57 / 95
第8章 先輩になった私と人気俳優の彼
57
しおりを挟む
一馬のアタフタした様子を尻目に、私は兄ちゃんと明日の話をする。
「で、明日でいいのか?」
「あ、うん。練習する場所は聞いてある。そこに、私たちは十時くらいに行けばいいって」
「あー、ここか。前に行ったことあるわ」
スマホにメモしておいた住所とグランドの名前を見せる。そこに一馬も会話に入ってくる。
「え、何。明日、どこか行くの?」
「うん、会社の人がね。アメフトやってて、兄ちゃん呼べないかってさ。」
「ふーん」
興味はあるものの、ほとんどどうでもいいって顔をする一馬。うん、わかってた。
優さんは、夕ご飯までいて、兄ちゃんに送られて行った。玄関先で二人の仲良さそうな背中を見送る私たち。
「いい感じの人だったじゃん?」
「だねー。お姉さん、って感じがして、いいよね」
「ククク。俺も、お姉さんって呼んでもいいのかな」
「一馬のお姉さんじゃないじゃん」
「同じようなもんだろー」
一馬の嬉しそうな顔に、私もつられて笑ってしまう。
「あ、そういえば、明日、お前も来る?」
「何? アメフトの?」
「そう」
「んー、明日は、予定あるからパス。吾郎兄いるから、いいだろ?」
「そうか。いや、考えてみれば、関根くんも来るかもしれないから、来ない方がいいかも」
「何? あいつもくんの?」
笠原さんの後輩だと説明すると「あー、そういうこと」と嫌そうな顔をする。
「関根くん、一馬のこと、彼氏と勘違いしてるからさ。身内ってばれない方がいいかなって」
「まぁ、そうだな。余計なスキは作らないに限るっと」
「スキって」
「ほんじゃ、俺、帰るわ。吾郎兄によろしく~」
「はいはい、じゃあね」
片手をあげて帰っていく一馬。兄ちゃんほどではないにしても、あの子も大きくなったなぁ、なんて思いながら見送る私なのであった。
* * *
俺は美輪の困った顔を思い出しながら、家までの道を歩いていく。
美輪のいうとおり、あいつに俺が彼氏だって思わせておくことは大事。しかし、もしかしたら、明日あいつが美輪に接触する可能性もあるわけで、美輪には悪いけど、吾郎兄には、変な奴がいるって話だけしてあるけど、明日のこと、一応、言っておいたほうがいいかもしれない。
家に戻ってから自分の部屋に入ると、吾郎兄の携帯に電話をした。
『なんだよ』
「あー、今、大丈夫?」
『今、彼女んとこから戻るとこ』
まだ、車に乗る前だったら、大丈夫だろうか。
「ちょっと明日のことで話あんだけど」
『なに?』
「この前メールしたよね。ストーカーっぽいやつの話。」
『……ああ』
「あいつ、アメフトのヤツみたいなんだわ」
『なるほど』
「とりあえず、気を付けたほうがいいかなぁ、なんて」
『わかった』
「俺、いかねーから」
『ああ』
「ということで、よろしく~」
とりあえずの連絡はしたぞ、と自分に言い訳をしつつ、もう一人のことを思い出す。
きっと、美輪は遼ちゃんには何も言ってないだろう。きっと、心配かけたくないんだろうけどな。
「とりあえず~、出たら教えてやろうかな~♪」
フフフンと鼻歌を歌いながら、電話をかける。五回目のコールが聞こえたところで、時間切れ、と思ったら、予想外に電話が繋がった。
『一馬くん?』
「あ。間に合っちゃった」
『どうしたの?』
「ん~、出なければ教えなかったんだけど~」
『……なに?』
イケメンボイスが、不機嫌ボイスに変わる。お芝居以外じゃ、誰も聞いたことないだろうなぁ。ついつい、煽りたくなるのが俺の性格ってわけで。
「んー、遼ちゃんにライバル出現?」
『!?』
「ククク。少しは焦れよ」
イケメン俳優様は、モテモテだしな。意地悪言いたくもなる。
『なっ。いつでも焦ってるよ』
「あ、美輪には内緒ね~。じゃ」
『ちょっ』
会話をぶっちぎって、電話を切る。さぁて。遼ちゃん、どうするかね?
