おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件

実川えむ

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第8章 先輩になった私と人気俳優の彼

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 少しだけ残業をして、会社を出たのは午後七時頃。問題児の姿はすでにないので、安心して待ち合わせのカフェへ。すでに奥の方に座ってスマホいじってる一馬の姿、発見。

「ごめん、わざわざ来てもらって」
「おう」

 大学二年になった一馬は、ちょっとばかり大人びた気がする。印象が違うのは、メガネのせいか?

「なに、伊達メガネ?」
「まぁね」
「ご飯は?」
「まだ」
「じゃあ、ちょっと食べに行こうか。」

 久しぶりに、前に本城さんに連れて行ってもらったお店にいくことにした。

「へぇ。美輪、こんな店、来るんだ」

 もの珍しそうな顔して、店内を見回す一馬。やっぱり、彼の年齢だと、若干浮いてみえるか。

「あら。神崎さん、お久しぶり」

 カウンターから、女将さんがにっこりほほ笑んだ。

「あ。こんばんわ」

 私もつられて笑顔になる。
 一回しか来てないのに、名前まで覚えているって、本城さん効果かな。それにしても、この時間でも、あまり混んでいないのは助かるが、こんなんでやっていけてるのか、ちょっと不安になる。

「奥の席、いいですか?」
「どうぞ」

 上着を脱ぎながら、壁にかかっているオススメメニューを見る。

「あれ、一馬、もう酒飲めるんだっけ?」
「ひでーな。誕生日はまだだけどさぁ、飲みたくなるじゃん」

 まったく、未成年が。飲ませるわけないだろうが。

「今日は本城さんは一緒じゃないの?」

 ニコニコしながら注文をとりにきた女将さん。

「あ、今日は、従弟と来ました」
「ども」
「あらあら。だからかしら。この前、いらしたときの雰囲気と似てるな、と思ったの。」
「「え?」」
「フフフ。この前も、従弟さんと同じようにキョロキョロされてたから」
「あ、あははは」

 なんというか。まぁ、血のなせるわざか。




「で。何があったわけ」

 サラダをつつきながら上目遣いで聞いてくる一馬。

「うむゅ」

 から揚げを頬張りながら、一馬の視線を受け止める。

「なんかね。めんどくさい後輩がいるの」
「うん」
「職場ではウザいっちゃ、ウザいけど、まぁ、我慢できるんだけどさ」

 一昨日、予想外のところで偶然に会ったことを伝えると。

「本当に偶然なの?」
「う。やっぱり、そう思う?」
「だって、美輪、前科あるじゃん」
「前科って、まるで私が悪いみたいじゃん……」

 ……前科。それは私が高校の頃の話。ちょっとしたストーカーに遭遇してしまったのだ。一馬はまだ中学の頃のことで、詳しい話は知らないはず。

「似たようなもんだろ。吾郎兄から聞いてるもん」

 兄ちゃん……もうっ!

「まぁ。美輪が怖いって感じたんなら、それは正しい感覚なんじゃねーの」
「う、ん」
「でも、職場の後輩じゃなぁ」
「うむ」
「で、遼ちゃんには、言ったの?」
「……いや」
「まぁ、言ったところで、あいつには何も出来ないだろうしな」

 冷ややかな声は、やっぱり、まだ許せてないってことなのかな。

「あんまり、いじめないであげてよ」
「いじめるって……美輪、マジでそんなこと言ってる?」
「いや、うむ……」
「はー、惚れた弱みってやつですか」

 呆れ顔の一馬に、何も言い返せない。

「まぁね。あいつにはあいつなりの大人の事情ってのがあるんだろうけど。てか、あいつ本人は本意じゃなくても、まわりがってことなんだろうけどさ」
「……わかってるんじゃない」
「わかってても、許せないっての」
「……でもね。遼ちゃんも大変なんだからさ。私のことで、余計な心配かけたくないっていうか」

 一馬の冷ややかな目が痛い。

「だから一馬に相談してるんじゃないの……」
「かーっ!!めんどくせーな」

 とりあえず、帰りが遅くなるようなときは、一馬を呼ぶってことと、マジでやばくなったら、ちゃんと先輩とかにも相談するってことを約束した。

「おお、この炒飯、うめ~」
「茄子の煮びたし、おいしっ!」

 結局、食い気に負ける私たちなのであった。
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