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第12章 色々不安な人気俳優と愛しい彼女

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 美輪から、しばらく会いに行けない、と連絡があったのが、春の早い時期だった。俺としては、けっこう楽しみにしていたけど、美輪にも仕事があるわけで、それなりの理由があるのだろう。
 まぁ、俺が日本に帰ればいいだけの話なんだが、美輪から「ちゃんと勉強してきて」と言われると、中途半端に帰るのは、やっぱりプライドが許さない。
 時々電話したりとか、L〇NEとかで、連絡とりあってるだけで、我慢しなきゃならなかった。
 そうはいっても、学校にいって学ぶことは多いし、たくさんの人たちと出会えたことは、すごく貴重だった。
 今だから、学べることも多かったと思う。



 夏を過ぎて秋の風が銀杏並木を抜けていく頃、美輪からの連絡が、急激に減った。
 忙しくても二、三日には一回は、お互いの生存確認のような連絡をとっていたのに、仕事が忙しいのか、連絡がくるのが、週に一回に。
 そして、最近あったのが二週間前に一度きり。

 いや、俺だって、今まで忙しくてほとんど連絡できなかったこともあった。
 一か月以上、放置してしまったことだってある。
 だから、それくらい俺だって我慢しなきゃいけないって思った。


 ――でも、そろそろ、俺の方が限界だった。


 学校から帰る途中、日本時間六時過ぎ頃だろう。この時間なら、もう起きてるかな、と思って電話してみた。

『現在、電話に出ることができません』

 まさかの留守電。
 いつもなら、すぐに出るのに、と、首を傾げる。
 今の時間なら仕事に行く前で、朝ごはんでも食べてる時間じゃねぇの?
 二、三回かけてみても、留守電に変わってしまうので、諦めて、美輪が仕事が終わるころにもう一度電話してみようと思った。

 今度は、朝、学校に行く道すがら電話をした。

『現在、電話に出ることができません』

 ――何かあったんじゃないか。

 夜になっても留守電になっていることが、すごく不安になった。なんらかのトラブルに巻き込まれたとか、もう悪いことしか思い浮かばない。
 こういう時に話ができるのは、やっぱり一馬しかいない。俺は慌てて一馬に電話をかけたのだが。

『現在、電話に出ることができません』

 な、なんだ? 一馬までつながらない?
 そしたら、吾郎兄さんか、それこそ美輪の実家にでも電話しないとだめか?

 悩んでいるうちに、学校には到着してしまう。電話しながらだったから、いつもより遅くなって、授業開始ギリギリ。

「くそっ!」

 授業の後の休憩時間に電話しても大丈夫だろうか。
 俺は、悶々と悩みながら、空いている席へと滑り込んだ。
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