 地球では死んでる以上、俺はここで生きて行くしかないんだ。

 「コジュウロウ、どうしたの? 思いつめた顔してるけど?」
 「ああ、ちょっと魔力使ったから帰って回復したいなって」
 「まあ、あんたのその刀って魔力使いそうだもんね。 わからなくはないわ」
 「まあ、疲れはしたね街へと戻ろうか?」
 「二人でお祝いよ♪」

 エミリーが俺の隣で豪快に笑う、男爵家のご令嬢だよね君?
 何と言うか貴族と言うよりは蛮族だよこの子。

 街道に出て、運よく通りかかった荷馬車に銀貨を三枚払って乗せてもらう。
 銀貨三枚で日本で言う三千円ほど、タクシー代と考えればまあ打倒かな?

 「あんたらけったいな格好からして、冒険者学校の学生さんか?」
 「はい、学園の実習で魔物退治に来ました♪」
 「荷物は学園への牛乳ですね、ご苦労様です♪」
 「ああ、私の牧場は学園とも取引させてもらってるんだ護衛も頼むよ♪」
 「はい、お任せ下さい♪」
 「私達、そこそこ戦えますから♪」

 馬車の持ち主のおじさんと話しながらの道行き。
 エミリーは外面も良くできるんだよな、流石お嬢様。

 やがて見えて来たのは、灰色の城壁に囲われた城下町。
 俺達の通う学校のある、王都パステールだ。
 いわゆる剣と魔法のヨーロッパ的な街。

 しかし道中で、盗賊やら魔物が出て来なくて良かったよ。
 俺達は見張りの衛兵に門前で止められる。

 「おお、赤狐と雷神令嬢じゃないか♪ 護衛だったのか?」
 「いえ、討伐実習ですが帰りに乗せて貰いまして」
 「先輩も、お仕事ご苦労様です♪」
 「ああ、止めてすまなかった。 通って良し♪」

 冒険者学校の先輩でもある衛兵と話し、身元の確認を終えて街へ入る。
 石畳の道を進めば、人々がこちらを見て道を開ける。
 武装した冒険者が荷台に乗る馬車には、関わりたくないように見えた。
 うん、気持ちはわかる。

 噴水のある中央広場を東に曲がれば見えて来る、広い敷地の獲物。
 我らが学び舎でもあり家でもある、王立冒険者学園だ。
 馬車から降りた俺達は校舎に入り一階の奥にある学生課のに行く。

 日本の市役所みたいな受付があり、職員さん達が働いている。

 「さあ、さっさと渡して学食へ行くわよコジュウロウ♪」
 「ああ、これで一休みできるよ♪」

 俺達は複数ある受付の一つに向かい職員さんを呼ぶ。

 「すみません、討伐実習の終了確認をお願いします」
 「カレンさん、ホブゴブリンの宝玉持って来たわ♪」
 「はい、お帰りなさいませ♪」

 俺達の声に応じて来てくれたのは黒いエプロンドレスの女性。
 名前はカレンさん、青く長い髪に眼鏡をかけた温和そうな女性だ。

 「はい、承りました。 討伐実習完了です♪」

 カレンさんが宝玉を受け取り、書類にデカいハンコを押す。

 「よっし、これで単位ゲットよコジュウロウ♪」
 「ああ、やったぜ補習クリアだ♪」
 「夏休みを迎えられるわ♪」

 俺とエミリーはハイタッチで喜んだ。
 実は以前にも一度、ホブゴブリンの討伐実習を受けていた。
 その時はエミリーが、魔物の核である宝玉諸共敵を木っ端微塵にして失敗。
 リーダーであるエミリーがしくじったら、メンバーである俺もアウト。
 俺とエミリーはいつの間にか。成功も失敗も分け合える仲となっていた。

 「かんぱ~~い♪」
 「はい、乾杯♪」

 冒険者の酒場みたいな風情の学生食堂。
 俺とエミリーは邪魔にならぬように奥の席で二人で宴。
 牛乳の入った大ジョッキを打ち鳴らして煽る。

 「か~~~、牛乳が染みるわ~♪」
 「いや、令嬢要素何処へ行った?」
 「冒険者目指してる男爵家の末娘なんて、令嬢に入らないわよ」
 「そんな事はないよ、目は品がある」
 「ありがと、あんたは東国の神官よね?」
 「そ、こっちも末っ子で好きに過ごさせてもらってる」
 「ヒノエか、私も連れて行ってよ♪ 私も連れてくから♪」
 「ああ、構わないよ」

 牛乳を飲みつつ、巨大なステーキを食う俺達。
 他の学生仲間からは浮いているが、俺としてはこの関係が気持ち良かった。

 宴を終えた俺達は、学食を出てエミリーを女子寮前まで送る。

 「あんた、本当に心配性ね?」
 「そりゃまあ、俺にとっては大事な相棒だからね」
 「ありがとう、お礼は言ってあげるわ」
 「どういたしまして、それじゃあ失礼」

 俺はエミリーが女子寮の中へ入るのを見届けてから男子寮へと向かう。

 翌日の校舎にて。

 何事もなく俺とエミリーは顔を合わせた。

 「おはよう、赤狐♪」
 「おはよう、お嬢様♪」

 笑顔で挨拶を交わす、気の強い女子の笑顔は素敵だ。

 「じゃあ、朝ごはん食べに行きましょうか♪」
 「そうだね、食える時に食え♪」
 「あんたと食べるの楽しいのよね」
 「そいつはどうも」

 俺達は学生食堂へ向かう。
 朝食はパンとサラダと牛乳とスープとコンビーフみたいな肉のブロックのセット。

 「今日は午後から迷宮実習よ、しっかり食べておきなさい♪」
 「ああ、俺達なら行けるさ♪」

 朝食を取りながら俺達は、初挑戦となる迷宮に対して作戦を立てるのであった。



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