おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件

実川えむ

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第8章 先輩になった私と人気俳優の彼

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 一馬のアタフタした様子を尻目に、私は兄ちゃんと明日の話をする。

「で、明日でいいのか?」
「あ、うん。練習する場所は聞いてある。そこに、私たちは十時くらいに行けばいいって」
「あー、ここか。前に行ったことあるわ」

 スマホにメモしておいた住所とグランドの名前を見せる。そこに一馬も会話に入ってくる。

「え、何。明日、どこか行くの?」
「うん、会社の人がね。アメフトやってて、兄ちゃん呼べないかってさ。」
「ふーん」

 興味はあるものの、ほとんどどうでもいいって顔をする一馬。うん、わかってた。
 優さんは、夕ご飯までいて、兄ちゃんに送られて行った。玄関先で二人の仲良さそうな背中を見送る私たち。

「いい感じの人だったじゃん?」
「だねー。お姉さん、って感じがして、いいよね」
「ククク。俺も、お姉さんって呼んでもいいのかな」
「一馬のお姉さんじゃないじゃん」
「同じようなもんだろー」

 一馬の嬉しそうな顔に、私もつられて笑ってしまう。

「あ、そういえば、明日、お前も来る?」
「何? アメフトの?」
「そう」
「んー、明日は、予定あるからパス。吾郎兄いるから、いいだろ?」 
「そうか。いや、考えてみれば、関根くんも来るかもしれないから、来ない方がいいかも」
「何? あいつもくんの?」

 笠原さんの後輩だと説明すると「あー、そういうこと」と嫌そうな顔をする。

「関根くん、一馬のこと、彼氏と勘違いしてるからさ。身内ってばれない方がいいかなって」
「まぁ、そうだな。余計なスキは作らないに限るっと」
「スキって」
「ほんじゃ、俺、帰るわ。吾郎兄によろしく~」
「はいはい、じゃあね」

 片手をあげて帰っていく一馬。兄ちゃんほどではないにしても、あの子も大きくなったなぁ、なんて思いながら見送る私なのであった。

              *   *   *

 俺は美輪の困った顔を思い出しながら、家までの道を歩いていく。
 美輪のいうとおり、あいつに俺が彼氏だって思わせておくことは大事。しかし、もしかしたら、明日あいつが美輪に接触する可能性もあるわけで、美輪には悪いけど、吾郎兄には、変な奴がいるって話だけしてあるけど、明日のこと、一応、言っておいたほうがいいかもしれない。
 家に戻ってから自分の部屋に入ると、吾郎兄の携帯に電話をした。

『なんだよ』
「あー、今、大丈夫?」
『今、彼女んとこから戻るとこ』

 まだ、車に乗る前だったら、大丈夫だろうか。

「ちょっと明日のことで話あんだけど」
『なに?』
「この前メールしたよね。ストーカーっぽいやつの話。」
『……ああ』
「あいつ、アメフトのヤツみたいなんだわ」
『なるほど』
「とりあえず、気を付けたほうがいいかなぁ、なんて」
『わかった』
「俺、いかねーから」
『ああ』
「ということで、よろしく~」

 とりあえずの連絡はしたぞ、と自分に言い訳をしつつ、もう一人のことを思い出す。
 きっと、美輪は遼ちゃんには何も言ってないだろう。きっと、心配かけたくないんだろうけどな。

「とりあえず~、出たら教えてやろうかな~♪」

 フフフンと鼻歌を歌いながら、電話をかける。五回目のコールが聞こえたところで、時間切れ、と思ったら、予想外に電話が繋がった。

『一馬くん?』
「あ。間に合っちゃった」
『どうしたの?』
「ん~、出なければ教えなかったんだけど~」
『……なに?』

 イケメンボイスが、不機嫌ボイスに変わる。お芝居以外じゃ、誰も聞いたことないだろうなぁ。ついつい、煽りたくなるのが俺の性格ってわけで。

「んー、遼ちゃんにライバル出現?」
『!?』
「ククク。少しは焦れよ」

 イケメン俳優様は、モテモテだしな。意地悪言いたくもなる。

『なっ。いつでも焦ってるよ』
「あ、美輪には内緒ね~。じゃ」
『ちょっ』

 会話をぶっちぎって、電話を切る。さぁて。遼ちゃん、どうするかね? 
 クッションを抱えなながら、想像してワクワクしちゃう俺なのであった。
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