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第10章 負けない私と人気俳優の彼
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無言の優しい時間が流れていく。
「簡単なので、ごめんね」
キッチンから振り返ると、じっと見つめる彼と目があった。
「よしっ」
そう言ってニヤっとした遼ちゃんがテーブルにつく。
素麺を無言で食べる私たち。
でも、嫌じゃないんだよ。この空気感。
「あ」
食べている途中で思い出す。ずっと忘れてた。遼ちゃんの誕生日プレゼント。
いつもタイミングが合わなかったから、部屋のオブジェと化していた。
「もう、今さらなんだけど」
そう言いながら、小さな箱を渡した。
「何?」
「あー、三か月遅れの誕生日プレゼント?」
苦笑いしか出てこない。
「なんか、ずっとタイミング悪くて。」
予想外のプレゼントに、彼の笑顔が広がる。
「開けて、いい?」
「うん。ちょっと趣味じゃなかったら、ごめん」
鼻歌まじりに、包みを開けている姿が、まるで子供のようで。
「わ。ちょっと、いいじゃん、これ。」
今日みたいにシンプルな黒Tシャツに細身の黒のパンツには、オニキスのブレスレットは合うかもしれない。
「じゃーん、どう? 似合う?」
こんなに喜んでもらえるなら、もっと早くに渡せばよかった。
「これ、大事にするね」
ブレスレットを撫でながら、優しく微笑むから、私もつられて笑顔になる。
「それじゃあ、僕からもプレゼント」
斜め掛けのバックから取り出した、小さな箱。
「開けてみて」
中には、一粒ダイヤがはめ込まれた二つのイエローゴールドのリング。
「美輪は、こっち」
小さいほうのリングを持って、左の薬指に。サイズぴったり。
「え?」
「こっちは僕の」
同じように左の薬指にはめて、「ほらっ!」と私に見せた。
「こ、これって」
「婚約指輪、って言ったらどうする?」
再びいたずらっ子のような顔で見るから、本気とは思えなくて。
「遼ちゃん……よくサイズわかったね」
困った顔しかできない。
「前に、美輪が寝ている時に調べた」
反対に得意げな顔の遼ちゃん。
「ふふふ。でも、それくらいの気持ちはあるよ。ただ、美輪は、まだ、不安だろうけど」
「……うん。だって、遼ちゃん、まだ二十二歳だよ? これからだって、何があるかわからないし」
そう、何があるかわからないから。
私なんかより、もっといい女性《ひと》と出会うかもしれないから。
こんなことで縛られて欲しくない。
でも、私の中のもう一人の私は、縛りつけたくて仕方がない。
「いいんだよ。僕が、美輪さんを束縛したいんだ。そりゃね。吾郎さんとの約束みたいに、まだちゃんと守れてないけど」
後半は、何かぼそぼそと言っていたけれど、指輪を見つめてた私には届かなかった。
「ケーキ、食べようか?」
急に話題を変えた遼ちゃんに、なんとなく違和感を覚えたのは、私の女の感?
