おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件

実川えむ

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第8章 先輩になった私と人気俳優の彼

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 なんとか決算処理が落ち着いて、気が付けばゴールデンウィーク目前。忙しさにかまけて、関根くんも落ち着いた(?)のか、変なちょっかいもだしてこなくなったので一安心。

「神崎、ゴールデンウィークどうすんだ?」
「え、どうもこうもないですよ。どこ行ったって混んでるし」
「彼氏と旅行とか行かないんですか?」

 なんで、そんなこと言ってくるかな。関根くん。

「関根くんには関係ないでしょ」

 思わず、むっとした顔で返事をしてしまう。そしてその流れはスルーっと笠原さんに向かわせる私。

「笠原さんこそ、どうなんですか」
「俺か? 俺は大学のアメフト部の合宿。後輩の練習見にいくよ」
「彼女とは会わないんですか?」
「お前には関係ないだろうが」

 笠原さんの苦笑いに、エヘっと笑い返すしかない。

「笠原さんって、アメフトやってたんですね。うちの兄と同じだ。」

 だから雰囲気、似てるのかな。

「あ、お前、兄貴いんだっけ。どこの大学だったの?」
「兄ですか?H大ですけど。でも、笠原さんとは、時代が違うと思いますよ?」
「なんで?」
「兄は私より一回りも上なんで」
「……てことは、俺よりも七つくらい上ってことか。確かに時代が違うけど、あの頃って、H大全盛期だったんじゃなかったっけか」

 後半は、ほとんど独り言の笠原さん。

「関根もくるんだろ?」
「あー、全部は無理です。一応、帰省するんで。一日くらいは行きたいんですけどね。」

 もしかして、関根くんもアメフトなのか? 確かにガタイはいいけど、笠原さんなんかより華奢なような?

「まぁ、俺なんかいっても、何もできませんけどね~」
「はっはっは、女子マネたちが喜ぶだろ」
「それ言われたら、めんどくさくなってきました」

 そんなだらけた空気感の中、ちょうど外出先から戻ってきた本城さん。

「さ、そろそろ無駄口たたいてないで、仕事、仕事!」

 本城さんの言葉で、いつもの仕事モードに変わったのは、言うまでもない。




 ゴールデンウィークが始まっても、どこに行くというわけもなく。
 実家にはいつでも帰れるし。遼ちゃんは当然お仕事だろうし。
 それでも、空は気持ちのいいくらいに青く晴れ渡っていて、外に出かけたくなった。といっても、そんな遠出ができるわけでもなかったから、近所の公園の中にある図書館に行くことにした。
 実家にいた頃は、たくさんの本が本棚に埋め尽くされてたけど、今の部屋にはそんな余裕はなくて、かといって借りるのも、返すのを忘れてしまいそうなので、図書館で読み切るつもりで、朝の開館時間から行くことにした。
 ゴールデンウィークのせいか、子連れが多くて、子どもの本のスペースがひどく騒がしい。
 私は、前から読んでいるファンタジーのシリーズの本を一冊見つけて、空いていた席に座った。
 読み始めると、完全に自分の世界に入り込む私。あっという間に時間なんてものは過ぎていき、キリのいいところで目をあげると、もうお昼を過ぎていた。

「ん、お腹、空いたかも?」

 館内では飲食禁止だったのを思い出し、本をいったん棚に戻して、図書館から出た。
 確か、公園の端っこにある図書館から一番近いのは、道路を挟んだ向かい側にある小さなレストラン。前から気になってはいたけど、なんとなく入れずにいたのだ。
 ドアを開けると、カランカラン、というベルの音と、お肉の焼ける美味しそうな匂い。思ったほど混雑してないのは、ちょうど入れ替わりのタイミングだったからか、すぐに席に案内される。
 ランチメニューから、ハンバーグのセットを選ぶ。周りのテーブルが、ほとんどハンバーグを食べてたから。待ってる間にスマホのチェックをしてると、タイムリーにメールが届く。相手は、笠原さん。
 兄ちゃんは実家にいるのか、もしいるなら、大学の練習を見にこれないか、というもの。とりあえず、兄ちゃんにメールしてみる。帰ってるかどうか。きっと、すぐには返事はこないだろう。

「お待たせしました~」

 目の前にきたのは、真ん丸としたハンバーグ。デミグラスソースたっぷり。『食べて~!』と、いってるようなハンバーグの香りに、自然と笑顔もこぼれるというものだ。
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