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第8章 先輩になった私と人気俳優の彼
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兄ちゃんがアメフトで現役だったころは、私は小学生で、アメフトなるスポーツにまったく興味などなく、むしろ、一馬や遼ちゃんと遊んでいる時間の方が多かった。だから、大人になって、アメフトの話をされても、さっぱりわからない。
「兄ちゃん、練習終わったら連絡して」
笠原さんに引き渡した後、読みかけの本を片手に、大学のそばにあるコーヒーショップに逃げ込んだ。さすがゴールデンウィーク。ガラガラのおかげで、集中して読めそうだ。
図書館に行ったあの日、どうしても読み切れなくて、そして続きも気になっちゃって、結局、図書館カード作って借りてしまった。
ウキウキしながら本を読んで、ブレンドコーヒーを頼んで、のんびりした時間、だったのに、本の世界に入り込んでた私には、向かい側に座った人に気が付かなかった。
「……か・ん・ざ・き・さ~ん」
頬杖ついて私の顔を覗き込んだのは、関根くん。
本から視線を外して、ちらっと上目遣いで見る。本当は、少し焦ったけど、そんなスキを彼に見せる気はない。
「……何?」
内心、練習場にいるほうが遭遇するかもと思ったから、あえて大学の外にいたのに。
「冷たいですねぇ」
ニヤニヤしてる君の目のほうが冷たいと思うんだけど。私の視線は再び本に向かう。
「お兄さんは、いいんですか?」
「練習やってんじゃないの。私、アメフト興味ないから」
「そんなぁ。笠原さんもいるのに」
「あんたこそ、こんなとこいないで、練習いったほうがいいんじゃないの」
「いやぁ、女子マネが怖いから、俺はいいです」
在籍中に、マネージャーさんたちと、何かあったんだろうか?
思わず、関根くんを訝し気に見てしまう。
「うるさいっていうか、しつこいていうか? まぁ、もうOBなんで、本気でやる必要もないんで~」
「じゃあ、何しにきたのよ」
「ふふん、そりゃぁ……神崎さんに会いに」
絶対、前世は蛇だったに違いない。そんな冷たい瞳で私を見られたら、気分よくないんですけど。無視していると、私の言葉など待たずに勝手に話し出す。
「神崎さんのお兄さんって、けっこう有名人なんですね」
「知らない」
「えー、全盛期のころって、雑誌とかにも載ってたみたいっすよ」
「興味ない」
「かわいそうに。妹がこんなに冷たいとか」
「余計なお世話」
「でも、こういう接点作ってもらえたから、感謝しないとね~」
一々、律義に返事をする必要もないのに、答えてしまってる私。馬鹿よね。
「神崎さ~ん、このまま、俺とデートしません?」
「しない」
「えー、もったいないですよ~、せっかくのお休みなのに~」
「うるさい」
……ねぇ、神様。私、そろそろ怒ってもいいですか?
「じゃあ、お昼でも……」
彼が言い終わる前に、電話がかかってきた。
ほとんどL〇NEやメールくらいしか使わないスマホだから、久々に電話の着信音を聞いたわ。それも、この着信音は、遼ちゃんだ。すぐに彼だって、わかりたいから、敢えて彼の出ていたドラマの主題歌にしてる。遼ちゃんには内緒。
「はい」
『あ、美輪。今、話して大丈夫?』
「うん」
『今からランチどうかなって』
珍しい。というか、このタイミングでかけてきてくれた遼ちゃんに感謝。というか、神様に感謝?