ここであえて、『何かあったの?』と、聞くべきなのか。
「コテコテのショートケーキ~♪」
ニコニコしながら、ケーキを取り出している彼を見ると、今の幸せな空気を壊したくなくて、喉元まででそうだった問いかけを飲み込んだ。
「遼ちゃん。その指輪、仕事の時ははずしなよ?」
余計な心配かもしれないけど。
「まぁね。事務所的にはアウトだろうね。普段は、チェーンに通して首に下げるよ。でも。美輪は、ちゃんとつけなきゃダメ」
じろっと睨んでも、怖くないよ。そんなにやけた顔してたら。
「その代わり、このブレスレットは、ずっとつけてるから」
今度は、私の方がにやけてしまうようなことを言う。
きっと、今の甘々な二人を見たら、一馬は吐き気をもよおすかもしれない。
「久しぶりに、泊まってもいい?」
「遼ちゃんがいいなら」
「ん。『僕』もプレゼントの一つだから」
そして、甘々な夜は更けていく。
「簡単なので、ごめんね」
キッチンから振り返ると、じっと見つめる彼と目があった。
「よしっ」
そう言ってニヤっとした遼ちゃんがテーブルにつく。
素麺を無言で食べる私たち。
でも、嫌じゃないんだよ。この空気感。
「あ」
食べている途中で思い出す。ずっと忘れてた。遼ちゃんの誕生日プレゼント。
いつもタイミングが合わなかったから、部屋のオブジェと化していた。
「もう、今さらなんだけど」
そう言いながら、小さな箱を渡した。
「何?」
「あー、三か月遅れの誕生日プレゼント?」
苦笑いしか出てこない。
「なんか、ずっとタイミング悪くて。」
予想外のプレゼントに、彼の笑顔が広がる。
「開けて、いい?」
「うん。ちょっと趣味じゃなかったら、ごめん」
鼻歌まじりに、包みを開けている姿が、まるで子供のようで。
「わ。ちょっと、いいじゃん、これ。」
今日みたいにシンプルな黒Tシャツに細身の黒のパンツには、オニキスのブレスレットは合うかもしれない。
「じゃーん、どう? 似合う?」
こんなに喜んでもらえるなら、もっと早くに渡せばよかった。
「これ、大事にするね」
ブレスレットを撫でながら、優しく微笑むから、私もつられて笑顔になる。
「それじゃあ、僕からもプレゼント」
斜め掛けのバックから取り出した、小さな箱。
「開けてみて」
中には、一粒ダイヤがはめ込まれた二つのイエローゴールドのリング。
「美輪は、こっち」
小さいほうのリングを持って、左の薬指に。サイズぴったり。
「え?」
「こっちは僕の」
同じように左の薬指にはめて、「ほらっ!」と私に見せた。
「こ、これって」
「婚約指輪、って言ったらどうする?」
再びいたずらっ子のような顔で見るから、本気とは思えなくて。
「遼ちゃん……よくサイズわかったね」
困った顔しかできない。
「前に、美輪が寝ている時に調べた」
反対に得意げな顔の遼ちゃん。
「ふふふ。でも、それくらいの気持ちはあるよ。ただ、美輪は、まだ、不安だろうけど」
「……うん。だって、遼ちゃん、まだ二十二歳だよ? これからだって、何があるかわからないし」
そう、何があるかわからないから。
私なんかより、もっといい女性《ひと》と出会うかもしれないから。
こんなことで縛られて欲しくない。
でも、私の中のもう一人の私は、縛りつけたくて仕方がない。
「いいんだよ。僕が、美輪さんを束縛したいんだ。そりゃね。吾郎さんとの約束みたいに、まだちゃんと守れてないけど」
後半は、何かぼそぼそと言っていたけれど、指輪を見つめてた私には届かなかった。
「ケーキ、食べようか?」
急に話題を変えた遼ちゃんに、なんとなく違和感を覚えたのは、私の女の感?
ここであえて、『何かあったの?』と、聞くべきなのか。
「コテコテのショートケーキ~♪」
ニコニコしながら、ケーキを取り出している彼を見ると、今の幸せな空気を壊したくなくて、喉元まででそうだった問いかけを飲み込んだ。
「遼ちゃん。その指輪、仕事の時ははずしなよ?」
余計な心配かもしれないけど。
「まぁね。事務所的にはアウトだろうね。普段は、チェーンに通して首に下げるよ。でも。美輪は、ちゃんとつけなきゃダメ」
じろっと睨んでも、怖くないよ。そんなにやけた顔してたら。
「その代わり、このブレスレットは、ずっとつけてるから」
今度は、私の方がにやけてしまうようなことを言う。
きっと、今の甘々な二人を見たら、一馬は吐き気をもよおすかもしれない。
「久しぶりに、泊まってもいい?」
「遼ちゃんがいいなら」
「ん。『僕』もプレゼントの一つだから」
そして、甘々な夜は更けていく。
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