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第10章 負けない私と人気俳優の彼
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すぅっと、目をそらして、遠くを見るように話しだした。
「まぁ、簡単に言っちゃえば。阿川さんのファンが実行犯。まぁ、特にヤバイ系のおばさん? スタッフの中でも有名な困ったおばさんだったんだけどさ」
ふと。遼ちゃんにもそういう人がいるんじゃないかって、余計なことを考え出す。今は、兵頭さんの話を気にしたいのに。
「普通だったら、あんな中にまで入ってこれないんだけどさ。なぜか、スタッフのパス下げてたらしい。慌てて逃げてくとこ、防犯カメラに映ってて」
大きくため息。
「スタッフのパスなんて、ただの入館証とは違って、一般人になんて簡単には渡されない。で、調べていってたどり着いたのが、阿川さんのマネージャーだったわけ」
「は!? なんで?」
「阿川さんのマネージャー、女性なんだよね」
あの阿川さんが電話で話してた人か。性別まではわからなかったけど。
「まぁ、俺もいろいろお世話になってた人だったし、まさか? と思ったけど。すごく仕事もできる人だったし。でも、あの人も『女』だったってことなのかね」
すごく冷たい眼差しの遼ちゃんが、少し怖かった。
「『阿川のために』、とか、言い訳してたみたいだけど。結局、あの人の独占欲だろ。まぁ、ずっとそばにいたのに自分より若くて綺麗な女に横取りされた、っていう気持ち、わからないではないけど」
そばにいても、女として見てもらえないというのは、どんなにか辛かっただろう、と私は思ってしまうわけで。
「俺にふってきたスキャンダルだって、あの人のせいだし」
……へ?
「同じ理屈。阿川さんが自分より若くてイケメンに横取りされる状況を、あの人なりに作り出したわけ。まぁ、あんな女、僕は横取りするつもりなんかなかったし。むしろ、僕の方が美輪が離れちゃうんじゃないかって、不安になっちゃったんだけど」
「……遼ちゃん」
情けない顔で見上げてる私を、優しく微笑んで額にキスをくれた。
「まぁ、でも、あの人の思惑は、半分は成功したってわけだよね。兵頭さんの気持ちが揺れてたわけだし。」
そう、そうよ、結局、兵頭さんとはどうなったのよ。私が本当に知りたいのはそこ。
「だから、阿川さんに言ってやったんだよ。『ちゃんと、捕まえといてください』って。あの人がグダグダ言えないような状態にしてくださいって」
「まさか、兵頭さんの今の気持ち、教えちゃったの?」
「言えるわけないでしょ。だから、マネージャーのことに絡めて話したんじゃない。僕だって、まだまだ、これからなんだからね。無用な敵は作りたくないよ」
確かに、遼ちゃん以上に人気俳優の阿川さんが相手じゃ、簡単に吹き飛ばされそうだ。
「二人、どうなるんだろうね」
「兵頭さんも寂しかったんでしょ。阿川さんの近くにいられないから。近いうち、なんかあるんじゃない?」
うんざりした顔から、真面目な顔へ。この人の表情は、見てて飽きない。
「だから、美輪は、心配ないんだ。僕の方が、心配なんだから」
遼ちゃんに、そんなに心配されるほど、私はモテないと思うんだけど。
やっぱり、痘痕《あばた》も靨《えくぼ》なのか。
「もう、美輪が気にしてることはない? ないなら、ね?」
この人は、なんで私の心をこうも簡単に拾い上げてしまうんだろう。
「……しょうがないなぁ」
ニッコリと微笑む遼ちゃんに、完敗だ。
「じゃあ、ここで、美輪のこと食べていい?」
……もう、好きにしてください。
「まぁ、簡単に言っちゃえば。阿川さんのファンが実行犯。まぁ、特にヤバイ系のおばさん? スタッフの中でも有名な困ったおばさんだったんだけどさ」
ふと。遼ちゃんにもそういう人がいるんじゃないかって、余計なことを考え出す。今は、兵頭さんの話を気にしたいのに。
「普通だったら、あんな中にまで入ってこれないんだけどさ。なぜか、スタッフのパス下げてたらしい。慌てて逃げてくとこ、防犯カメラに映ってて」
大きくため息。
「スタッフのパスなんて、ただの入館証とは違って、一般人になんて簡単には渡されない。で、調べていってたどり着いたのが、阿川さんのマネージャーだったわけ」
「は!? なんで?」
「阿川さんのマネージャー、女性なんだよね」
あの阿川さんが電話で話してた人か。性別まではわからなかったけど。
「まぁ、俺もいろいろお世話になってた人だったし、まさか? と思ったけど。すごく仕事もできる人だったし。でも、あの人も『女』だったってことなのかね」
すごく冷たい眼差しの遼ちゃんが、少し怖かった。
「『阿川のために』、とか、言い訳してたみたいだけど。結局、あの人の独占欲だろ。まぁ、ずっとそばにいたのに自分より若くて綺麗な女に横取りされた、っていう気持ち、わからないではないけど」
そばにいても、女として見てもらえないというのは、どんなにか辛かっただろう、と私は思ってしまうわけで。
「俺にふってきたスキャンダルだって、あの人のせいだし」
……へ?
「同じ理屈。阿川さんが自分より若くてイケメンに横取りされる状況を、あの人なりに作り出したわけ。まぁ、あんな女、僕は横取りするつもりなんかなかったし。むしろ、僕の方が美輪が離れちゃうんじゃないかって、不安になっちゃったんだけど」
「……遼ちゃん」
情けない顔で見上げてる私を、優しく微笑んで額にキスをくれた。
「まぁ、でも、あの人の思惑は、半分は成功したってわけだよね。兵頭さんの気持ちが揺れてたわけだし。」
そう、そうよ、結局、兵頭さんとはどうなったのよ。私が本当に知りたいのはそこ。
「だから、阿川さんに言ってやったんだよ。『ちゃんと、捕まえといてください』って。あの人がグダグダ言えないような状態にしてくださいって」
「まさか、兵頭さんの今の気持ち、教えちゃったの?」
「言えるわけないでしょ。だから、マネージャーのことに絡めて話したんじゃない。僕だって、まだまだ、これからなんだからね。無用な敵は作りたくないよ」
確かに、遼ちゃん以上に人気俳優の阿川さんが相手じゃ、簡単に吹き飛ばされそうだ。
「二人、どうなるんだろうね」
「兵頭さんも寂しかったんでしょ。阿川さんの近くにいられないから。近いうち、なんかあるんじゃない?」
うんざりした顔から、真面目な顔へ。この人の表情は、見てて飽きない。
「だから、美輪は、心配ないんだ。僕の方が、心配なんだから」
遼ちゃんに、そんなに心配されるほど、私はモテないと思うんだけど。
やっぱり、痘痕《あばた》も靨《えくぼ》なのか。
「もう、美輪が気にしてることはない? ないなら、ね?」
この人は、なんで私の心をこうも簡単に拾い上げてしまうんだろう。
「……しょうがないなぁ」
ニッコリと微笑む遼ちゃんに、完敗だ。
「じゃあ、ここで、美輪のこと食べていい?」
……もう、好きにしてください。
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