不思議なthink

紫陽花 椛

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待ち合わせて

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僕はベッドで、今日あったことを振り返る。隣町の商店街に入っていつも通りの買い物をしたこと、商店街を出ようとしたとき、名もなき青年に誰もいない草原に連れていかれたこと、その彼と友達になったこと。平凡な日常を繰り返して僕にとって、刺激のありすぎる1日だった。そりゃ、安心して寝付けないわけだ。僕はふとんのなかに潜りこんだ。

a.m.10時
待ち合わせにて

「やぁ、待っていたよ。ちゃんと、時間通りに来るもんだな」
名もなき青年は微笑んで僕に話しかけてくれた。不思議と嫌な感じがしない。なぜだろう。

「待ち合わせをしたぐらいなんだ、なにかやりたいことがあるのか?」と僕は彼に問う。
「せっかく、友達になれたし、名前もくれるんだよね?でも、名前は急に考えられないと思って、共に旅にでないか?」
いくらなんでも唐突過ぎる。こちらの感覚が、おかしいのか?
だか、平々凡々な日々に飽きてきていたし、特にやりたいこともないので、断る理由がなかった。
「断る理由がないから、旅にでようではないか」
「よっしゃ、ありがとな」
そういって笑顔を見せた彼は、なんだか、見たことあるような顔つきをしていた。それと同時に、自分なんかが、彼の名前を決めてもいいのかと、少し暗い気持ちになった。
「僕なんかが、名前を君に与えるのはふさわしくない気がするんだ。でも、なぜか、君に他の人が名前をつけるのも、引ける。僕には、仮名として、君に名前を与えることにしてはだめか?」
「仮名だろうが、本名だろうが、名前をくれるなら、構わないよ。結局、共に旅もするけどね」

「旅ってどこに行けばいいんだ?」僕は素朴な疑問を投げかける。
「俺の行きたいところについて来る形でお願いしてもいいか?」
特に、自分には行きたいところがなかったので、了承した。

ここから、不思議な旅がはじまる
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