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第8章 先輩になった私と人気俳優の彼
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画面に表示されているのは、兄ちゃん。
『あ、美輪、今どこ』
「学校のそばのカフェ」
『一人?』
「あ、ううん」
『あー、なるほど』
「え?」
何が、『なるほど』なんだろう?
『いや、で、昼飯どうする』
「これから、人と会う約束しちゃって」
『……誰』
「あー、えーと」
『もしかして、あいつか』
「う、うん」
『大丈夫か?』
何が『大丈夫か?』なのか……たぶん、色々だ。
「うん」
『そうか。終わったらメールしろ。迎えに行く』
「わかった」
ほっと一息ついても、目の前にいるのは、やっぱり関根くんで、相変わらず、蛇な眼差し。このまま遼ちゃんと会わせるのもまずい気がする。しばらく考えて、笠原さんに電話してみる。
「あ、笠原さんですか?」
ギョッとした顔の関根くん。
ふん、やっぱり、先輩はコワイらしい。
「ここに関根くんいるんですけど、引き取ってもらえませんか?」
慌てて席を立つ姿を見て、意地悪く笑う私。
「あ、今、店出ようとしてるんで、見つけ次第、確保してください。よろしくです~」
私が話終わる前に、店を飛び出して行った関根くん。笠原さん、マジで確保してくれるといいんだけど。
それから二十分ほどして、再び、遼ちゃんから電話があった。
『待たせてごめん、今、校門の近くに車止めてるんだけど』
店の中から外を見てもわからなかったので、慌てて会計を済ませて、校門近くまでいく。黒のセダンが1台止まっている。
これかな? と、ちらっと覗き込むと、運転席にサングラスをかけた遼ちゃんが座ってる。目があった途端、ニカっと笑って、おいでおいでと手を振ってきた。素直に助手席に乗り込む。
「自分で運転してきたの?」
「うん。一応、免許持ってるし」
「いや、でも」
「何、また寺沢さんに運転してもらってるって思った?」
「……正直、思った」
なぜだか悔しそうな遼ちゃん。
「それはそうと、何が食べたい?」
雰囲気を変えるためか、急に話を変えてきた。
「遼ちゃんとだったら、何でもいい」
今まで、外でご飯を食べたのは、一度きり。だから、素直に思ったことを言ったのに、遼ちゃんは少し頬を赤くして「じゃ、ちょっと待ってね」と言って、スマホを取り出して、どこかに電話を始めた。
「遼ちゃん、車持ってたんだね」
でも、遼ちゃんの年齢の男性が乗るというよりも、ちょっと渋い?
「あ、これ借り物。だから汚さないでね」
クスっと笑いながら前を向いて運転する遼ちゃんは、いつも部屋で会う彼とは違って新鮮。
「現場の先輩の車。貸してもらったの。僕のは実家にあるよ。基本、移動は寺沢さん任せなんだ」
「仕事、大丈夫なの?」
「ん、ちょっと……息抜き?」
おどけた表情の遼ちゃんが、いつにもましてかわいく見えた。
仕事の話をしながら二十分もすると、目的のお店に到着。可愛らしい感じのお店に感心していると、お店の白い扉が先に開いた。
黒髪を高い位置でお団子にして、シンプルな白いシャツと黒のロングエプロンを着た、三十代くらいの可愛らしい女性がにこやかに立っている。
「遼くん、いらっしゃい」
「舞子さん、すみません、混んでるのに、急にお願いして」
「いいわよ。遼くんの頼みだったら」
ニコニコ笑顔の彼女の視線が、私のほうを興味深そうに見つめてきた。
「もしかして美輪さん、かな?」
「え? あ、はい」
「ふーん、意外に普通に可愛らしいお嬢さんじゃないの」
言葉だけなら、ちょっとドキっとする発言なんだけど、優しく響くのはなんでだろう。嫌味には聞こえない。彼女の優しい笑顔のせいかな。
「時間あんまりないんだ。おすすめのランチのメニューってあるの?」
「今日は、ハンバーグのセットか、カルボナーラのセットのどっちかかな」
「んー、僕、この後も仕事あるから、がっつりハンバーグ。美輪は?」
「私はカルボナーラで」
ちょっと待っててね~、と、軽やかに厨房に入っていく後ろ姿に、思わず笑顔になる。
「舞子さん、寺沢さんの前のマネージャーなんだ」
「へぇ」
「旦那さんが、この店始めるっていうから、マネージャーやめて手伝ってるんだ」
「いいね。一緒にいられて」
無意識に言った言葉。でも、ちょっとだけ自分の本音が入ってる気がした。
『あ、美輪、今どこ』
「学校のそばのカフェ」
『一人?』
「あ、ううん」
『あー、なるほど』
「え?」
何が、『なるほど』なんだろう?
