おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件

実川えむ

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第9章 宣戦布告される私と人気俳優の彼

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 いつになく真剣な一馬に促される。

「タクシー、待たせてるから……病院、どこだって?」
「O大学病院」
「運転手さん、お願いします」

 移動の間中、何も言葉が出てこなかった。
 下を向いたまま、両手を握りしめ、ただひたすら、遼ちゃんが無事でありますように、と祈ることしかできなかった。

 タクシーを病院の少し手前で止めてもらい、一馬と二人、入口へと向かった。
 病院の入口周辺は、取材の人たちなのか、カメラを持ったり、マイクを持っている人が、チラホラ。
 普通の通院している患者のように、自然に入口に入る。
 会計待ちであふれかえっているフロア。
 入口そばの総合案内で、「坂本 遼」の病室を聞いた。

「どういうご関係?」

 私よりも少し年上の受付の女性が、不審な顔で聞いてきた。もしかして、スタッフ内には通達みたいのがいってるのかな。「相模 遼=坂本 遼」って。
 ああ、病室の部屋番号、聞いておけばよかった。

「身内の者なんですが」

 一馬が言うものの、なんとなく信用されてない模様。

「仕方ない。寺沢さんに電話してみる」

 受付から少し離れて、携帯に電話をしてみると、すぐに出てくれた。

『はい』
「あ、寺沢さん、病院来たんですけど」
『ああ、早かったですね』
「病室はどこですか?」
『東棟の三〇一〇号室です』
「ありがとうございます」

 すぐに電話をきると、もう一度、受付の女性に、病室の番号を伝えて、行き方を教えてもらった。
 最近リフォームしたみたいだけれど、もともと古い病院で、あちこち継ぎ足しして建てられた。だから、まるで迷路のようになっているみたい。地図をもらっても迷子になりそう。
 時間はかかったけど、病室は見つけることができた。
 白い廊下には、ほとんど人の姿は見られず、時折、看護師の声や歩く音が響く。病室の引き戸は開いているけど、カーテンで中までは見えない。そこから黒いスーツの寺沢さんが出てくるのが見えた。

「寺沢さん!」

 慌てて駆け寄った。

「ああ、よかった。迎えに行こうかと思ってたとこでした」

 電話での慌てぶりと比べると、だいぶ落ち着いて見える。

「あ、あの」
「今、ちょっと先客がいるので……あっちのスペースで待ちましょうか」

 入院患者が寛ぐための、ちょっとした休憩スペースに私たちを誘った。
 寺沢さんは、何も言わずに、缶コーヒーを買って私たちに渡してきた。ミルク多めの甘いやつ。

「遼ちゃん、大丈夫なんですか?」

 心配すぎて、心臓が痛い気がする。

「こちらは?」

 ちょっと不審そうに一馬を見る寺沢さん。

「従弟の一馬です。遼ちゃんとは幼馴染で」
「ああ! 君が一馬くんですか。」

 そのリアクションを、なんだかのんきに感じた私は、イライラしてきた。たぶん、一馬も同じ。

「俺のことはいいんで。で、遼ちゃんはどうなんですか」
「病室には先ほど入ったところなんですけどね。とりあえず、大丈夫です。ちょっと頭を打ってしまって」
「えっ!?」
「ちょっと、色々ありましてねぇ……」

 病室から、スーツ姿の男の人たちが三人出てきた。みんなグレー系のスーツで、あんまり芸能関係の人にはみえない。

「ああ、寺沢さん、すみません」

 その中でも一番年長と思われる渋めのおじさんが、寺沢さんの姿を見つけ声をかけてきた。

「もう、いいですか」
「ええ。あと、兵頭さんともお話したいんですが」

 ……兵頭?

「彼女は、無傷だったのでここには来てないはずですが」
「あれ? 病院に来る前に事務所に問い合わせたら、ここに向かってるというお話だったんですが」
「まさか……下でレポーターとかにつかまってたりしないといいんですが」

 渋い顔の寺沢さんをしり目に、おじさんは私たちのほうに目を向けた。

「こちらは?」
「ああ、相模の身内のようなものです」
「一応、お話を聞いても?」
「いや、彼女たちも今さっきここについて、状況を説明しようとしていたところで、何も知りません」
「そうですか。じゃあ、兵頭さんがいらしたら、私どもに連絡いただけるよう、お伝えください」

 行くぞ、と言って去っていく姿は、まるでテレビドラマで見たような……もしかして、警察?
 嫌な予感しかしない。
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