「いいけど」
『なんか、誰か一緒?』
「うん。会社の後輩」
下手に遼ちゃんに心配かけたくないから、言わないつもりだったのに。
『それって男?』
「え? あ、うん」
なに、その勘の良さ。あまりにストレート過ぎて、つい返事しちゃったよ。
『今、どこ?』
「……Y大の近くのカフェ」
『わかった。近く行ったら連絡する』
私が話をしている間、じーっと私を見つめていた関根くん。その視線を無視して、話し続けたけど。
「……彼氏ですか」
「うん」
「じゃあ、彼氏が来る前に攫っちゃおうかな」
否定しないで返事をする。なんで、そういう冷たい目で言うかな。怖すぎなんですけど。
「あっ」
また、電話がかかってきた。
「兄ちゃん、練習終わったら連絡して」
笠原さんに引き渡した後、読みかけの本を片手に、大学のそばにあるコーヒーショップに逃げ込んだ。さすがゴールデンウィーク。ガラガラのおかげで、集中して読めそうだ。
図書館に行ったあの日、どうしても読み切れなくて、そして続きも気になっちゃって、結局、図書館カード作って借りてしまった。
ウキウキしながら本を読んで、ブレンドコーヒーを頼んで、のんびりした時間、だったのに、本の世界に入り込んでた私には、向かい側に座った人に気が付かなかった。
「……か・ん・ざ・き・さ~ん」
頬杖ついて私の顔を覗き込んだのは、関根くん。
本から視線を外して、ちらっと上目遣いで見る。本当は、少し焦ったけど、そんなスキを彼に見せる気はない。
「……何?」
内心、練習場にいるほうが遭遇するかもと思ったから、あえて大学の外にいたのに。
「冷たいですねぇ」
ニヤニヤしてる君の目のほうが冷たいと思うんだけど。私の視線は再び本に向かう。
「お兄さんは、いいんですか?」
「練習やってんじゃないの。私、アメフト興味ないから」
「そんなぁ。笠原さんもいるのに」
「あんたこそ、こんなとこいないで、練習いったほうがいいんじゃないの」
「いやぁ、女子マネが怖いから、俺はいいです」
在籍中に、マネージャーさんたちと、何かあったんだろうか?
思わず、関根くんを訝し気に見てしまう。
「うるさいっていうか、しつこいていうか? まぁ、もうOBなんで、本気でやる必要もないんで~」
「じゃあ、何しにきたのよ」
「ふふん、そりゃぁ……神崎さんに会いに」
絶対、前世は蛇だったに違いない。そんな冷たい瞳で私を見られたら、気分よくないんですけど。無視していると、私の言葉など待たずに勝手に話し出す。
「神崎さんのお兄さんって、けっこう有名人なんですね」
「知らない」
「えー、全盛期のころって、雑誌とかにも載ってたみたいっすよ」
「興味ない」
「かわいそうに。妹がこんなに冷たいとか」
「余計なお世話」
「でも、こういう接点作ってもらえたから、感謝しないとね~」
一々、律義に返事をする必要もないのに、答えてしまってる私。馬鹿よね。
「神崎さ~ん、このまま、俺とデートしません?」
「しない」
「えー、もったいないですよ~、せっかくのお休みなのに~」
「うるさい」
……ねぇ、神様。私、そろそろ怒ってもいいですか?
「じゃあ、お昼でも……」
彼が言い終わる前に、電話がかかってきた。
ほとんどL〇NEやメールくらいしか使わないスマホだから、久々に電話の着信音を聞いたわ。それも、この着信音は、遼ちゃんだ。すぐに彼だって、わかりたいから、敢えて彼の出ていたドラマの主題歌にしてる。遼ちゃんには内緒。
「はい」
『あ、美輪。今、話して大丈夫?』
「うん」
『今からランチどうかなって』
珍しい。というか、このタイミングでかけてきてくれた遼ちゃんに感謝。というか、神様に感謝?
「いいけど」
『なんか、誰か一緒?』
「うん。会社の後輩」
下手に遼ちゃんに心配かけたくないから、言わないつもりだったのに。
『それって男?』
「え? あ、うん」
なに、その勘の良さ。あまりにストレート過ぎて、つい返事しちゃったよ。
『今、どこ?』
「……Y大の近くのカフェ」
『わかった。近く行ったら連絡する』
私が話をしている間、じーっと私を見つめていた関根くん。その視線を無視して、話し続けたけど。
「……彼氏ですか」
「うん」
「じゃあ、彼氏が来る前に攫っちゃおうかな」
否定しないで返事をする。なんで、そういう冷たい目で言うかな。怖すぎなんですけど。
「あっ」
また、電話がかかってきた。
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