『いや、で、昼飯どうする』
「これから、人と会う約束しちゃって」
『……誰』
「あー、えーと」
『もしかして、あいつか』
「う、うん」
『大丈夫か?』
何が『大丈夫か?』なのか……たぶん、色々だ。
「うん」
『そうか。終わったらメールしろ。迎えに行く』
「わかった」
ほっと一息ついても、目の前にいるのは、やっぱり関根くんで、相変わらず、蛇な眼差し。このまま遼ちゃんと会わせるのもまずい気がする。しばらく考えて、笠原さんに電話してみる。
「あ、笠原さんですか?」
ギョッとした顔の関根くん。
ふん、やっぱり、先輩はコワイらしい。
「ここに関根くんいるんですけど、引き取ってもらえませんか?」
慌てて席を立つ姿を見て、意地悪く笑う私。
「あ、今、店出ようとしてるんで、見つけ次第、確保してください。よろしくです~」
私が話終わる前に、店を飛び出して行った関根くん。笠原さん、マジで確保してくれるといいんだけど。
それから二十分ほどして、再び、遼ちゃんから電話があった。
『待たせてごめん、今、校門の近くに車止めてるんだけど』
店の中から外を見てもわからなかったので、慌てて会計を済ませて、校門近くまでいく。黒のセダンが1台止まっている。
これかな? と、ちらっと覗き込むと、運転席にサングラスをかけた遼ちゃんが座ってる。目があった途端、ニカっと笑って、おいでおいでと手を振ってきた。素直に助手席に乗り込む。
「自分で運転してきたの?」
「うん。一応、免許持ってるし」
「いや、でも」
「何、また寺沢さんに運転してもらってるって思った?」
「……正直、思った」
なぜだか悔しそうな遼ちゃん。
「それはそうと、何が食べたい?」
雰囲気を変えるためか、急に話を変えてきた。
「遼ちゃんとだったら、何でもいい」
今まで、外でご飯を食べたのは、一度きり。だから、素直に思ったことを言ったのに、遼ちゃんは少し頬を赤くして「じゃ、ちょっと待ってね」と言って、スマホを取り出して、どこかに電話を始めた。
「遼ちゃん、車持ってたんだね」
でも、遼ちゃんの年齢の男性が乗るというよりも、ちょっと渋い?
「あ、これ借り物。だから汚さないでね」
クスっと笑いながら前を向いて運転する遼ちゃんは、いつも部屋で会う彼とは違って新鮮。
「現場の先輩の車。貸してもらったの。僕のは実家にあるよ。基本、移動は寺沢さん任せなんだ」
「仕事、大丈夫なの?」
「ん、ちょっと……息抜き?」
おどけた表情の遼ちゃんが、いつにもましてかわいく見えた。
仕事の話をしながら二十分もすると、目的のお店に到着。可愛らしい感じのお店に感心していると、お店の白い扉が先に開いた。
黒髪を高い位置でお団子にして、シンプルな白いシャツと黒のロングエプロンを着た、三十代くらいの可愛らしい女性がにこやかに立っている。
「遼くん、いらっしゃい」
「舞子さん、すみません、混んでるのに、急にお願いして」
「いいわよ。遼くんの頼みだったら」
ニコニコ笑顔の彼女の視線が、私のほうを興味深そうに見つめてきた。
「もしかして美輪さん、かな?」
「え? あ、はい」
「ふーん、意外に普通に可愛らしいお嬢さんじゃないの」
言葉だけなら、ちょっとドキっとする発言なんだけど、優しく響くのはなんでだろう。嫌味には聞こえない。彼女の優しい笑顔のせいかな。
「時間あんまりないんだ。おすすめのランチのメニューってあるの?」
「今日は、ハンバーグのセットか、カルボナーラのセットのどっちかかな」
「んー、僕、この後も仕事あるから、がっつりハンバーグ。美輪は?」
「私はカルボナーラで」
ちょっと待っててね~、と、軽やかに厨房に入っていく後ろ姿に、思わず笑顔になる。
「舞子さん、寺沢さんの前のマネージャーなんだ」
「へぇ」
「旦那さんが、この店始めるっていうから、マネージャーやめて手伝ってるんだ」
「いいね。一緒にいられて」
無意識に言った言葉。でも、ちょっとだけ自分の本音が入ってる気がした。
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