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第8章 先輩になった私と人気俳優の彼

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 ハンバーグがあまりにも美味しそうだったから、ついスマホのカメラで撮ってしまった。当然、遼ちゃんにL〇NEした。

『美味しそうでしょ? 図書館の近所にお店発見』

 今度は二人で食べに行きたいな、と思いながら、ハンバーグに箸を伸ばす。うん、やっぱり美味しい。
 食べ終えてすぐのタイミングで、兄ちゃんから返事が届いた。今なら、電話しても大丈夫かもしれない。さっさと会計を済ませ、公園内のベンチに座り、速攻で電話する。
 何回かコールが続いて、さすがに、すぐには無理かな? と、思ってたら、留守電に変わる直前に出てくれた。

『どうした?』
「あ、ごめんね。忙しかった?」
『ん、ああ、ちょっと電話に出られるとこじゃなかったから。わりい』
「ううん。今は大丈夫?」
『ああ』
「あのね。会社の先輩がね、アメフトやってたんだけど、兄ちゃんがアメフトやってたって言ったら、大学の練習に来ないかって。」
『あ? 俺、もう全然身体動かねぇぞ? アメフトやめて、どれくらいたってるって思ってんだ』
「……うん」
『……とりあえず、明日には家に顔出すから、行けても明後日以降な。それでよければ、行ってやるよ』
「ほ、本当?」
『ああ。ついでに、お前の働きぶりを教えてもらおうじゃないか』
「ええええええ。そんな余計なことは聞かなくていいよ!」
『はっはっは。明日は、お前も顔出せよ』
「わかった! 一馬にも言っとく!」
『じゃあな』

 正月以来の兄ちゃん。なんとなくご機嫌だった気がする。

「笠原さんにメールしなきゃ」

 笠原さんには、明後日以降なら行けるかも、と返信。そして、一馬には、明日兄ちゃんが戻ってくることをL〇NEで連絡をしようと、画面を見てると、遼ちゃんからさっきの返事が届いた。

『俺も今日はハンバーグ!』

 添付されてたのは、ハンバーグのロケ弁の画像。なんか、カワイイな、と思ってクスッと笑ってしまう。

『頑張ってね』

 お気に入りの猫のスタンプを送ると、すぐに既読と、同時に電話のコール。

「はい?」
『あ』
「あ、じゃないでしょ」
『うん』
「どうしたの?」
『声が聞きたくて』
「クスッ。それ、私のセリフじゃない?」

 お互いにちょっと照れた空気になる。

「ハンバーグ、美味しかった?」
『まぁまぁ。今度は、一緒に食べにいこう』

 正直、『今度』がいつになるかなんて、わからないけど、「うん」と答える。

『あ、そろそろ戻るから。また連絡するね』
「いってらっしゃい」
『ん、行ってくる』

 目の前で言ってあげたいけれど、それは無理な話だよね、と思いながら電話を切った。



 私が実家についたのは、お昼頃。兄ちゃんは、すでに帰って来ていた。それも、髪の長い優しそうな女性を連れて。

 ――聞いてないよ!? 

 心の中で叫ぶ私。
 一方で、やっと年貢を納めたか! と、喜んだのは当然両親。居間で向かい合いながら、ニコニコしまくってる。
 私は、嬉しいような、寂しいような、なんとも奇妙な感覚。そんな私を見透かしたように、その女性はにっこり笑いながら、私へと目を向ける。

「美輪さん?」
「あ、はい」
天野 優あまの ゆうっていいます。よろしくね」

 優しく笑う彼女に、私は素直に笑えてるだろうか。

「こ、こちらこそ」
「ふふ。ちょっと微妙?」
「えっ!?」
「ううん。私も兄がいるから。兄の彼女って、ちょっと微妙だよね。特に大好きな兄だったりするとさ」

 ニヤって笑う彼女が、ちょっとだけ身近に感じられた瞬間だった。
 少したって、玄関がガラリと勢いよく開いた音と共に、「吾郎兄! 帰ってる?」という元気な一馬の声とともに、ドタタタタと廊下を走る足音。
 あっという間に居間にいる兄ちゃんの姿を見つけると、背中に抱き付いた。

「お前、そろそろ、それ、止めねぇか? いい加減、重いぞっ」

 驚く優さんと、苦笑いする兄ちゃんに、一馬は初めて、そこに見知らぬ女性がいることに気付く。

「あ。だ、誰?」

 顔を真っ赤にして慌てる一馬に、照れくさそうに彼女を紹介する兄ちゃん。
 いつもと違う二人に、つい、かわいいと思ってしまった。
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