クッションを抱えなながら、想像してワクワクしちゃう俺なのであった。
「で、明日でいいのか?」
「あ、うん。練習する場所は聞いてある。そこに、私たちは十時くらいに行けばいいって」
「あー、ここか。前に行ったことあるわ」
スマホにメモしておいた住所とグランドの名前を見せる。そこに一馬も会話に入ってくる。
「え、何。明日、どこか行くの?」
「うん、会社の人がね。アメフトやってて、兄ちゃん呼べないかってさ。」
「ふーん」
興味はあるものの、ほとんどどうでもいいって顔をする一馬。うん、わかってた。
優さんは、夕ご飯までいて、兄ちゃんに送られて行った。玄関先で二人の仲良さそうな背中を見送る私たち。
「いい感じの人だったじゃん?」
「だねー。お姉さん、って感じがして、いいよね」
「ククク。俺も、お姉さんって呼んでもいいのかな」
「一馬のお姉さんじゃないじゃん」
「同じようなもんだろー」
一馬の嬉しそうな顔に、私もつられて笑ってしまう。
「あ、そういえば、明日、お前も来る?」
「何? アメフトの?」
「そう」
「んー、明日は、予定あるからパス。吾郎兄いるから、いいだろ?」
「そうか。いや、考えてみれば、関根くんも来るかもしれないから、来ない方がいいかも」
「何? あいつもくんの?」
笠原さんの後輩だと説明すると「あー、そういうこと」と嫌そうな顔をする。
「関根くん、一馬のこと、彼氏と勘違いしてるからさ。身内ってばれない方がいいかなって」
「まぁ、そうだな。余計なスキは作らないに限るっと」
「スキって」
「ほんじゃ、俺、帰るわ。吾郎兄によろしく~」
「はいはい、じゃあね」
片手をあげて帰っていく一馬。兄ちゃんほどではないにしても、あの子も大きくなったなぁ、なんて思いながら見送る私なのであった。
* * *
俺は美輪の困った顔を思い出しながら、家までの道を歩いていく。
美輪のいうとおり、あいつに俺が彼氏だって思わせておくことは大事。しかし、もしかしたら、明日あいつが美輪に接触する可能性もあるわけで、美輪には悪いけど、吾郎兄には、変な奴がいるって話だけしてあるけど、明日のこと、一応、言っておいたほうがいいかもしれない。
家に戻ってから自分の部屋に入ると、吾郎兄の携帯に電話をした。
『なんだよ』
「あー、今、大丈夫?」
『今、彼女んとこから戻るとこ』
まだ、車に乗る前だったら、大丈夫だろうか。
「ちょっと明日のことで話あんだけど」
『なに?』
「この前メールしたよね。ストーカーっぽいやつの話。」
『……ああ』
「あいつ、アメフトのヤツみたいなんだわ」
『なるほど』
「とりあえず、気を付けたほうがいいかなぁ、なんて」
『わかった』
「俺、いかねーから」
『ああ』
「ということで、よろしく~」
とりあえずの連絡はしたぞ、と自分に言い訳をしつつ、もう一人のことを思い出す。
きっと、美輪は遼ちゃんには何も言ってないだろう。きっと、心配かけたくないんだろうけどな。
「とりあえず~、出たら教えてやろうかな~♪」
フフフンと鼻歌を歌いながら、電話をかける。五回目のコールが聞こえたところで、時間切れ、と思ったら、予想外に電話が繋がった。
『一馬くん?』
「あ。間に合っちゃった」
『どうしたの?』
「ん~、出なければ教えなかったんだけど~」
『……なに?』
イケメンボイスが、不機嫌ボイスに変わる。お芝居以外じゃ、誰も聞いたことないだろうなぁ。ついつい、煽りたくなるのが俺の性格ってわけで。
「んー、遼ちゃんにライバル出現?」
『!?』
「ククク。少しは焦れよ」
イケメン俳優様は、モテモテだしな。意地悪言いたくもなる。
『なっ。いつでも焦ってるよ』
「あ、美輪には内緒ね~。じゃ」
『ちょっ』
会話をぶっちぎって、電話を切る。さぁて。遼ちゃん、どうするかね?
クッションを抱えなながら、想像してワクワクしちゃう俺なのであった。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる